表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1部完結】婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第1部:退位宣言から始まる王国再編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/68

第32話 最後の揺らぎ

 評議の間には、重たい空気が満ちていた。


 王族、貴族、地方代表、商会、そしてセレスタ公国の観測団。


 王国の“今”が、すべて揃っている。


 だが、まだ決まっていない。


 玉座は空いたままだった。


 ***


 最初に口を開いたのは、王都貴族の一人だった。


「血統を否定するなど、王国の根幹を揺るがす行為です」


「否定はしていない」


 アルヴェルトが即座に返す。


「再定義だ」


「言葉遊びだ!」


 ざわめきが広がる。


 地方代表が立ち上がる。


「我々は安定を求める。血で暴動は止まらぬ」


 商会代表カインも続く。


「市場は王位が確定しない限り動きません」


 それは脅しではない。事実だ。


 エリオットが淡々と言う。


「隣国は、明日にも軍を動かせます」


 広間が凍る。


 時間はない。


 ***


 イリスは、静かに立ち上がった。


「王位は争うものではありません」


 声は小さい。だが届く。


「責任を負えるかどうか、それだけです」


 王都貴族が冷笑する。


「責任? 女一人で国が守れると?」


 レティシアの視線が鋭くなる。


 だがイリスは動じない。


「守るのは私ではありません」


 静かな否定。


「守るのは構造です」


 ざわめき。


「王が倒れても、国が残る構造にします」


 その言葉に、アルヴェルトがわずかに頷いた。


 レオンハルトは、目を閉じる。


 ――これが、差だった。


 自分は王で国を支えようとした。


 彼女は国で王を支えようとしている。


 ***


 評議は割れる。


 賛成多数だが、全会一致ではない。


 だが時間は尽きる。


 宰相が立ち上がる。


「採決を」


 鐘が鳴る。


 一人ずつ、意思を示す。


 地方代表――賛成。

 商会代表――賛成。

 王弟――賛成。

 王太子――賛成。


 王都貴族の一部は反対。


 だが多数は決した。


 ***


 その瞬間、扉が開く。


 伝令が駆け込む。


「隣国軍、国境線に展開!」


 広間が凍りつく。


 イリスは、迷わなかった。


「評議結果を公表してください」


「今この状況でか?」


 貴族が叫ぶ。


「今だからです」


 彼女の声は揺れない。


「王が決まらぬ国は狙われます」


 レオンハルトが頷く。


「公表せよ」


 鐘が再び鳴る。


 宣言。


 ――王国は、再編王制へ移行する。


 ――新王は、選出によって決定する。


 その名が告げられる。


 イリス。


 ***


 国境。


 隣国軍は動かなかった。


 報告が入る。


「王位確定を受け、様子見に移行」


 エリオットが静かに笑う。


「中心が確定しましたね」


 ***


 広間に残る静寂。


 レオンハルトはイリスを見る。


「逃げるな」


「逃げません」


 短い応答。


 王位は、もはや逃げ道ではない。


 責任だ。


 最後の揺らぎは、収束した。


 あとは――


 戴冠のみ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