終わりの始まり
最初だけすこし説明あります
今から22年前、世界で初めての異能力が発見された。
それよりも前にも能力が発現したものがいるのかもしれないが、一番初めに異能力と認定されたのが22年前なのだ。
その一番初めに異能力者と認定された彼は今でいうランクAの”念動力”の使い手だった。
だが初めからランクAだったわけではない。
彼はごく普通の青年だった。ある日に自分が直接触らなくても物を動かせることに気がついた。
最初のうちは軽いものを動かすことで精一杯だった。
彼は毎日この弱い異能力を鍛えた。すると少しずつだが重いものも動かせるようになってきた。
異能力の強くなるイメージは筋肉と似ている。異能力を限界まで使うとしばらくうまく力を出すことができなくなるが、力が回復したときに以前より異能力が強力になるのだ。
段々と力をつけていった彼はある日事故を起こした。
彼にとって事故を起こしてやろうと考えてやったのではない。車の運転中、荒い運転をしてくる不良を少しからかうつもりでハンドルをすこし念動力で動かしてやった。
ほんのちょっとからかうだけのつもりだった。
しかし結果はからかう程度ではすまなかった。
急にハンドルが動いて慌てた不良の運転手は対向車線につっこんで衝突事故を起こした。
不良は大怪我をした。
追突をされた方は三人家族で、親の二人は即死。子供だけは何とか一命を取り留めた。
不良はハンドルが勝手に動いたと証言したがそんなことはもちろん信じられることはなかった。
彼は後悔した。すこしからかってやろう。そんな軽い気持ちでやったことがこんな大事故になるなんて…
罪の重さに耐え切れなくなった彼は自主をした。
初めは私が異能力でハンドルを動かしたのが原因です。そういってもまったく信じてもらえなかった。それどころか冷やかしだと思われて追い返されそうになったので、その場で警察官を宙に浮かべた。
すぐに警察官の態度は変わり、この後すぐに取調べを受けた。
そのあと様々な実験が行われた。そして異能力が初めて認められたのだ。
彼は罪に問われる代わりに異能力の解明のため国に協力することになった。
そして国は彼の他にも異能力を発現したものがいるのではないかと考え、異能力者を管理しようとした。
正しい異能力者の数とその能力を知るために、国は能力に目覚めた自覚のあるものを集めて今回のような事故を二度と起こさないようにしっかり教育をするとこにした。
そして異能力者の能力によっては今の社会に役に立つことができるのではないかと考えたのだ。
国は異能力者を迫害ではなく共存の道を選んだ。
「で、その年から急に大体1万人に1人くらいの割合で超能力者が生まれるようになった。事件を起こした彼のように突然能力が発現したという人も少ないが存在する。まあすげえわかりやすく言うなら映画X○ンの世界みたいなもんだな!でも違うところもある。x○ンの世界では異能力者は迫害されているけど現実は逆だ。例えばx○ンに登場するキャラクターでマ○ニートーという磁力を操り、あらゆる金属を意のままにするミュータントがいる。この学校にもそれに似た能力をもっている人もいる。やろうと思えば銃弾を防ぐこともできるだろう。でもマ○ニートーみたいにうまくはいかないだろうな。理由は2つある。1つは国は最初の異能力者の協力のおかげで能力を無効にできる装置を完成させた。それの前では能力は使えない。つまりその装置の前では一般人となんら変わらないわけだ。まあその絶大な効果のおかげなのかまだ異能力を使った大きな犯罪もなく、この装置が実際に使われたことはない」
続けて先生は2個目の理由を言おうとしているが、それは異能力者なら誰でもわかる。
2個目の理由は映画などで活躍する異能力者と比べて圧倒的にスタミナが足りない。
さっきの例で言うなら、この学校にいるマグニートーに似た異能力者が銃弾を防ごうとする。
恐らく高ランクの異能力者なら十数秒間は銃弾を防ぐことができるだろう。だがその後は蜂の巣だ。
本気で能力を使うと全力疾走よりも疲れる。いくら高ランクといえど十数秒が限界なのだ。
先生の言った2個目の理由は予想通りで、正直異能力者は国からの待遇もいいので、映画のミュータントのようにバンバン異能力が使えないのにわざわざ犯罪行為をするものはほとんどいないということだ。
