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裏山異世界農業 〜伝説の剣? 要らないよ……。そんなのより伝説の肥料とかないの?〜  作者: 皐月彦之介


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第9話 第一村人?

    *


 良太朗の一日は、お社の神饌(しんせん)を交換して朝食の準備をするところからスタートする。朝食が出来上がっても、ほのかは起きてはこない。いろんな事があって疲れているのだろう。ほのかの朝食にラップをかけ、良太朗は朝食を取る。


 ふとした思いつきを試してみたくなった良太朗は離れへとむかった。部屋の電気をつけ、必要なものを用意していく。三脚にモービルアンテナ、ケーブル類に肝心の無線機とバッテリー。必要なもの全てをリュックに詰めると結構な重量になった。良太朗が高校生の頃にはこれを担いで、いろんな山に登っていた。今ではちょっと無理かもしれない。その事実が、良太朗が歳をとったことを実感させてちょっと悲しい。


 良太朗の思いつきとは、要するに転移先で無線機を使ってみようということだ。人が住んでいるのかどうかも分からないけど、一九世紀末くらいの文明が存在すれば、なんらかの電波は受信できるだろうという目論見(もくろみ)だ。


「よし、試してみるか」


 良太朗はリュックを担いで鳥居をくぐる。いつもの感覚のあと草原へとたどり着いた。早速、アンテナを設置して無線機に接続。バッテリーを繋げば準備完了だ。無線機の電源を入れ、とりあえずいろんな周波数を聞いてみたけど、やはりというか想像どおりというか、無線交信らしきものは受信できなかった。


 良太朗は半ば諦めつつも、CWで発信をはじめる。何年ぶりかという電鍵だというのに、意外とからだがおぼえているものだ。もし、この世界の人に意味は伝わらなくても、一定のパターンで信号が出ていれば、人工的なものだというのは伝わるだろう。


『―・―・ ――・― ―・―・ ――・―  ―・―・ ――・― ―・・ ・ ・――― ・――・ …………』


 一〇分くらい呼び出ししてみたが予想通り応答はなかった。やっぱりこの世界にに人間は居ない、もしくは居ても無線通信ができるほどの科学文明は存在しないということだ。多少ではあるがこの世界について分かったのだから、成果としては十分だろう。


 良太朗が大量のケーブルを巻いて後片付けをしていると巨大な影が通り過ぎた。直後、ものすごい風圧を感じた良太朗は思わず目を閉じる。ドスンという地鳴りを感じた良太朗が目を開くと、眼の前に巨大なドラゴンが居た。あまりの事に良太朗は尻もちをついてしまう。


「ふむ……。魔力に不快な干渉をしておったのは貴様か?」


 ドラゴンが言葉を話した。良太朗は想像外の出来事の連続に、飛び上がりそうなほど驚く。だけど、問答無用で襲われる訳ではなく、話が通じるならなんとかなるかもしれない。


「えっと……。魔力に干渉とは?」


「こういう感じのやつじゃ」


 ドラゴンは良太朗の腕ほどもある巨大な爪をもつ指で地面をリズム良く叩く。どしんどしんという大きな振動はモールスのように聞こえる。


「それなら、僕がやったことかもしれない」


「ふむ? ん? お主この世界の住人ではないな?」


 ドラゴンが興味深そうな様子で、良太朗へと顔を近づける。あまりの恐ろしさに良太朗は息を止めて震え上がる。なんせ目玉が一抱えもあるほどの巨大さだ、良太朗が失禁しなかったことは褒められてもいいくらいだと思う。良太朗のニオイを嗅いでいるのだろうか、フンフンと鼻を鳴らしたあと鳥居の方を見て納得したように頷くドラゴン。


「なるほど、あの世界の人間か。ならば我に食物を馳走せよ。それで許してやろう」


「食べ物ですか? どのようなものが良いんです?」


「お主らの世界の神がいつもいつも「我らの世界の食べ物は美味い。料理のレベルがすごい」と、自慢してくるのじゃ。どれほどのものか我が試してやろうと思ってな」


「その大きな身体(からだ)を満足させるだけの量は、用意出来ないかもしれません」


「大丈夫じゃ。普通の人間が食べる量でよい。人化(じんか)すればよいだけじゃ」


「それならなんとか……」


「ならば準備が出来たあと、先程とおなじ方法で魔力を揺さぶるがよい。不快ゆえに一度だけでよいぞ」


 そう言い残すとバサリと翼を羽ばたかせて空に浮かび上がり、ものすごいスピードで飛び去っていってしまった。緊張でなんとか返答していた良太朗は一〇分ほどは放心していただろうか。再起動した良太朗は飛び上がると、鳥居をくぐって裏庭へと逃げ帰るのだった。


