避難地 4
全然暇にならないなぁ…
「井上さぁぁぁぁぁぁん!助けてぇぇぇぇ!」
涙を流しながら風呂に入っている綾香へと向けて西ヶ野は助けを求める。
「え!?何?きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然風呂場に、しかも扉のない壁から入ってきた幽霊に綾香は手で体を隠し悲鳴を上げる。
「助けて井上さん!幽霊が出たの!」
「助けてほしいのはこっちよ!私もいま幽霊に驚かされたわ!」
「ええっ!こっちにも幽霊!?」
「あなたのことよ!」
突然の出来事にお互いにわけのわからない状態からしばらくたち、やっと二人に落ち着きが戻ってきた頃、西ヶ野には外で待ってもらい風呂から上がった綾香は彼女に話しかける。
「それで…一体何があったんですか?」
「出たのよ!幽霊が!」
「………幽霊って自分のことじゃないですか…」
「そうじゃなくて!出たのよ!正しくは出たんじゃなくて声が聞こえたんだけど」
「声?あの三人組の誰かの声じゃないんですか?」
声といわれてまっさきに思ったことがこの家にいる綾香を助けた三人のことだ。
「絶対に違うよ!だって女の人の声だったし」
女の人でありえそうなのは、如月のいっていた寝込んでいる祖母だろうか。
「それって如月さんが言っていた寝込んでいる祖母のことじゃないですか?」
「それも違うよ。若い人の声だったよ」
「う~ん…。じゃあなんだったんでしょうね…とりあえずは部屋に戻ってみませんか?」
怖がる西ヶ野の背中を押しながら部屋へと戻る二人。
びくびくしながら部屋の様子を伺う西ヶ野だったが、綾香が風呂へ入る前と何も違ったところは見当たらなかった。
「やっぱり…何もないですよ…?」
「あれ~?おかしいな…。確かに聞こえたんだけど…」
「きっと疲れか何かで幻聴が聞こえたんですよ。さあ今日はもう寝て、すこしでも早くこの家を出て宗助たちに合流することを考えましょう」
「そう…だね」
なんだか納得してはいない様子だが、しぶしぶ寝る準備を始める。
「ほんとに聞こえたんだけどな~」
「はいはい。わかりましたから。明日如月君たちに聞いて見ましょう…」
「う~。信じてないでしょう…」
西ヶ野のぼやきに帰ってくる返事はない。今日一日でたくさんのことがありすぎた。
そんな彼女は布団に入って気が抜けたと思ったら、もう夢の中にはいっていたのだ。
西ヶ野も西ヶ野で自分の姿を改めてみる。
半透明なまさに幽霊のような姿。これ自体は自分の異能力で見慣れているがこんなにも長い時間この状態でいることは初めてだ。
たくさんの不安はあるが、西ヶ野が布団に入ったときには意識が飛び、寝息をたてていた。




