表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺されたもの  作者: 松仲諒
1/8

第1章 コンタクト

 手の平でグラスを揺らすと赤ワインのいい香りがした。ワインを口に含むとボディのしっかりした力強い味わいが僕を満足させた。いいブドウで丹念に熟成されたワインは本当に美味しい。テーブルにはこれも丁寧に調理され盛り付けられた皿が前菜から順番に運ばれてきた。今日家に来てもらったシェフもいい仕事をする。複数の良質な素材の組み合わせに絶妙な火加減、味付けに僕は満足だった。目の前に座っている妻も満足しているようだった。このような絶妙な満足感はAIでコントロールされて製造、加工されたお酒や料理では味わえない。まだ職人の目利きや技が活躍する領域だ。美味しい料理を食べ終えて僕達はお酒を飲みながらリビングルームでゆっくりくつろいだ。お酒は僕はグラッパを、妻はカルアミルクを選んだ。

「今日も美味しかったわ。来週のパーティーもあのシェフに来てもらいましょうよ」

「そうだな。君の友達も喜ぶだろうね」

「来月はまたいないんでしょ」

「うん、ヨーロッパで公演だ。1か月家を空ける」

「後半はフランスでしょ。一緒に行ってもいい?」

「ああ、いいよ。あんまり観光等はできないけど」

「大丈夫、一人でも歩けるから」

そのとき僕の手首がブルッと震えた。誰かがメッセージを寄越したみたいだ。手の平に照らせれた端末の画面を観た。

『こんにちは、ポールさん。あなたの公演は楽しいですね。あなたも世界的な人気者になってさぞいい生活を送っているのでしょうね。ところで評判のいいあなたの人気のシリーズですが、私は知っていますよ。それがどうやって産まれたのか。いいでしょうか、その出どころを公表して? もしそれが困るようでしたららここまで連絡ください。2週間、ご返事をお待ちしています。東の太陽』そのメッセージを読み、僕の体から冷汗が噴出した。何を言ってるんだ、こいつは。あのことを知っているというのか?

「どうしたの? 何かあったの。顔色が変よ」妻が声をかけてきた。

「いや、何でもない。来週の公演のことだ。ちょっとトラブルがあったようだ。でも心配はいらない」

「そう、それならいいけど」

僕はすぐにジュリアンにメッセージを送った。

『こんなメッセージが来た』

『お前のところにも来たか。俺のとこにも来た。同じ差出人だ』

『何で知っているんだ彼は』

『わからない』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