第10話:審判の森(後編)
第六章
数週間前。
権力の汚濁を一身に背負う男、後藤文則は、精神の摩耗が限界に達しているのを自覚していた。
政界、警察、巨大医療資本――日本の頂点に君臨する三家と、その放蕩息子たちの「後始末」を生業とする日々。それは祖父の代から続く、逃れられぬ血の呪縛だった。
深夜。疲労に沈む体を引きずり、自宅マンションのドアに鍵を差し込もうとした瞬間だった。
「……後藤文則様ですね」
背後から突き刺さった、感情の起伏を一切排除した声。
後藤は脊髄反射で振り向いた。そこには、街灯の光すら吸い込むような漆黒のスーツを纏った男が、影のように立っていた。
「何者だ。なぜ私の名を知っている」
後藤の右手が、上着の内側に隠したサイレンサー付きの拳銃を掴む。
「私は万事を把握しておりますよ。……御子息たちの『不始末』に、少々お疲れのようですね」
「貴様…どこの組織の回し者だ。答えろ、さもなくば――」
後藤は電光石火の動きで銃を抜き、男の眉間に突きつけた。
だが、目の前の従者は、瞬き一つせず、ただ虚空を見つめるような瞳で淡々と告げた。
「撃ちたければお撃ちなさい。私には恐怖も、痛覚もございません。……ただ、主であるノワール様の『駒』として、ここに在るだけです」
後藤の指が、引き金の上で凍りついた。
虚勢ではない。裏社会で数多の修羅場を潜り抜けてきた後藤ですら、これほどまでに「死」を厭わない人間を見たことがなかった。
男の瞳の奥には、獲物を無機質に捕食する昆虫のような、おぞましい空虚が広がっている。
(こいつ……本当に人間なのか!?)
銃を持つ手が、微かに、だが確実に震え始めた。
「……その、ノワールの駒とやらが、私に何の用だ」
銃口を下げながら、後藤は問いかけた。
「本日は、後藤様に主からの『提案』を預かって参りました」
「提案……?」
「はい。単刀直入に申し上げます。貴方がお仕えしている御三方…医大理事長 霧島俊彰様、警察庁長官 久世勲様、内閣府副大臣 九条院神助様の三名を、我々に引き渡していただきたい。つまり――『拉致』の実行です」
「な……んだと……!?」
後藤の脳裏に、意識が遠のくほどの衝撃が走った。それは、三代にわたり跪いてきた絶対的な権力者への、最大にして最悪の反逆。
「何を馬鹿なことを! 仮にそんな真似をしてみろ! 私自身は元より、家族がどんな惨たらしい目に遭うか、解っているのか!?」
「……逆に問いましょう、後藤様。貴方はその、お祖父様の代から続く『呪いの連鎖』を、貴方の愛するお子様方……崇史様や真美様にまで、引き継がせるおつもりですか?」
「……っ! 継がせたいわけがない! ……だが、それしか道がないんだ!」
「いいえ。貴方が御三方を拉致するという『業』を背負う覚悟を持たれるなら。……その呪縛、我々が根こそぎ断ち切って差し上げましょう。その後は、顔も名前も変え、いかなる法も権力も届かぬ『安息の地』を、御家族全員にお約束します」
長い、あまりにも重い沈黙が流れた。
後藤は、膝が折れそうになるのを必死に堪え、絞り出すような声で問うた。
「……本当に、信じていいのだな?」
「二言はございません。……では、契約成立ということでよろしいですね?」
「……分かった。協力しよう。……だが、もし私が断っていたらどうするつもりだった? 裏切るリスクだってあるだろう」
「問題ございません」
従者の口元が、わずかに、機械的に歪んだ。
「もしお断りになられた、あるいは微かな裏切りの兆候が見られた場合……後藤様、ならびに御家族の皆様には、永久に沈黙して頂くだけのことですので」
