第32話 「合流」
街の魔物を殲滅したとの報告があがったのは、エリザベスと会ってから一時間後のことだった。
「聖女様、ありがとうございます」
「わたしは聖女なんて言われるような人間じゃ……」
ナナが治療して回ったという実績と、尾鰭のついた噂のせいで、街の人からすっかり聖女と呼ばれるようになっていた。
「カイリ様、どうしましょ〜! 助けてくださーい!」
「感謝されるのは良いことだろ。それに、良い意味で知名度が上がったなら、嬉しい誤算だ」
俺たちが魔物を倒すのは実績を作って王座を取り戻すため。
街の人から聖女と呼ばれて慕われるなら、それを利用しない手はない。
「うぅ……カイリ様がそう言うなら……」
ナナはその呼び方を受け入れてくれた。渋々って感じだったけど。
「今日は可愛い子に助けられてばっかりだ。あの赤い嬢ちゃんも魔物から救ってくれたしなぁ」
「赤い嬢ちゃん?」
ナナが治療していた男が、ふと呟いた言葉に引っかかった。
ナナや俺の他にも住民を助ける人がいたのか。
「真っ赤なドレスを着た金髪の女の子さ。すっげえ可愛くてびっくりしちまったよ」
「あいつ……もしかして」
特徴が一致する。恐らく、この男を助けた女の子とは、エリザベスのことだ。
「他国の力をあてにするな……なんて言っておいて、力を貸してくれるんじゃねえか……。いつかちゃんと、お礼を言わないとな」
イグリシア王国に行く機会があればいいな。
でも、ナナを王様にするのを目指してる
「パーティーのみんなと合流しなきゃな。無事を確かめておきたいし」
俺たちはパーティーメンバーのの元に向かおうとする……けど。
「……なぁ、ナナ」
「はい」
「俺って待ち合わせに関してなにも言ってなかったよな」
「そうでしたね」
「……」
「……」
「……どうやって合流しよう」
こういう時、アリシアのサーチが欲しくなる。
「いや、あいつは出しちゃ駄目なんだ」
そういえば、バタバタしてアリシアの様子を見に行ってなかったな。
ご飯を渡さないと本当に死んじまうかもしれない。
「それは流石に寝覚めが悪いからな……」
アリシアに対する印象は変わったけど、死んでほしいとまでは思ってない。
◇
結局、合流したのはそれから数時間後だった。街中を駆け回って見つけるというごり押しでなんとかみんなを見つけることができた。
「……で、なんでお前がこんなところにいるんだよ」
「何故妾がいることを不思議に思うのじゃ」
「そりゃ思うだろうよ」
いつか礼を言いに行こうとは思ってたけど、いくらなんでも再会が早すぎる。
「この人は一体誰なの〜? イオリちゃん、なんか怖くてあんまり好きじゃなーい」
「そういうこと言うのやめろって」
「良い良い、妾はその程度で気を立たせる程狭量ではない。そして妾はイグリシア王国第一王女、エリザベスである」
「王女!? ナナちゃんと一緒だ〜!」
「カイリは見るたび違う女性を連れてくるな」
「俺そんな節操なしみたいに見られてたの!?」
シャルから見ればそうなってるのか。
事実だから否定できないけど!
「このまま国に帰るのも良かったが、気まぐれに貴様のパーティーについていくことにした。せいぜい妾を楽しませると良いぞ」
「俺には手に余るよ……」
今までも別に統率が取れてたわけじゃないのに、さらに自分勝手なお姫様を連れていくなんて。
……せめてもうちょっと普通の人がいてくれたら気が楽なのに……っ!
「あ、そうそう。カイリ、ちょっと話は変わるんだけどさ、イオリちゃんの情報源……じゃなくて、ファンの人から聞いたんだけど、ギルドで『厄災』討伐隊が編成されてるらしいよ」
「俺たちがいない間にそんなことなってたのか」
今回の事件で厄災が動き始めた。今まではこちらから攻めなければ魔物を生み出すくらいだったものの、向こう側から攻撃してくるようになったら、倒すしかない。
「冒険者なら誰でも参加できるらしいけど……カイリはどうする?」
「もちろん行くよ。みんなこそどうする? 怖かったら、全部終わるまで街で待ってくれても全然大丈夫だ」
「わたしは行きます! カイリ様をお助けします!」
「イオリちゃんももちろん行くよ!」
ナナもイオリも強力なスキルを持ってるし、頼りになる。ついてきてくれるのは素直にありがたい。
「我々も当然、カイリについていく。カイリに拾ってもらった恩を、仇で返したくはない」
シャルの言葉に、カナとソニアも強く頷く。
「妾も行くぞ」
「王女様!? 危険なことはおやめください!」
エリザベスの突然の参加表明。執事が驚いてるけど、俺の方が驚いてるよ。
本当になんでだ。自分の身分を忘れてるんじゃなかろうか。
「興が乗った……それ以外の理由が必要か?」
「必要ですよ。……はぁ、またお父様が悲しまれますよ。やはり王女様は王に相応しくない」
「そこの執事の言う通りだよ。王女様なんだから、もうちょっと自分を大事にしないとさ」
「案じているのか? 妾の身を。ならば安心するが良い。妾は死なぬ。妾は民に、国に、世界に愛される存在じゃからな」
「どっから出てくるんだよその自信……いっそ羨ましいよ」
ここまで自信過剰だと人生楽しいだろうな。
「王女様が行かれるのでしたら私めも参加しましょう。はぁ……頭が痛い……お父様にはなんと説明すれば良いか」
「本当に、お疲れ様です……」
こんな気まぐれな姫に付き添うのってストレス凄そうだな……
「予想外はあったけど、とりあえずみんな参加するってことで良いな。数百年討伐できてない魔物だから、人数が多いのは助かるよ」
生きて帰る人がいないから姿形も分からない「厄災」。
いくら神の力を持っていてもちょっと緊張するな……
「みんなで厄災を倒して、生きて帰ってこよう!」
「「「おー!」」」




