第25話 選出評議会設置
王位は、解体された。
だが王国は、まだ揺れている。
宣言の翌朝、王城は静かだった。
嵐の前ではない。嵐の直後の静けさだ。
*
「王位選出評議会の構成案を提出します」
アルヴェルトが書簡を広げる。
円卓に並ぶのは、
貴族代表三名
商会代表二名
軍代表一名
法務監察官一名
そして民間有識者二名
「王家は?」
「含みません」
ざわめき。
アーネストが静かに言う。
「完全に外れるのか」
「王族も一候補として扱います」
私は答える。
「審査は同一基準です」
特権はない。
血は優位を持たない。
制度は平等でなければならない。
*
「候補資格は」
フィオナが問う。
「三十歳以上」
「重罪歴なし」
「財産公開義務」
「軍歴または行政経験五年以上」
レティシアが眉を上げる。
「軍歴必須ではない?」
「必須ではありません」
「国家を理解していることが条件です」
制度は、誰かを排除するためではない。
国家を任せられる者を選ぶためだ。
*
「平民も立候補可能とする」
その一文が、室内を再び揺らす。
貴族席がざわめく。
「民が王に?」
「血統を否定するのか」
「否定はしない」
私は静かに言う。
「優遇しないだけです」
アーネストの視線が、まっすぐ向く。
挑戦か。
それとも受容か。
まだ分からない。
*
王都。
掲示板に制度案が貼り出される。
「平民も王に?」
「本気か」
「誰がなるんだ」
市場で噂が広がる。
商会会館。
「立候補を推す声が出ています」
カイルがリリアに告げる。
「誰の」
「あなたです」
沈黙。
「……冗談でしょう」
「本気です」
彼女は目を伏せる。
王位。
制度の頂点。
利益ではなく、責任の座。
「私は商人よ」
「だからです」
市場を守った。
港を止めた。
群衆を鎮めた。
民は見ている。
*
王城。
アーネストが訪れる。
「立候補します」
静かな宣言。
私は頷く。
「理由は」
「血統を否定しないため」
「制度を守るため」
彼は続ける。
「王家は消えない」
「だが特権も持たない」
それは矜持。
王族最後の誇り。
私は言う。
「歓迎します」
彼はわずかに息を吐く。
逃げない。
戦う。
制度の中で。
*
国境。
セラフィナは報告を受ける。
「ヴァルド軍が演習拡大」
「こちらの改革を試している」
軍は制度の外にいない。
選出制が弱いと見られれば、押される。
彼女は剣を握る。
「守るのは国」
王ではない。
制度でもない。
国そのもの。
*
王城、夜。
私は執務室で書類に目を落とす。
候補資格。
審査基準。
弾劾条項。
退位後の権限。
制度は、細部で壊れる。
だから細部を詰める。
王冠は机の端に置かれている。
もう絶対ではない。
十年後には別の者が被る。
血か。
民か。
商か。
軍か。
それは分からない。
だが。
今日、王位は制度になった。
戦場は広がる。
国内から、大陸へ。
七王国会議は近い。
静かな戦争は、次の段階へ進む。