後藤の全身に、かつてない戦慄が駆け抜けた。
それは脅しでもハッタリでもない。従者の背後に潜む「得体の知れない力」は、現世のいかなる権力よりも、暴力よりも、根源的な恐怖に満ちていた。
後藤には、もはや選択肢などなかった。
彼が選んだのは共犯という名の、命懸けの『解放』だったのだ。
第七章
深夜零時。内閣府副大臣、九条院神助の広大な屋敷に、一台の黒塗りのセダンが滑り込んだ。
降り立った後藤は、焦燥を完璧に演出しながら、書斎で深夜の政務に耽る神助の元へと急いだ。
「後藤……こんな夜更けに、一体何の用だ。明朝は予算委員会があると言ったはずだぞ」
神助が不機嫌そうに眼鏡を外す。
「……申し訳ございません。ですが、緊急を要する事態でございます。誠也様と、久世様、霧島様のご子息方が、少々……いえ、極めて深刻な『不始末』を仕かされました」
「あいつらめ……! あれほど、目立つ真似はするなときつく言い聞かせておいたものを!」
神助の顔に、怒りと、それを上回る隠蔽への焦りが浮かぶ。
「……わかった。久世と霧島も呼べ。今すぐだ」
「はっ。既に御二方には連絡を済ませ、指定の場所へ向かっていただいております。内密、かつ迅速に処理せねば、夜明けとともに取り返しのつかない弾劾の火種となりかねません。閣下、今すぐ私と共にお出で下さい」
神助が席を立つと、控えていた二人のSPが影のように寄り添った。
「……閣下、それでは我々も同行いたします。深夜の外出は――」
「ならん」
後藤の鋭い制止が、屋敷の空気を切り裂いた。
「これは、閣下の政治生命のみならず、三家の存亡に関わる『最高機密』だ。動く人間は少なければ少ないほどいい。貴様たちが同行して、万が一にも現場を嗅ぎ回る者が現れたら、誰が責任を取るつもりだ?」
「しかし、警備なしでは規定に……」
「貴様。閣下の御尊顔に泥を塗るつもりか?」
後藤は一歩踏み込み、冷徹な視線でSPを射抜いた。
「……仮に情報が漏洩し、問題が露見した際。貴様の首一つで、閣下の地位が贖えるとでも思っているのか?」
「……。……失礼いたしました」
側近として長年三家に君臨してきた後藤の威圧感に、SPたちはそれ以上食い下がることができなかった。
「……まあよい、お前たちは下がれ。後藤、案内しろ。手短に頼むぞ」
神助のその言葉が、彼にとっての最後の政務指令となった。
暗闇の中、後藤が運転する車は、静かに、そして確実に「狩場」へと向かう。
後部座席で苛立ちを募らせる権力者たちは、自分たちが今から向かう場所が、息子たちの不始末を隠蔽する場所ではなく、自らの「屠殺場」であることを、まだ知らない。
暗視ゴーグルを装着し、獲物の出現を今か今かと待ちわびている「愛する息子たち」の待つ、あの審判の森へ。
第八章
スピーカーフォンからは、三地点のノイズが混じり合い、絶望的な狼狽が響いていた。
GPSを頼りに血塗れの森を彷徨い、子息たちはようやく一箇所に合流する。
「親父を……この手で殺しちまった……。やべえよ、どうすりゃいいんだ……!」
久世が返り血を浴びた手で頭を抱え、震える声で呻く。
「……遺体の処理だけなら、僕の病院で隠蔽も可能だが……。後藤が絡んでいる以上、まずは奴を捕らえて事実を吐かせない限り、軽率には動けん」
霧島は、冷徹な分析を装いながらも、その眼鏡の奥の瞳は泳いでいた。
「私の……私の政治生命も無茶苦茶だ! 後藤め、見つけたらただでは済まさんぞ……!」
九条院は己の失墜への恐怖に、激しい怒りを燃え上がらせる。
その時――。
パァン、パァン!