そして実際にもう現場にでて活躍している異能力者もいる、それがどんどん増えていき異能力者はいつかなんの特別なものでもないみんなの常識になっていくだろう。と、先生は付け加えた。
その話が終わると授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
先生はここまでとい言い、今日の授業が終わった。
今日の授業がすべて終わり放課後に僕はいつも行っているお気に入りのポイントの屋上に移動しながら今日の先生が言っていた話を思い出していた。
先生の言っていた現場で活躍している異能力者は実際まだほとんどいない。
なので ”異能力者が常識になる” これはまだまだ先の話だろう。
僕たち異能力者にとっても現場に出るなんてまだ先の話と考えていて、正直将来のことなんてまだはっきりしていない。
「まあそんな未来の話は後だ。今はすべきことをする!能力発動」
屋上に着いた僕は一言。
別に無言でも能力は発動できるがここは気分の問題だ。
まず学校全体を見回す。よし、しっかり発動してるな。
「今は部活中か…いいね…うちの学校ってやっぱレベル高いよな…」
僕の名前は竹田 宗助。趣味はないけど帰ったら家でゲーム、休みは友達とどこかへ遊びに行く。
そんな我ながら面白くない生活をしているけど、異能力が発現してこの学校にきてから放課後毎日ここにきている。
ここにきてただ意味もなく1人でぶつぶつしゃべってるのではない。
今は千里眼の能力を発動して放課後の部活動を覗いているのだ。
僕の異能力は千里眼ではない。なのになぜ千里眼が使えるのか?その答えは異能力にある。
僕の異能力はランクCの”能力複写”。
つまり能力者の能力をコピーして使うことができる。
コピーできるといっても所詮はcランクの異能力者。まずコピーするのには相手に3秒以上ふれていなければならないし、その相手のランクの1つか2つ低ランクの異能力しか使うことができない。
そもそもランクとは何なのかという話なのだが、異能力のイメージは筋肉と似ているのだが違う部分もある。それは異能力を使い込んでいるとある日、急に昨日とは比べ物にならない力を発揮することができる。それを区切りにランクが上がったとしている。
異能力のランクわけはA,B,C,D,EまでありAランクは現在いる最高の異能力者で、Eは自分に異能力があるとこは自覚できるがほとんど異能力を使うとことができない。
異能力のランクが上がるときに人によってその異能力の特色が出てくる。
人によって得意な部分がより強く出始めるのだ。
僕の場合だとEからDになったときは1つしかコピーできなかったのが5つになった。DからCになったときは覚えるコピーの数の制限がなくなった。
どうやら僕は覚えることは得意だったみたいで、コピーを劣化させずに覚えることは不得意だったみたいだ。
これが劣化させることなく覚えることが得意な人ならそのまま劣化なしでコピーできたのかもしれない。
少しの間部活を見て多少の疲れを覚えてから、目的のものは満喫できたので適当に学校を見ることにする。
廊下を見渡すと1人の女の子の姿が見えてきた。彼女はこの学校では一番の有名人かもしれない。
彼女の名前は五十嵐 久美。皆にはくーちゃんと愛称で呼ばれている。
くーちゃんの有名な理由、それは彼女の異能力のランクがAだということだ。だが、ただAランクなだけじゃない。
男子なら一度は友達と熱い討論をしたことがあるだろう。あの漫画のキャラとあの漫画のキャラが戦ったらどっちが強いか、誰が最強かと。
ここの学校で一番熱く語られる内容。それは誰の異能力が最強かということだ。
そしてこの議論の最強候補に必ず出てくるのがくーちゃんなのだ。
くーちゃんの異能力はランクAの”創造”。くーちゃんは頭で考えたものを現実に創造することができる。
そしてくーちゃんのランクAの中で最強といわれる所以は、想像したものの構造を知らなくても創造することができる。つまりいきなり拳銃を作り出すこともでき、使い方しだいでどんなことでもできる。
しかしミサイルをつくって?といわれても創造することはできない。理論上できないことはないが構造が複雑すぎたりサイズが大きすぎると本人に負荷がかかり途中で失敗してしまう。
この負荷のラインが人によって違うので最強議論では毎回結果が変わってしまう。
