表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言葉を忘れた詩人の帽子は此処にあり  作者: エティリュシア・クイーン
1/4

言葉を忘れた詩人の『喜び』

流行り病

三日三晩寝込んでいたらしい


後遺症

感情を表す言葉を忘れた


私は詩人だったらしい

だからか、頭の中がグルルと鳴った


言葉を忘れたら

詩人ではいられない


そのことが何だかとても、すごく


抉られた気がした

身体の何処かを鋭利なナイフで


今すぐひと言で表せそうな言葉が

浮かんでこない


私が咳き込むとエリーゼが背中を撫でた


紅葉のような小さな手

狸のようなふっくらした顔

小動物のような娘


自然と口角が上がった


妻がリンゴを剥いてくれた

果汁が甘く喉を潤す音コクリ


エリーゼが「パパ」と呼ぶ


喉仏が震えた


鼻頭をツーンと刺激する声

溢れる涙


私は感情を失っていない

うまく言葉にできないだけだ


こんなにも

こんなにも


破裂しそうな感情が

身体の中に溢れていて


言葉にしない詩人など

詩人ではない


妻とエリーゼ

私は2人に訊いた

このときの感情を表す言葉を



「それね、喜びっていうんだよ!」



エリーゼがふやけた顔で言う

夜のような瞳に星が散りばめられている


「そうか、喜びか」


窓を見た

差し込む光がエリーゼと妻を照らす


ステンドグラスの天使のようだ


そうか、喜びというのは

こんなにもあたたかく

こんなにも無防備に身を委ねられるものなのだな


ずっとずっと

続きますように


言葉を忘れたとはいえ

詩人の端くれ

妻とエリーゼのための言葉をここに記す



紅葉の手

リンゴ剥く妻の手

ああ、私の天使らよ

窓際の光も神の抱擁


夜のざわめきも

エリーゼの星に煌めいて

『喜び』満ち溢れますように


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