第49話 均衡評議会
オルディスが連行されたあとも、会議場の空気は崩れなかった。
むしろ逆だった。
七王国の代表たちは、互いの顔を見た。
そして理解した。
均衡を壊したい者がいる。
だからこそ――
均衡は完成させなければならない。
*
カイエルが静かに言う。
「最後の柱です」
円卓中央。
誰も座らない席。
それは象徴だった。
秩序そのもの。
「七王国均衡評議会」
彼は続ける。
「各国代表一名」
「七名」
カミラが言う。
「任期は?」
「五年」
イリスが答える。
「国家代表とは別枠」
エルミナが問う。
「権限は?」
カイエルが答える。
「監査」
「介入」
「仲裁」
短く、明確。
*
レオナが腕を組む。
「軍にも介入するのか」
「監査のみ」
イリスが言う。
「軍事発動の正当性確認」
サディーク。
「資源は?」
「備蓄放出の判断」
エルミナ。
「金融は?」
「基金発動」
カミラ。
「公開性は?」
「議事録公開」
リュネ。
「信仰は?」
「非干渉」
すべてが整理されていく。
*
レオナが小さく笑う。
「面白い」
「誰も支配しない機関か」
カイエルが頷く。
「支配ではない」
「均衡」
サディークが言う。
「一国では止められない」
「七国なら止められる」
それがこの制度の核。
*
エルミナが言う。
「投票は?」
カイエルが答える。
「多数決」
「四票」
レオナ。
「軍事も?」
「はい」
カミラ。
「公開する?」
「必要部分のみ」
リュネ。
「信仰判断は?」
「しない」
線引きが決まっていく。
*
イリスが言う。
「この機関は」
円卓を見渡す。
「国家を支配しない」
「国家を縛らない」
「ただ」
ゆっくり言う。
「国家が互いを壊さないようにする」
それが均衡。
*
沈黙。
そして。
レオナが言う。
「軍事国家として認める」
エルミナ。
「市場国家として認める」
カミラ。
「共和国として認める」
リュネ。
「神殿として認める」
サディーク。
「資源国家として認める」
カイエル。
「理念国家として認める」
そして。
イリスが言う。
「制度国家として認める」
静寂。
七つの正義が、初めて重なった。
*
その瞬間。
遠くで鐘が鳴った。
港の火は消え始めている。
通貨もわずかに回復。
国境も静か。
大陸はまだ揺れている。
だが一つだけ変わった。
秩序が形になった。
*
カイエルが静かに言う。
「七王国均衡機構」
「成立です」
その言葉は小さい。
だが歴史を変える。
七王国は戦争を終わらせたわけではない。
争いは続く。
市場は揺れる。
資源は奪い合う。
信仰は対立する。
民意は揺れる。
だが。
均衡がある。
それが大陸の新しい秩序。
*
だがその頃。
地下牢。
オルディスは笑っていた。
「均衡か」
鉄格子の影の中。
彼は静かに呟く。
「均衡は」
目が光る。
「壊れるから美しい」
そして。
遠くで、また一つ火が上がった。
秩序は生まれた。
だが同時に、
それを壊そうとする影もまた、
確実に動き始めていた。
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