乾いた発砲音が森の静寂を切り裂いた。
「ぐあっ!?」
「ああっ! 痛ぇ、痛えええっ!」
鋭い衝撃と共に、三人の太ももが弾丸に抉られる。
あまりの激痛にライフルを取り落とし、彼らは無様に泥の上へ膝をついた。
追い打ちをかけるように、さらに三発。彼らの「手」が正確に射抜かれる。
「ひいっ! なんだ……何なんだよぉッ!?」
「……ご、後藤の仕業か……!?」
「……実の父親をその手にかけても、なお保身しか考えないのか。つくづく性根の腐ったクズどもだな」
茂みをかき分け現れたのは、復讐という名の『業』を背負った三組の遺族たちだった。
「傲慢のブランデー」によって、瞳には権力を恐れぬ絶対的な不敵さと、底知れぬ怒りの奔流が渦巻いている。彼らは躊躇うことなく、地に伏した三人の眉間に銃口を突きつけた。
「ひいっ! やめろ、撃つなッ! 俺たちが誰だか知ってるのか!?」
銃口の残酷な冷たさに、久世が悲鳴を上げる。
「ああ、よく知っているよ。親の威光を傘に着て、他人の命を玩具にする鬼畜のガキどもだろう?」
福島俊彰が、獲物を屠る獣のような冷淡な笑みを浮かべた。
「俺たちは、お前らに遊び半分で子供を奪われた……『遺族』だよ」
その言葉を聞いて、三人の顔から一気に血の気が引いた。
「……わ、悪かった! 私たちが悪かった! 金なら払う、いくらでも言い値で払うッ! だから助けてくれ!」
九条院は震え上がりながら懇願した。
「ほう。いくらでも払う…か。一体どの位くれるんだ?」
俊彰がふっと口元を緩めた。その僅かな変化に、子息たちは救いを見出したかのように顔を輝かせる。
「僕の預金から三億……いや、即金で五億出す! 約束する、だから……!」
「実に残念だよ」
俊彰は霧島の声を遮り、一切の温度が消えた声を発した。
ゴミを見下すような冷たい目を向けながら言葉を続ける。
「お前らから、一片でも魂の籠もった謝罪があれば、慈悲としてひと思いに射殺してやったんだがな。……人の顔を札束で叩いて黙らせようっていうその『傲慢』、実に素晴らしいよ」
「……え?」
「事前に、遺族たちの間で処遇を合議していたんだ。『誠意なき態度を見せたら、絶対に許さない』とな。……俺たちはここで手を引く。あとは、他の皆さんに任せるよ」
三人が愕然として周囲を見渡すと、いつの間にか闇の中から、数十人の男女が音もなく姿を現していた。
彼らもまた、ブランデーの洗礼を受けた遺族たちだった。
その手には、錆びたノコギリ、鋭利なペンチ、赤く焼けた鉄ごてなどが握られており、三人を包囲するように、ゆっくりと距離を詰めてくる。
「君たちは、おそらく長く生きるだろう。数週間か、あるいは数ヶ月か?……彼らの中には看護師もいる。君たちの心臓が止まらぬよう、最高の処置を施してくれるだろう」
「やめろ……来るなっ! 助けて、助けてくれぇぇぇッ!!」
絶叫が森を震わせる中、俊彰たちは背を向け、漆黒の闇の中へと消えていった。
背後で始まったのは、もはや「狩り」ですらない。
それは、彼らが理不尽に奪って来た命を精算する為の、いつ果てるとも分からぬ『永遠の地獄』の開幕だった。
森の奥深くでは、狂乱の叫び声と、何かを削るような鈍い音だけが、いつまでも響き渡っていた。
第九章
返り血の鉄錆びた臭いと、ブーツに纏わりつく腐葉土の重み。俊彰たちは不快感を感じつつも、ようやく森の出口へと辿り着いた。
見上げた東の空が、ゆっくりと白み始めている。
朝霧の粒子が夜明けの光を孕み、大気の中に微かな虹の色を宿していた。
その清浄な光を浴びた瞬間、俊彰の肩に鉛のようにのしかかっていた重圧が、音もなくゆっくりと溶け出していくのを感じた。