そのせいで毎度毎度熱くなった議論から喧嘩になることも少なくない。
それだけなら有名人どまりだが、くーちゃんが一番の有名人かもしれないと思われる理由はもう1つある。
くーちゃんの見た目はどう見ても小学生なのだ。1個上なので年上のはずなのだが全く信じられない。
いつももっている熊の人形がそれをより際立たせる。
顔は非常に整っているが基本的に無表情、だが時折みせる無垢な笑顔はこの学校にファンクラブを作らせるほどに魅力的なものだった。
まあそれもあって恐らく学校1番の有名人なわけだ。
くーちゃんのかわいい姿を見て少し気力を回復した僕はさらに学校を見渡す。
うわ…見たくないものを見つけてしまった。
1人の男子生徒が丸くなっているところに女子生徒達が蹴りをいれている。
僕の千里眼の異能力では音は聞き取れないが何を言っているかはわかる。
「きもいんだよ」「デブ」「死ね」
そんなありきたりな暴言を吐きながら女子生徒達は男子生徒に蹴りを入れ続ける。
あの蹴りの強さをみるに異能力をつかっている。異能力の中では一番多いといわれている強化系で、低ランクの女性が軽い力で蹴っても成人男性の本気の蹴りと同じくらいの威力が出るはずだ。
彼女達の放った蹴りは顔面にあたりどこかを切ったのか血がでている。がすぐに血は止まる。
蹴られている男子生徒の名は堀 健太郎。
見た目は小太りで清潔感のない生徒だ。それが理由でいじめられているのだけれどそれ以外にもう1つ理由がある。
堀はこの学校にいるなかで唯一”治療”の異能力を持っている。
彼のランクはcで自分の傷をただ無差別に治すだけだが、これが高ランクになればいままで治療できなかった病気でも治すことができるのではないかと期待されているらしい。
ただ異能力のランクを上げるためにはその異能力を使い込まなければならない。
治療系の異能力を使うには怪我をしなければいけない。ただそれを理由に怪我をさせることは人としてどうなのかと問題があるようだ。
だけどなるべくはやくランクを上げさせたい。なので先生は堀に暴力を振るっている現状を見てみぬ振りをしている。
「止めろっ!」
恐らくそう言いいじめを止めようとする人物。
この場に割って入った人物の名前は落合 マナト
マナトは僕の親友だ。マナトは背が高くイケメンで、それでいて嫌味のない性格。周りのことをよく見て気遣い、誰からも好かれる僕も自慢の親友だ。
異能力はランクAで最初の異能力者と同じ”念動力”をもっている。
そんな彼に止めるように言われた女子生徒はさっきの剣幕はどこにいったのか、今は倒れていた堀を起こしてあげマナトに笑顔で話しかけている。
いじめの現場をマナトに見られたのが気まずいのか、彼女達はそそくさとどこかへ行ってしまった。
マナトは堀へ心配の気持ちを表しているようだが、堀は何も言わずに何もなかったかのようにその場を去った。
マナトのやさしさを無下にしたことに苛立ちを覚えるが、実際に助けたのはマナトなわけだし本人が気にしないなら別にいいのかとも思う。
まあ、あのマナトのことだから別に怒ったりすることはないとだろう。
「またあんた覗き見してんの?あんたその趣味正直気持ち悪いわよ?」
「いいじゃないか。趣味なんだから」
千里眼を発動中に声をかけられ、顔は見えないがこの時間に屋上で話しかけてくる人なんて1人しかいない。
僕は千里眼を止めて彼女を見る。
彼女は井上 綾香。
その多少トゲのある言葉遣いとは逆に見た目は整っている。
別に性格が悪いわけではないけど素直じゃないのだ。
肩まである髪は彼女の自慢の一つのようで、日々どんな手入れをしているなどどうでもいい話をいつもしてくる。
僕もどうでもいい話だけどその無意味な会話がなんだか好きで、いつも彼女の話に付き合っている。
彼女の異能力は強化系では珍しい”全身強化”を持っていて、小さい頃に彼女を怒らせると飛んでくる激痛チョップはどうやら異能力によるものだったらしくそれがトラウマになっているのか口喧嘩などでもいつも負かされてしまう。
「はやく帰らない?昨日宗助が貸してくれたゲームの続きやろうよ」
「りょーかい。名残惜しいけど帰る…」
帰るかと言おうとして突然なった爆発音が言葉を遮った。
ゾンビあるあるをふんだんに入れていこうと思ってます




