名もなき最期
「まあ俺も、歳食ったってことだ」
あの後、ランバルドが宣戦布告を取り下げた旨を”赤刃”がもたらし、兵たちは大喝采をあげた。
国境沿いに大波が立ったのかというほどの盛り上がりで、特にそういうものに縁がなかった俺たちまで、何やら気分が高揚してしまったものだ。
「自分の名誉のための冒険じゃなく、誰かのために役立つ奮戦ってのは、気持ち良かったんじゃないか?」
癖になるぞ、とニヤニヤ笑いながら、クリスが腕を組んでいる。
そういや、こいつは”風”と”土”の混合魔術で、いくつかの新分野を開拓したんだったけか・・・
「・・・もう、俺の出番はいらんよ。手持ちの術を増やして、安定性が増したころに、自分の魔力が衰えはじめるとは・・・。つくづく、バランスの悪い能力を授かったもんだ」
城壁に背をあずけ、うずくまっていた自分の手を、友人に取られる。
引っぱられて立ち上がった所に、耳ざわりの良い、異国の涼風のような声が届いた。
「ニールさま! クリスさま!」
そちらを振り返ると、フリアが初めて見せるような親しげな笑みで、かけてくる所だった。
「・・・」
それを確認した友人は、
「ニール・・・。お前まさか、あの嬢ちゃんを「抱ける」とか思ってないだろうな」
したり顔で告げる。
「ばっ、馬鹿かお前は!」
そんな、ある種”つり橋効果”的なもんで、あんな美女を堕としていいはずがないだろう。
それにフリアは、俺たちよりちょうど一回り下だ。
万が一どうにかなるようなことがあったら、昔のパーティーの奴等からも「このロリ婚が!」と一生言われ続けるだろう。
「ーー感動しました! 私、『魔術士』って存在に感動したの、初めてです!!」
下卑た男たちの会話など知る由もなしに、彼女はやわらかい陽射しを浴びながら、最高の笑顔を浮かべたのだった。
その後、《ニール=ダンセル》の名は、ディノスの国から完全に消えることとなった。
ランバルドへの戦争脅威度を上げるために、彼の正体、その生死すらも、すべてが表沙汰にされることはなく、この世から失われていったのである。
彼が破壊した「リンクブルグの大砦」は、ディノスがその賠償責任を果たしたが、実のところ、国に借りを作りたくないために、彼は友人から『金羊毛』を半分ちぎり取り、その売値で賄ったという。
人生の半分は失われたわけだが、それでも彼は、命ある限りはディノスの戦争抑止力として、責任を果たした。
・・・わずかに冒険史に残った話題であれば、しばらく後に「フレア=ダンセル」なる美女が現れ、最年少の19歳において、ギルドランクの『獅子』を獲得したぐらいであろうか・・・。
魔道国家として、一躍大陸のトップクラスに躍り出たディノスの、それが始まりだった。
最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました・・・!
割烹にも書いたんですが、「誰が読むんだコレ?」みたいなアラフォー主人公であり、しかも、作中ずっと説明ゼリフをしゃべりっ放しのキツキツ構成・・・
大変なご苦労をかけてしまったことと思います。
(さらに同シリーズ「小さき友よ」を読んでいないと、あんまり伝わらないという・・・)
それでも、自分にとってはじっくりと書き上げた、納得のいくものになった話だと、いくらかは感じております。
どうにもファジーな世界で頑張っている話なのですが・・・楽しんで頂けたのなら、幸いでした!
外れの方、ゴメンね!!
それでは、また次作でお会いできることを願ってーー失礼いたします!




