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暗黒騎士と鏡の剣  作者: 十奏七音
ミラーソードと硝子の剣
113/502

112. 鏡護りと大君

「なあ、エファ」

「なあに、ミラー」


 俺が声を掛けると赤毛の少年が不思議そうな顔をして俺を見上げる。回答の一つを指先で叩いてやる。今はエファに教養の講義をした後、理解度合いを測る為の筆記試験をしている。教官はダラルロートで試験監督は俺だ。アステールの方が教え方は上手いと思うのだが、エファとアステールは互いに甘過ぎて教育にならないとダラルロートに言われてな。俺達そんなに暇だったか? と首を傾げつつもダラルロートが用意して来る課題に添って神学やら魔法学を教えている。


「そこ、間違ってる。直せ。さもないとダラルロートに毒針でも刺す勢いでねちねちやられるぞ」

「む。考え直す」


 先日エファは俺と双頭の狂魚神イクタス・バーナバとの間に生まれた娘デオマイアの婿となる事を認められた。エファが支払った犠牲は大きく、魂の半分を捧げて正属性から狂属性への属性転向を行った結果なのだがな。イクタス・バーナバ当人から認められた婚約なのだが、俺が大君の館の私室に居た所へダラルロートが難癖を付けて来た。


『申し訳ありませんが我が主よ、嫉ましいと言ってしまってよろしいですかねえ』

『なんだ、ダラルロート。最近やけに機嫌が悪くないか? 堕落への親和が進み過ぎじゃないのか。それとも愛してやろうか』

『ミラー様、今日もまたイクタス・バーナバと接触なさいましたかねえ?

 ミラー様には好意的やもしれませんが、何分にも狂神ですので触れれば触れただけ正気を損ないます。なるべくで結構ですのでお控え下さいませ。神降ろしは通常、行った術者を廃人に致します』

『どうして貴様はそう素直に人の好意を受け取らんのだ。たまにはミーセオの作法抜きで本心を話せ』


 余程に堕落の影響が強まっていると見え、ダラルロートともあろう者が取り乱す場面に俺は接する羽目になった。まあ、たまには俺が寄り添って大君を沈静化してやるべきだろうと話を聞いたのだが……。


『エファの待遇はあれでよろしいのですか、我が主よ』

『つーても……何が不満なのだ? 鏡護りは全知の重みにも平然としているし、渇愛も満たされていると言うか開き直ったと言うか。狂属性はそれほど付き合い辛いか、ダラルロート。堕落させて仲間意識を増してくれる事を期待していたんだがな』

『……そのような予定だったか御自分の思考の整合性に疑問を持って頂きたいですねえ……』

『何でだよ。そんなに神経細い手合いじゃねえだろダラルロートは。それとも鏡護りに母とアステールが馬鹿みたいに刈って来た命を注ぎ込んだのが気に入らんのか?』


 心当たりは四つ五つとあったのだが、その中の一つは俺が命を割いてエファの持つクラスをレベルアップさせてやった事だ。エファの馬鹿親をアステールがぶち殺してスッキリした所で親から受け継がされていた忌み名を封じてやろう、とイクタス・バーナバがエファのクラスを変えてくれた。それが鏡護りだ。しかしレベルが17と少々低くてな。どうにかならんかな、と急にはち切れそうなほど腹一杯喰わせられて食中りに苦しんでいた命を注いでみたら成長した。レベル20に達したよ。


『それもございますが……』

『じゃあ、ダラルロートの幻魔闘士もレベル20にしてやるから機嫌を直せ』

『……ミラー様から授けられる恩賞に否とは申しません、申しませんが……有難く頂戴致しますが……』

『まあ、落ち着け。大君らしくねえぞ、ダラルロート』


 ダラルロートのクラスもレベル20にはなったんだよ。それでもリンミの大君ともあろう者が不満そうに愚痴愚痴と言い続けるのは初めて接する姿だった。これが素や本心なら、なるほど認識欺瞞で隠されていた方が有難い。こいつ素だと相当面倒な野郎なんじゃねえのか、と中年男を相手に思い始めた頃に漸く本心らしい台詞を吐いた。


『……。……私はあれが苦しむ姿を見たかったのでしょうな。狂乱する姿は身に覚えがありました』

『ダラルロートはそう言う性格だから救われ難いんじゃないのか、とは父が言ってたぞ。傍目には悩んでるように見えねえんだと。母に言わせると腐敗と堕落から引き出した昏いものを抱えていて、常に発散したがっているそうな。本人的にはどうよ?』

『ミラー様ほど執着なさげに切り替えが早くもなければ、狂気じみた思い切りもよろしくないのです、我が主よ。それだけの事ですよ』

『あんまり正面から褒めてくれるな、照れるじゃないか。エファに毒針でも刺しそうな目付きになってるのは何でだよ』

『いえ、迷いなく剣を振るでしょうな』

『おい、少しは俺の娘の婿に出す事を想定しろや大君』

『……そうでした。そうでしたねえ』


 ダラルロートがエファの教育水準を見直そうと言い出して試験やら教養の講義などしてくれ始めたはいいが、ダラルロートは教師としてはちと厳しくてな。間違いなく勉強が嫌いになる、と両親と俺で意見の一致を見て俺も監視がてら参加する事になった。

 忙しいはずなんだがね、大君と俺。ダラルロートの調子があんまよくねえ間だけでも近くにいようと思ったら、ずっと調子悪そうなままなんだよ。演技されているのか認識欺瞞されているのか、本当にきついのか解りやしねえ。


