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婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第3部:均衡の試練編

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第81話 均衡は、誰のものか

 すべてが、元に戻ったわけではない。


 ルクサリアの街は、まだ傷跡を残していた。


 焼け焦げた壁。


 修復途中の屋台。


 閉じたままの店。


 *


 それでも。


 人は、歩いている。


 *


 市場には、少しずつ品が戻り始めていた。


 値は安定していない。


 供給も不完全だ。


 だが。


 動いている。


 *


「……変わりましたね」


 エリアナが言う。


 王城の窓から、街を見下ろしながら。


 *


 リリアは椅子にもたれたまま、目を細める。


「そう?」


 *


「ええ」


 *


 エリアナは続ける。


「前と同じじゃない」


 *


「でも」


 一拍置く。


「止まってもいない」


 *


 その言葉に、リリアはわずかに笑う。


「それで十分よ」


 *


 沈黙。


 *


 遠くから、子供の声が聞こえる。


 *


 笑っている。


 *


 その音は、小さい。


 だが確かにある。


 *


「……全部は戻らない」


 リリアが言う。


 *


「でも」


 *


「戻す必要もない」


 *


 エリアナが振り向く。


 *


 リリアは続ける。


「均衡はね」


 一拍。


「完成しないの」


 *


 その言葉。


 *


「だから」


 *


「誰かが続ける」


 *


 エリアナは、その意味を考える。


 *


 そして。


 小さく頷く。


「……はい」


 *


 レギオン。


 均衡評議会。


 *


 会議は静かに行われていた。


 *


「市場は回復傾向」


 エルミナ。


 *


「資源供給は七割まで回復」


 サディーク。


 *


「信仰の動揺は収束しつつあります」


 リュネ。


 *


「軍は警戒体制を維持」


 レオナ。


 *


 報告は、どれも不完全。


 *


 だが。


 どれも前に進んでいる。


 *


 イリスが言う。


「十分です」


 *


 沈黙。


 *


「均衡は」


 一言。


「維持されています」


 *


 その言葉に、誰も異を唱えない。


 *


 カミラが小さく笑う。


「……維持、ね」


 *


「綱渡りだけど」


 *


 エルミナも笑う。


「それが均衡でしょ」


 *


 その空気は、以前よりも柔らかい。


 *


 完全ではない。


 だが。


 壊れてもいない。


 *


 カイエルは、静かに資料を閉じる。


 *


「……続きますね」


 *


 イリスが頷く。


 *


「はい」


 *


「続けます」


 *


 地下。


 暗い場所。


 *


 オルディスは、静かに立っていた。


 *


 灯りの届かない空間。


 *


 彼の顔は見えない。


 *


「……選んだか」


 小さく言う。


 *


「壊れたものを」


 *


「続ける道を」


 *


 沈黙。


 *


 そして。


 わずかに笑う。


 *


「いい」


 *


「それでいい」


 *


 その声は、静かだった。


 *


「均衡は」


 一言。


「壊れる」


 *


「必ず」


 *


 その言葉は、確信だった。


 *


「だから」


 *


「価値がある」


 *


 ルクサリア。


 夜。


 *


 広場。


 *


 あの日、投票が行われた場所。


 *


 今は、静かだ。


 *


 ただ。


 新しい箱が置かれている。


 *


 誰もいない。


 *


 だが。


 *


 一人の老人が、そこに立つ。


 *


 最初の一票の男。


 *


 しばらく見つめる。


 *


 そして。


 小さく頷く。


 *


「……悪くない」


 *


 その言葉は、誰にも届かない。


 *


 だが。


 確かに、そこにある。


 *


 世界は、まだ揺れている。


 制度も。


 人も。


 *


 それでも。


 *


 進む。


 *


 誰かが選び。


 誰かが支え。


 誰かが疑いながら。


 *


 それでも。


 *


 続いていく。


 *


 均衡は、誰のものでもない。


 *


 だからこそ――


 誰のものにもなる。


 *


 それが。


 この世界の、答えだった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


ついに物語は完結しました。

「完全ではないけれど、それでも続ける」――それがこの作品の答えです。


もしこの物語が少しでも心に残ったなら、

ぜひ【ブックマーク】【評価】で応援いただけると、とても励みになります。


そして、もしこの先の物語――

まだ揺れ続ける均衡の世界を見てみたいと思っていただけたなら。


またどこかで、お会いできたら嬉しいです。

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