「良樹……終わったよ。お前を奪った連中を、すべて……」
煤と返り血を拭いながら、俊彰は誰に聞かせるでもなく呟いた。
「皆様、お疲れ様です。今回の審判、滞りなく終了いたしました。……いえ、他の皆様にとっては『始まったばかり』でございますね」
影の中から、漆黒の従者が音もなく現れた。その口元には、相変わらず無機質な微笑が浮かんでいる。
「従者さん、そしてノワールさん。本当にありがとうございました。あなた方のおかげで、良樹の……いえ、どれほどの無念が報われたか分かりません」
「我々は、ただ僅かなきっかけをお貸ししたに過ぎません。成し遂げたのは、深い業を負うと決めた、皆様の覚悟の力でございます」
一礼した従者は、俊彰たちの前に、一抱えほどの「包み」を差し出した。
「後藤様からの預かり物にございます。これだけは、どうしても皆様にお返ししたいと……。子息たちに見咎められるリスクを冒しながらも、彼が密かに回収し続けていた遺品です」
差し出されたのは、泥に汚れ、所々が剥げた良樹の鞄だった。
それは良樹の成人のお祝いで、俊彰と美佐恵が二人で悩み抜いてプレゼントした、思い出の品だった。
震える手で中を確かめると、書類に紛れて、使い慣れた財布やスマートフォンが、生々しい手触りを持って現れた。そして、一番奥から一通の封筒が見つかる。
俊彰が、祈るような心地でスマートフォンの電源を入れた。
液晶に浮かび上がったのは、あの惨劇の夜ではなく、数ヶ月前の、何てことのない、しかし二度と戻らない幸福な日常の風景だった。
一つの動画を再生する。
『母さん、誕生日おめでとう!』
画面の中で、良樹が照れくさそうに、不器用な笑顔を浮かべてケーキを差し出している。
『やだ、お父さん。動画ばっかり撮ってないで、早く食べましょうよ』
笑いながらケーキをカットする美佐恵の声。
撮影している俊彰の、弾んだ笑い声。
「……ああ、良樹。そこにいたのね……」
美佐恵が、ひび割れた画面を愛おしそうに撫で、大粒の涙を零した。
封筒の中には、良樹が内緒で用意していた温泉旅行のペアチケットと、手書きのメッセージカードが入っていた。
『父さん、母さん。いつもありがとう。たまには二人でゆっくりしてきてください』
俊彰の目から、堰を切ったように熱いものが溢れ出し、メッセージカードの文字を滲ませた。
警察が「フェイクだ」と言い捨て、国家権力が「存在しない」と葬り去ろうとした、良樹の人生。
けれど、今この瞬間。
奪われた遺品を抱きしめる夫妻の胸の中で、良樹は確かに「愛された息子」として蘇ったのだ。
朝日が完全に昇り、世界を黄金色に染め上げていく。
夫妻は、もう後ろを振り返ることはなかった。
その腕の中に微かな温もりを感じながら、彼らは新しい光の中へと歩み出していった。
第十章
その日、日本という国家の歯車は、音を立てて停止した。
現職の副総理、警察庁長官、そして国内最大級の医療法人グループ理事長。
日本の「政治・治安・医療」を統治していた三つの巨塔と、その跡取りたちが、一夜にしてこの世から蒸発したのだ。
総理大臣官邸には危機管理対策本部が設置され、警察と自衛隊による大規模な捜索が始まった。
主要幹線の検問、数百万台におよぶ監視カメラの全解析、そしてNシステムの全ログ照合が分単位で行われた。
だが、国家の威信を懸けた総力捜査の前に立ちはだかったのは、あまりにも不可解な「空白」だった。
「……消えただと? そんな馬鹿なことがあってたまるか!」
捜査本部の怒号が響く中、判明したのは唯一、三家の汚れ仕事を一手に引き受けていた側近・後藤文則の足取りだけだった。
