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遺されたもの  作者: 松仲諒
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第2章 生活

 僕はアメリカのロサンゼルスで産まれ育った。家は一般的な普通の家だったが両親は特にこれといった専門的な職業は持たず、たまに来る指示に従って仕事をするだけで、後はのんびりと遊ぶように生活をしていた。約百年前に登場したAIの進歩によって人の仕事、生活は一変した。まず単純な事務職や労働職は消滅した。AIによって制御されるコンピューターや機械が事務処理や労働をこなすようになったのだ。工業、農業、漁業、商業、サービス業など全ての産業の基本的作業はAIとコンピューター、機械が賄えるようになった。そこに人の出る幕はなかった。人が活躍できる場は、AIではまだ解明できない高度な科学や医療、機械ではできないような細かい職人技のような技術、そしてクリエイティブな発想を必要とする学問やアートだけになった。AIが一般的な人の職業を奪っていったのだ。しかし、その代わりに人が労働しなくても衣食や生活に必要な基本的な物事は自動で効率的に供給されるようになった。そのため政府はベーシックインカム制度を導入し一般的な人には生活に必要な最低限の収入が保障され、住居も公的に供給されるようになった。たまに仕事の依頼はくるが、それ以外は遊んでいても暮らせるようになったのだ。その制度が導入されたとき人々は「これで遊んで暮らせる」、「もうつらい労働をしなくてすむ」と歓喜した。確かにつまらない労働からは解放され、自由になる時間は増えた。しかし供給される物事は平等と効率が追求されたのでどれも味気なかった。住居はビルの中の狭い部屋(辛うじて家族一人に一部屋は提供されたが)、食事も材料が肉だか野菜だかわからないような素っ気ない物だった。それで死ぬことはなかったが楽しみや興奮はなかった。人々の楽しみは音楽や映画やスポーツを観ることやゲームをすることだった。どれも供給されたVR端末で楽しめた。VRのお蔭であたかも自分も参加しているようにアーティストのライブや映画を楽しんだ。スポーツはバスケットボールやフットボールが世界中のトップアスリートの参加によって世界で争う戦争のように盛り上がり、自分のひいきのチームを応援し、まるで自分が参戦しているように勝った負けたと一喜一憂するのが皆の楽しみになっていた。ゲームの世界でもスーパーヒーローとして桁外れに強いプレーヤーが出現し、皆そのプレーヤーを追いかけてVRの中でプレーしていた。人々はVRに興奮を求めて熱狂し、その興奮を提供するアーティスト、俳優、作家、アスリート、ゲームのスーパーヒーローには巨額の富が集まった。クリエイティブな人やスポーツ、ゲームに際立った能力を持つ人と、そういう能力を持たない一般的な人との間に貧富の大きな分断が起こった。

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