第二話 孤高の青(ブルー)
『すまない、みんな。
俺ではみんなの仇を取れない』
俺は迫る地面を見ながら、倒れ伏している四人の仲間に心の中で詫びる。
『本当にそうか??』
そのとき、俺の心の中に別の声が響く。
『本当に俺では仇が取れないのか???』
別の声と思っていたのは、俺自身の声のようだ。
『青海 渉、いや、結城 士。
俺では本当に仇が討てないのか???』
まて!?
結城 士って誰だ。
そうだ!
結城 士は俺だ。
この土壇場で、将に死に行く瞬間に、俺は記憶を取り戻した。
「レディー、変身!セット!!」
そう、俺は結城 士。
またの名を仮面ドライバーZ3(ズィースリー)。
悪の組織『ネオジャドー』本部を壊滅させたときに敵の最後の悪あがき(自爆)に巻きこまれ、記憶を失い海に墜落した最後の仮面ドライバーだ。
俺は腰に手を当て丹田の真上で印を結ぶ。
瞬間、俺の魔力が腰に巻き付きベルトへと姿を変える。
「変身!Z3(ズィースリー)!!!」
俺の魂の叫びが、丹田に集まった魔力をベルトへ誘導し、自然界の魔力を取り込みながら融合して巨大なパワーとなる。
そう、俺は仮面ドライバーZ3(ズィースリー)。
物理攻撃の1号ドライバー、魔法攻撃の2号ドライバーの力を併せ持つ究極かつ最後の仮面ドライバーだ。
変身を完了した俺は、空中で体をひねりながら見事な着地を決める。
「なっ、バカな!
貴様は何者だ!!」
アルティメットジャアクドー仮面が俺の突然の変身に驚きの声を上げる。
「俺はカラフルブルー、またの名を仮面ドライバーZ3(ズィースリー)!!!
アルティメットジャアクドー仮面、貴様を地獄へ送る正義の使者だ!!!」
俺の口上にアルティメットジャアクドー仮面は怯んで一歩下がるが、すぐにニタリと笑う。
「ふあはははっ。
姿形が変わろうとも死にかけのカラフルブルーには違いない。
者ども、出あえ!」
アルティメットジャアクドー仮面の叫びと供に砂浜の砂が盛り上がり、100体を越えるジャアクドー戦闘員が現れる。
しかし問題ない。
先ほどまで痛めつけられていた傷はZ3(ズィースリー)に変身するとき集めた魔力の効果で完治しており、現在は体力も満タンだ。
「ふっ、この姿を見た者で生き残った悪人はいない!」
俺の決めぜりふにたじろぎながらもアルティメットジャアクドー仮面は雑魚戦闘員に指示を出す。
「ええいっ、敵は死にかけだ!
やってしまえ!!」
一斉に押し寄せる戦闘員達。
しかし、俺は何の心配もしていない。
なぜなら俺は物理と魔法のZ3(ズィースリー)なのだから。
俺は腰のベルトへ手をかざして魔力を込める。
「Z3(ズィースリー)ハリケーン!!!」
俺の叫びと供にベルトから魔力の竜巻が発生し、あっという間に100人の戦闘員は巻き上げられ、砂へと返って行った。
「ばっ、バカな!!
100人の戦闘員が、一瞬……、一瞬で全滅だと!!」
「ふっ、次はお前の番だ!!!」
「ふざけるな!
俺様はアルティメットジャアクドー仮面、究極の殺人マシンだ。
貴様などに負けるはずがない」
「ふっ、正義に勝てる悪など存在しないのだ」
「おのれ!これでも食らえ!!!」
「究極アルティメットキック!!」
「アルティメットジャアクドー仮面、貴様の最後だ。
Z3(ズィースリー)ムーンサルトキック」
俺とアルティメットジャアクドー仮面の必殺技が空中でぶつかり合う。
俺とアルティメットジャアクドー仮面は互いの位置を入れ替えて背中合わせに砂浜に立つ。
やがてその一方の影が前方へと倒れ込む。
砂浜に倒れると同時に、二つの必殺技の合計エネルギーが競り負けた方の体内で暴走する。
そして大爆発。
俺は勝った。
すぐに変身を解くと倒れている仲間へと駆け寄る。
赤のパワードスーツは解除されており、紅 煉也は素の状態で砂浜に倒れていた。
「おい、煉也、大丈夫か?」
「ううん、てっ敵は……」
よかった。煉也は生きている。俺の呼びかけに答えた。
「大丈夫だ。俺たちのカラフルアタックキャノンでアルティメットジャアクドー仮面は倒れた。
最後の悪あがきで自爆しやがって俺たちも相応のダメージを負ったがな」
「そうか、よかった」
俺の説明で敵が滅びたことを知った煉也は再び意識を失った。
そう、悪の組織『ジャアクドー』を倒したのは、あくまでもカラフルレンジャーでなければいけない。
俺は、そう思う。
なぜなら、この日本では、一つの悪の組織に対して一人、あるいは一組のヒーローが常識だからだ。
悪の組織『ジャアクドー』はZ3(ズィースリー)の敵ではなく、カラフルレンジャーの敵なのだ。
この日本の常識を壊してはいけない。
俺の勘がそう告げている。
俺はこの後もZ3(ズィースリー)としての記憶を取り戻したことを明かすつもりはない。
あくまでも、カラフルブルーとして使命を全うし、普通の男の子に戻る時を待つ。
それが世界の理だと俺の本能が告げている。
俺は本能の忠告に素直に従い、仲間のカラフルレンジャーとこの先の時間を生きていくことを決意した。
ちなみに黄、桃、緑も大怪我はしたが、命に別状はなかった。
俺は青海 渉であり、結城 士でもある。
そしてカラフルブルーであると同時に仮面ドライバーZ3(ズィースリー)なのだ。
俺のカラフルブルーとしての使命はもうすぐ終わる。
そうすれば俺も先輩ドライバー達のように海外へと旅立つことになるのかも知れない。
しかし、それはもう少し先のことだ。
とりあえずは、カラフルレンジャーのカラフルブルーとして、この物語の終わりを見届けようと思う。
END
昔やっていた戦隊物の青が、仮面○イダ-の3作目(2作目?)の主人公と同じ俳優さんだったので、いつかこんな話が見たいと思っていたものを書いてみた作品です。
ちなみに結城士は、私の未発表作 【リピート勇者】の主人公と同姓同名です。
連載作も近々更新出来るといいなと思っています。よろしくお願いします。