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借り物の英雄

借り物の英雄


荷物持ちと笑われて

背負った傷は数えなかった

聖剣の光も 聖女の奇跡も

この手から渡した力だったから


追放の夜に取り戻す

奪われた力と 自分の明日を

返してもらうぞ

英雄を飾った偽りの輝きを


何も背負わぬ旅の途中

一杯のスープで救った少女は

滅びた故郷を胸に隠す

気高き竜王の娘だった


称号も 爵位も いらない

俺を値踏みする声もいらない

共に食卓を囲む人がいて

隣で君が笑うなら


借り物の英雄は地へ落ちて

名もなき荷物持ちは空を仰ぐ

もう誰かのために耐えるのではない

この力も人生も

守りたいものへ、自分で差し出す


# 登場人物紹介


## レオン・アークライト


二十二歳。本作の主人公。元英雄パーティー「黄金の聖剣」の荷物持ち。


十五歳の加護鑑定でC級《荷物整理》と判定され、料理、野営、装備修理、罠解除など、あらゆる雑用を押しつけられてきた。しかし、本当の加護は仲間へ魔力や能力を分け与え、傷や毒を肩代わりする神授級《万象循環》。ジークたちの華々しい功績は、レオンが陰から支えていたからこそ成し遂げられたものだった。


穏やかで我慢強いが、一度見限った相手には戻らない。追放後は英雄になる道を選ばず、自分の料理で人を喜ばせる食堂を開こうとする。


「俺の力も、俺の人生も、もうお前たちには貸さない」


---


## シルフィア・ドラグニール/シルフィ


十九歳。本作のヒロイン。人間の姿をした竜王の娘。


王国軍に故郷を襲われ、傷だらけで街道に倒れていたところをレオンに救われる。銀色の髪と青緑色の瞳を持つ美少女で、本来の姿は風と雷を操る銀白色の竜。


人間を警戒していたが、正体を尋ねず温かい料理を振る舞ってくれたレオンに心を開く。レオンの前では食いしん坊で甘えん坊だが、彼を傷つける者には竜王の娘らしい容赦のなさを見せる。


「レオンは弱くありません。強いのに、弱い者を踏みつけない人です」


---


## ジーク・フォン・ゴールド


二十四歳。侯爵家の嫡男で、英雄パーティー「黄金の聖剣」のリーダー。


SSR級《聖剣の使い手》を授かり、救国の英雄として人気を集めている。華やかな容姿と剣技を誇る一方、失敗を認められず、責任を立場の弱い者へ押しつける傲慢な性格。


レオンから身体能力、反応速度、魔力を与えられていたことを知らず、すべてを自分の才能だと思い込んでいる。体面を理由にレオンを追放したことで、借り物だった実力を失っていく。


「C級の荷物持ちが、俺たちと並んで歩けると思うな」


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## マリア・レイヴン


二十一歳。「黄金の聖剣」に所属する聖女。


SSR級《光の女神の寵愛》を持つ慈悲深い聖女として崇拝されている。しかし実際は身分と寄付金で治療する相手を選び、汚れ仕事や患者の世話をすべてレオンへ押しつけてきた。


本来の回復能力は高くない。レオンが魔力を供給し、患者の傷や毒を肩代わりしていたため、自分には奇跡を起こす力があると思い込んでいた。レオン追放に積極的に加担しながら、能力を失うと彼が力を盗んだと言い始める。


「荷物を運ぶことしかできないあなたを、仲間に置いてあげたのですよ」


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## ガイウス・グランベル伯爵


五十二歳。ルミナス王国軍の最高司令官。


権力と利益のためなら、兵士や民衆の命さえ利用する腐敗貴族。ジークを救国の英雄として祭り上げ、その名声を利用して王国の実権を握ろうとしている。


竜族の領地に眠る魔晶石を奪うため、「竜族は魔王軍の手先である」という偽情報を流した張本人。ジークたちの失敗を隠し、レオンとシルフィへ王国崩壊の責任を押しつけようとする。


「真実とは、力を持つ者が民衆に信じさせたものだ」


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## エレノア・ルミナス


二十七歳。ルミナス王国第一王女。


加護の等級だけで人の価値を決める王国の制度に疑問を抱いている。ガイウスによって政治の中心から遠ざけられながらも、辺境の被害や軍の不正を独自に調査してきた。


レオンを利用できる兵器ではなく、一人の人間として扱う。王国を救ってほしいと頼む前に、彼が受けた不当な扱いについて頭を下げられる誠実な人物。後半では魔導記録晶石を用い、ジークたちの偽りを国民の前で暴く。


「王国への忠誠を求める前に、王国があなたへ謝罪しなければなりません」


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## バルド・グレイ


四十五歳。街道沿いの食堂を営む元王国騎士。


戦場で片足を負傷して騎士団を退き、寂れた食堂を一人で守っている。ぶっきらぼうだが面倒見がよく、行き場を失ったレオンとシルフィを住み込みで雇う。


レオンの加護ではなく、料理の腕と丁寧な仕事を最初に認めた人物。英雄になることだけが人を救う道ではないと教え、レオンにとって父親のような存在になっていく。


「客の腹を満たして、無事に送り出す。それだって立派な仕事だ」


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## 国王アルフォンス・ルミナス


五十八歳。ルミナス王国の国王。


病気がちで、軍事に関する判断をガイウスへ任せてきた。その結果、王国軍の腐敗と竜族への侵略を見過ごしてしまう。


根っからの悪人ではないが、国王として決断しなかった責任を負う人物。真相を知った後はガイウスを解任し、ジークたちを裁判にかける。娘エレノアへ王権を譲り、自らの過ちを公式に認める。


「知らなかったでは済まされぬ。知らぬままでいたことこそ、余の罪だ」


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## 古代魔獣ベヒモス


絶望の回廊の最深部に封印されていた巨大な魔獣。


本来は大地の魔力が暴走しないよう、それを体内へ取り込む守護獣だった。ガイウスの命令でジークが魔力核を破壊したため理性を失い、王都へ向かって進撃する。


単なる討伐対象ではなく、人間の欲望によって怪物へ変えられた存在。レオンはベヒモスを殺さず、《万象循環》で体内の魔力を大地へ戻して救う。



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