「ミラー様、あまりエファを甘やかしなさいますな。デオマイア様の婿として相応しい程度の教養は必要でありましょう」

「ダラルロートとアステールと母の知識に頼れる俺から見てすら難題じゃねえか! なんだよこの難易度と嫌らしい出題文は!」

「エファは全知を有しておりますれば多少の難易度上昇は必須です」

「ミラー、エファにはダラルロートのお勉強は難しい」

「そうだろう、終わったら桃でも蜜柑でも創ってやるからな。おっかねえ大君にやらせると(から)くなるから採点は俺がしよう」

「わーい」


 何故だろうな。俺、今はエファに操られている訳じゃねえんだが何となく構いたいんだよ。アステールの仕業かな、と思わなくはないが……。夏殺しとか言うふざけた輩は死んだ。エファは鏡護りだ、と言っているのだがダラルロートがどうにも病み加減なんだよ。大君ダラルロートの復調にはもう暫く掛かりそうだ。扇子を取り出そうとして思い直したような半端な所作を見せたダラルロートを眺め、俺はそう思った。

ステータス更新

エファが夏殺しから鏡護りへクラスチェンジし、レベルアップ。ダラルロートはクラスレベルアップ。

***************************************************

分体『リンミの大君』

氏名 : ダラルロート

精神年齢 : 65

性別 : 男性

属性 : 中立悪

擬態種族 : リンミニアン/ミーセオニーズ

レベル : 20

クラス : 幻魔闘士20

状態 : 認識欺瞞 [強度100]

抵抗 : 頑健22, 反応36, 意志28, 魔素28.

攻撃回数 : 5回 / 二刀流10回

機動速度 : 超高速

武芸 : 刀剣開眼, 二刀流, 軽装鎧熟練, 毒物塗布習熟, 刀剣100, 陽動, 突破, 急所貫通, 警戒, 苦痛増幅/斬撃及び刺突, 無明の活路, 不誠実な太刀筋, 幻術師の隠し刃, 反応強化, 舞踏の如き回避, 稲妻の如き疾駆, 捕らえ難き陽炎, 騎乗V.

魔術 : 防衛的発動, 詠唱破棄, 多段詠唱, 発動遅延, 結界, 低級魔法無効, 宦官の嫉み.

術適正 : 理力80, 占術100, 幻術92, 召喚80, 心術100.

擬呪経路 : 占術100, 暗黒100.

異能 : 腐敗, 堕落.

異能経路 : 命喰らい

耐性賦活 : 斬撃V, 刺突V, 打撃V, 腐敗V, 毒V, 酸V, 病気V, 精神V, 魔素V, 欺瞞V, 精霊V.

技能 : 陶芸90, 統治V, 虚言V, 真意看破V, 潜伏V, 詐欺V, 偽造V, 贈賄V, 脱出V, 歴史V, 礼法V, 茶道V, 審美V, 演劇V, 詩歌V, 舞踏V, 宦官V, 毒物V, 神学II, 魔法学IV.

***************************************************

分体『鏡護りエファ』

氏名 : エファ

精神年齢 : 16

性別 : 男性

属性 : 狂善

擬態種族 : アガソニアン神族

レベル : 20

クラス : 鏡護り20

状態 : 通常

抵抗 : 頑健24, 反応30, 意志24, 魔素23.

攻撃回数 : 5回

機動速度 : 高速 / 超高速(森林)

武芸 : 弓開眼, 中装鎧熟練, 連続射撃, 最大射程延長V/弓, 弓100, 短刀60, 束ね撃ち, 精密射撃, 乱射, 狂乱, 零距離発射, 超速射, 憐憫ある矢, 慈悲, 精霊殺し 12回, 憎悪の宣誓/精霊, 宿敵V/ミラーソードの敵, 宿敵IV/リンミニアの敵, 宿敵III/じいやの敵, 機知, 観察眼, 神懸りの直感, 鋭敏五感V, 流転身, 狩りの宣告, 適応/森林, 騎乗V, 騎乗戦闘V, 渇愛の囁き.

魔術 : アガシアの血統, 防衛的発動, 対象範囲収束, 魔装弓術, 矢返し破り, 無声の魔装, 魔装持続時間延長II, 精霊破壊, 復活 2回.

術適正 : 元素100.

擬呪 : 元素100, 愛【超】.

異能 : アガシアの愛【超】, 全知/ティリンス, イクタス・バーナバの双頭.

異能経路 : 命喰らい

耐性賦活 : 斬撃V, 刺突V, 打撃V, 腐敗V, 毒V, 酸V, 病気V, 精神V, 魔素V, 欺瞞V, 精霊V.

技能 : 矢師80, 工兵80, 隠密V, 探索V, 追跡V, 徹底捜索, 罠V, 解析V, 鑑識V, 動物学V, 薬草学V, 徹底検証, 礼法V, 真実看破V, 気配察知V, 茶芸III, 脱出III, 指導III, 統率III, 宿敵研究V/ミラーソードの敵, 宿敵研究IV/リンミニアの敵, 宿敵研究III/じいやの敵.

***************************************************


▼ダラルロート追加

宦官の嫉み : 【意志】を通せば堕落から力を得て負傷段階軽減と準備術式回復


▼エファ追加

狂乱 : 疲労時のみ選択可 命中+++ ダメージ+++ 防御激減

渇愛の囁き : 【意志】を通せば対象を魅了

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