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翌朝、簡易ログハウスの隙間から差した光を顔面にもろに受け、俺は目を覚ました。身体の調子はすこぶる良い。美味い飯と比較的安全な寝どころのお陰だろう。ただ、右目と右腕はやはり動かない。腰の剣を左手で抜き差しして感触を確かめた後、少し首を傾げる。
もう一本、あっても良いなぁ…。しなりのある剣がいい。例えば、刀とか。カットラスだと幅があり過ぎるから腰には刺せない。
腰に差すのは咄嗟の時でも逆手で抜きやすくしたいからだ。背後に置くと、順手でも逆手でも抜けるが、腰に差さっているときよりも予備動作が大きい。
まぁ、ワガママは言ってられない。金がある訳じゃないし。
アルマとマリアはまだ寝ていた。アルマは気持ちよさそうに伸び伸びと寝ているが、マリアは膝を抱えて少し窮屈そうだ。起こすのも忍びないので静かに立ち上がった。
俺はログハウスの一画を斬る。左手でも斬れるな。入り口のようになった場所から外に出る。二人を置いていく事は出来ないので、朝日を浴びながらくーっと伸びをして、外の切り株に腰掛けた。周囲にあった魔物の死体は、食い散らかされた後があり、他の魔物がまだいた事がわかる。多分このログハウスを襲うまでもなく腹が満たせたから、特にアプローチがなかったと見える。
とはいえ、朝ご飯もないので何処かしら探しに行く必要がある。どちらか起こすかな…。
俺は自分の腹をさする。探さなければならないが、今すぐ食べたいという訳でもないし、いいか。
俺はログハウスの天井に跳び乗り、その場でまた寝転んだ。心地よい朝日に照らされて、体が温まっていくのを感じる。
ゆったりと身体の力を抜いていたその時、
カンカンカン……!!
頭の中で打ち鳴らされる警鐘に目を見開く。
木々の上から俺目掛けて刃が振り下ろされる。
「シッ…!」
「なっ!グォッ!」
足を上体に近づける形で丸め、左腕のみで身体を跳ね上げる。合わせて、身体を伸ばし勢いをつけ顔面を蹴り飛ばす。そのままそいつを踏み台にして下を見る。
警鐘、未だ鳴り止まず。
数人が中に入ろうとしているのが見える。俺は剣を抜いて投げる。
「っ、チィ!」
数は三人、全員男、人相悪し。
野盗か。
剣の上に降り立つ。隣に落ちてきた男は鼻から血を流しながら、何とか上体を起こす。
「何の音…、あー、結界張っとくね」
「そうしてくれ、ついでにあの寝坊助も起こしといて」
「はーい」
音を聞きつけて俺があけた入り口からひょっこり顔を出したマリアがそのまま頭を引っ込めた。ログハウスが薄っすらと青い光に包まれる。
「さーて、何か用か?」
「くっ…!相手は一人だ!やっちまえ!」
歯の欠けた割とガタイのいい男がバスターソードを構えて声を上げる。それに頷いて骨張った手下達がナイフを片手に飛びかかってくる。ふむ、俊敏はそこそこありそうだが、剣術はまだまだだな。
ドッ!ドッ!
「ぐぇ!」「がっ!」
俺の蹴りが腹に突き刺さった二人はくの字に折れたままリーダーと思しき男の脇をすっ飛んでいった。
柄の上に片足でバランスを取り、片膝を上げてそいつに言った。
「俺さ、その剣欲しいんだけど譲ってくんない?」
トン、と剣から降りて剣を抜き軽く振って土を落とし、鞘に収める。
「てめぇ…何もんだよ、こんなのおかしいだろうがよ…蹴りが…見えねえ…!」
「おいおい、質問に答えてくれや」
起き上がろうとしていた手下の胸を踏みつける。あれ、こいつ男じゃねえな。
「ぐぅ…!」
口を巻いていたバンダナが外れ人相がわかる。うん、女っぽい。後でマリアに治してもらお。
俺がその女を見ているうちが好機だと思ったのか、リーダー格は背中を向けて逃げようとしていた。
キン!
『裏閃:一』
逆手に抜いた剣を男の進行方向を遮るように翳す。本当なら、ここで首が落とせるが、まだ質問の答えを貰ってない。
「で?どっちなんだよ結局さ」
男は首元に添えられた剣に、唾をごくりと飲み込んだ後、持っていたそれを落とした。
「おー、ありがとう。じゃあ、手下も忘れず連れてけよ」
俺が剣を納めると、男は男らしからぬ悲鳴をあげて逃げていった。手下連れてけって言ったのに…。