 裏庭から家に戻ると、起き出してきたほのかが待っていた。良太朗の様子をみたほのかは心配そうに話しかけてくる。


「良太朗。大丈夫?」


「ドラドラドラドラドラドラ」


「漫画の真似?」


「ちがっ、あっちの世界にドラゴンが居たんだ!」


「ドラゴン⁈ すごい!」


 のんきな返事をするほのかに、良太朗もだんだんと落ち着きを取り戻していく。


「どんなドラゴン?」


「ああ、大きさは胴体だけでダンプカーくらいのサイズで、西洋タイプのドラゴンだった。色は艶のある赤色」


「おお、かっこいい」


「ほんと怖かったんだよ」


「でも無事」


「話の通じる相手で助かったよ」


「話?」


 良太朗はほのかにドラゴンとのやり取りを説明する。説明していくうちに良太朗の中でも、話が整理されていく。要するに食事を提供しろと言われただけで、美味しくなかったら許さないなんて事は言われていない。その事実に気づいただけでかなり気が楽になった。


「料理を出すとして、どんなものが良いんだろうな」


「ハンバーグ! 定番」


「定番ではあるけど……、それならカレーとかもじゃない?」


「ん! なら、ハンバーグカレー」


「ドラゴンって普段何食べてるんだろ? やっぱ捕まえた動物とか?」


「たぶん?」


「ならあまり薄口で複雑な味の料理だと、美味しさが分からないかもしれないな」


「やっぱりカレー」


「スプーンで食べられるし、それが良さそうだなあ。人化したドラゴンがナイフとフォークを上手く使いこなせるとは思えないし。それにカレーを美味しくないっていう人ほとんど居ないしな」


「じゃあ、肉を買い出しに行こうか」


 人の多いところは大丈夫かと聞いてみたところ、ほのかは頑張ると答えたので良太朗はほのかを連れて買い物に出かける。ドラゴンに出すことになるわけだし、いつものカレーのように近くのスーパーで買える薄切り肉ではなく、少し離れた大型のスーパーで牛のスネ肉を買ってきた。良太朗の家ではごちそうのときは牛スネ肉のカレーが定番だった。


 良太朗とほのかはキッチンでカレーを作っていく。ほのかに包丁を持たせるのは怖いから、一緒に買ってきたピーラーで、じゃがいもと人参の皮を剥いてもらう。


「ピーラーすごい!」


「でしょ。じゃがいもの芽の部分はこの角のところを使って取るんだよ」


「ん! ドラゴン人化(ひとか)? 気になる」


「まあドラゴンなんていうファンタジー存在だし、そのくらいは出来ても普通じゃない?」


「ちがう、そうじゃない。どんな姿に変身?」


「あー……。なるほど、雄ならイケメンだろうな。雌は色々バリエーションがあるね。いちばん多いのはのじゃのじゃ言うロリっ子?」


「ん! でも普通すぎる。メスガキ期待」


「ドラゴンに雑魚雑魚言われても、そうですねとしかならない気がするけど?」


「たしかに。難問」


 良太朗とほのかはドラゴンが人化した姿を色々と話し合う。老若男女ほとんどすべてのパターンが出きって考える時間が多くなった辺りでカレーが完成した。圧力鍋を使ったから、たっぷり煮込んだのと変わらないくらいにスネ肉も仕上がっている。


「おお! 美味しそう」


「僕達がたべるのはお昼と夕食だね」


 お(ひつ)にご飯をいれて、カレーの鍋を上に乗せて風呂敷(ふろしき)で包む。離れからキャンプで使う折りたたみテーブルを持ってくる。


「ドラゴンにカレーを食べさせてくるよ」


「一緒にいく。ドラゴン撮影」


「一緒にいくの? 危ないかもしれないよ?」


「ん! 覚悟完了」


 ほのかの言う通りドラゴンの撮影ができれば、インパクトのある動画が取れるだろう。危険はなさそうな感じだったし、一緒に行くことにした。両手が塞がっていたので二往復するつもりだったのだが、お試しということで、袖の一部をほのかが摘んで鳥居をくぐってみた。結果、ふたりとも転移に成功したので、身体の一部が良太朗に触れていれば条件クリアなのかもしれない。


 テーブルを組み立ててカレー鍋とお櫃を準備。放置したままになっていたアンテナをセットしなおし、無線機の電源を入れる。ほのかは良太朗のスマートフォンを持って撮影をはじめる。


「ドラゴンを呼ぶよ?」


「ん!」


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