9/9
世界の始まり
「頼むからやめてくれ……」三郎は人間として最後の願いを言った。
「それは無理だよ。もう手遅れだ。そうそう、君の奥さんも今頃、木にはなれずとも植木になって家で待っているよ。ご主人が亡くなったって話したら、すごく寂しそうな顔をしていたけどね。でも人間が今までやってきた事に比べたら、比でないよ。そういう意味では君は運がいい。なんと言っても意志があるからね。今日から僕と共に新しいこの世界を創って見て行こうよ」
アリスはそう言い、三郎木の「頬」をそっと撫でた。木には涙のような跡が残っていた。
その後何千年の時を越え、その木はずっと存在し続けている。何千年も涙を流し続けていると妖精達の間で親しまれ、「はじまりの樹」として語り継がれているという。人類はまた自然へと生まれ変わったのだ。