「防犯カメラの記録です! 昨夜未明、後藤が運転する車が、横浜の旧埠頭へ入るのが確認されています。……同乗者は、後藤の妻と、二人の子供。……間違いありません。一家全員での逃亡です!」
捜査員たちが急行するも、そこに残されていたのは、もぬけの殻となった一台のセダンだけだった。
エンジンの熱はとうに冷め、車内には指紋一つ、髪の毛一本すら残されていない。
まるで、工場から出荷されたばかりの新車のように、不自然なほど「無」の状態だった。
「周辺のカメラを洗え! 船だ、密航船が出たはずだ!」
しかし、港湾のレーダーにも、衛星画像にも、その時刻に動いた船舶の記録は一切存在しなかった。
国家が血眼になって追っていた後藤の存在は、まるで最初からこの世に存在していなかったかのように、煙の如く消え去った。
数ヶ月後。
大混乱に陥った政界と警察組織は、皮肉にもその「捜査の過程」で、三家が隠蔽し続けてきた数々の醜聞――強姦、収賄、そして凄惨な「人間狩り」の証拠を、自らの手で掘り起こすこととなった。
隠蔽の盾を失った権力者たちの名は地に落ち、彼らが支配していた帝国は、内側から崩壊を始めた。
その喧騒から遠く離れた、某国の海岸。
沈みゆく夕日を眺めながら、一組の家族たちが静かに砂浜を歩いていた。
「お父さん、見て!綺麗な貝殻見つけたよ!」
幼い娘が、無邪気な笑みを向ける。
「ああ。……本当に、綺麗だね」
――かつて後藤と呼ばれた男は、穏やかな微笑みを浮かべた。
彼の胸元には、漆黒の従者から手渡された「安息」という名の、決して破られることのない契約が刻まれている。
日本という国が、三人の権力者の死と消失に震えていることなど、今の彼には遠い星の出来事のように思えた。
彼はただ、取り戻した「家族の未来」を抱きしめ、二度と戻ることのない闇の底を想った。
終章
鉄の扉が閉まると、館は再び、重苦しい静寂に包まれた。
「…傲慢を宿した奴隷に討たれる、狂った暴君たち。これ程までに皮肉で、壮絶な終演はございません」
三方向をゆらゆらと揺れる羅針盤の針が、僅かに音を軋ませた後に、ぴたりと止まる。
「彼らは圧倒的な権力を持つが故に、その身に歯止めの効かない傲慢を宿しました。自らを神と錯覚し、他人の命を『娯楽』として消費していた彼らを待っていたものは、父親という権力を自ら破壊する愚行と、無辜の民たちの革命による、終わりの見えない地獄だったのです」
「…拠り所としていた『傲慢』という大罪が、その身を滅ぼす業火の火種となる。因果とは、時に残酷なまでに人間に牙を剥くものなのです」
漆黒の記録帳に、羽根ペンが滑る。
そこには『福島俊彰:対価……傲慢なる殺意と、平穏の喪失』と記された。
「さて。これまで幾多のお客様方を見て参りましたが、これはあくまで氷山の一角に過ぎません。人間が存在する限り、『業』と『絶望』が、この世から消える事はないでしょう。…次の『業』を抱えて来られるお客様は……目の前の、あなた様かもしれませんね」
ノワールはロウソクを一つ、静かに吹き消した。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
第一話から積み上げてきたこの『黒の審判』も、ようやく最後まで書き切ることができました。
救いようのない闇を描く筆は時に重くもありましたが、福島夫妻が最後に手にした「遺品」という名の温もりを書き終えた今、作者としても一つの区切りを迎えられたと感じています。
誰の目にも触れない夜の森の出来事のように、この物語がどこかの誰かの心に、静かな爪痕を残せたなら幸いです。
完結までお読みいただいた全ての皆様に、心からの感謝を込めて。
えまのん 拝




