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ひよわな私の異世界ぐらし  作者: ささみし
ひよわな私と飛竜の逆襲
32/75

32. クリス vs. 飛竜2

 空へ飛んでいったクリスが直上の飛竜へと迫っていく。

 しかし、飛竜もその場でじっとしていてくれるほど甘くはない。

 あと少しというところで、飛竜がわずかに身をよじり、一本の矢と化したクリスの突撃を回避した。

 

「ああ、もう!」


 地上から上空の戦闘を見つめているロゼッタが、やきもきしながら地団駄を踏んだ。

 援護射撃をしたくても、クリスの邪魔になっては元も子もない。

 

「ちょっとお……。本当にやれるんでしょうね、クリス……!」

 

 腕の届く範囲を切り裂くことのできる剣と違って、バリスタの矢弾はそもそも人の手で持つように作られていない。有効な一撃を入れるには、真っ直ぐに相応の速度で撃ち込む必要がある。

 飛竜に回避され、空高くまで舞い上がったクリスは身体を反転させて太陽を足蹴にした。魔力の爆発がクリスを真下に押し出した。

 

 外れたはずの矢が標的へ戻っていく。飛竜の背中めがけてクリスが極太の矢を突き出し、さらに加速した。

 バリスタの矢の穂先が、飛竜の背中に深々と突き刺さる。

 断末魔の悲鳴があがり、飛竜の体は重力を思い出したかのように一直線に地上へ落ちた。地響きが鳴り、衝撃がロゼッタの足元にまで伝わった。

 

 もうもうと上がる土煙にむけてロゼッタは叫んだ。

 

「クリスっ!」


 走り寄るロゼッタの目に、飛竜の死骸を背にして堂々と歩いてくるクリスの姿が映った。

 見たところケガひとつなく、服についた土埃を手ではらっている。

 

「ははは……もう、あんた一人でいいじゃん。あたし来なくて良かったんじゃないの……?」


 脱力するロゼッタを尻目に、クリスが空を見上げた。

 

「あと一匹はどこ?」


 上空に姿がない。あちこちに目を向けて探していると、ロゼッタが叫んだ。

 

「いた! あっち!」


 ロゼッタの指差す方向には、しっぽを向けて飛び去っていく飛竜の姿が見えた。

 

「逃げたみたい」


 悔しそうにロゼッタが呟いた。空を飛んで逃げる飛竜を相手に走って追いかけても無駄というものだ。たとえクリスでも、これだけ離されては追いつけない。

 だからといって放置することもできないのが厄介だった。飛竜ほどの危険な魔物は、たとえ1匹でも甚大な被害をもたらしてしまう。

 

 やるべきことは山積みだ。

 これからのことを考えると、ロゼッタは頭が痛くなってきた。

 

「逃げた行き先の調査は最優先だけど、参加した冒険者の被害も確認しないと……。集落側のリーダーは誰? それと、あんたが落とした飛竜にとどめがさされてるか、見て回らなくちゃ。まだ生きてたら大変。っていうか! 1匹逃げたことをギルドに報告! 通信設備はどこにあるの!?」

「そういう難しいの苦手だから任せるわ。あとは頼んだわよロゼッタ。わたし帰るから」


 クリスの言い放った無慈悲な言葉にロゼッタは憤慨した。


「ちょっ! あんた先に帰る気!? あたしだって忙しい中わざわざ手伝いにきてあげてるんだからね! …………あれ? っていうかあの飛竜が逃げた先って、アルメイリアの方向なんじゃない?」


 クリスは目を見開いた。飛竜の進む先とアルメイリアに帰る道が重なっている。

 

「っ……!」

「あ、ちょっと! 武器もないくせにどうするつもり!? いまさら追いかけたって追いつけないってば!」


 ロゼッタが止める声も聞かず、クリスは飛竜を追って猛然と走っていった。

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