“自然を操る力”
この世界の魔法についての説明になります。
一気に説明しちゃうので覚えきれないと思いますが、覚えなくても大丈夫なのでそのまま読み進めて下さいね。
「地球と同じように、このアシュリシュにも自然がある。我々は、その12大要素を色別で分類しているんだ」
四色は手の平を見せ、指折りしながら説明を続ける。
「赤・青・緑・黄・黒。これがお前たちの要素色だ。苗字にもこの色が入っているだろう」
女達は頷く。
「気紫家は、黒ではなく『紫』を使ったようだけどな。なんでも、日本では黒を綺麗な言い方にすると紫だそうだな。まあ、名前ぐらいは大雑把に決めたんだ。あまり気にするな」
そう言う四色の目は少し泳いでいるが、特に誰も指摘しなかった。
四色は続ける。
「それぞれの色には、自然要素が二つずつ当てはまる。赤は、『火』と『大地』だ。この二つが使えて、初めて『赤魔導士』と呼ばれるんだ」
大地と言われて少し驚いた火芽香は、反射的に足元を見る。コレを、どう操ると言うのだろうか。
「もちろん、火だけしか使えない魔導士もいる。そういうのは、『火魔導士』と呼ばれるんだ。大地だけなら、『地魔導士』だ」
話し方が早い。皆、頭をついて行かせようと必死だった。
四色は構わず続ける。
「青は、『水』と『空』。
緑は、『風』と『草木』。
黄は、『光』と『音』。
黒は、『闇』と『死』だ」
黒の要素に聞き辛いのがあったので、剣助は聞き返した。
「シ?」
「死だ。生か死かの、死ぬ、死だ」
間髪入れずに返された四色の答えに、みな少し驚いた。
『死』を操るとは、かなり物騒だし、想像しにくい。
「まあ、今はこの要素は重要ではない。先ほども言った黄魔導士だが、璃光子と同じ要素を操る魔導士のことだ」
「え、同じ魔法を使える人がもっといるの?」
自分しか魔法を使えないと思ってた璃光子は目を丸くしている。
「ああ。色によっては少ないのもあるがな。黄魔導士は、比較的大勢いる。そしてその一部が集団を作り、海賊的な犯罪を犯しているんだ」
魔法使いがウジャウジャいるという事実に驚く地球人。しかも、最後の言葉は物騒だ。
「か、海賊……?」
刀矢は一気に不安に駆られ、急に心配そうな顔をして呟いた。
まだまだ、四色は続ける。
「対極要素についても説明しておこう。対極とは、お互いの力を打ち消し合う関係にあるもののことを言うんだ。例えば──」
四色は火芽香と水青を指差す。
「赤と、青。これは、全くの対極だ。火と水、空と大地だからな」
(今のは分かりやすかった)
と全員が思った。
「そして、黄と黒。璃光子と闇奈もだ。光と闇は対極関係にあり、音も、闇が勝れば吸い込まれてしまう。まあこれは、やや黒が有利な対極関係となっている」
璃光子は、闇奈の方が優位だという事に妙にしみじみ納得してしまった。
「もう一つ、お前たちにはいないが、『白魔法』というものがある。これは、『時間』と『生』を操る魔法だ。黒は、黄と白、両方と対極関係にあるといえる。まあ、こういうこともあるということだ」
この辺は、あまり重要事項に聞こえない。ほとんどが耳から耳へと流した。
「唯一、どの色とも対極にならないのが、『緑魔法』。風歌の魔法だ。風歌に早めに治療魔法を覚えさせたのも、この対極を考えてのことだ」
急に呼ばれた風歌は首を傾げる。
「どの要素にも、必ず治癒効果はある。
火は温める力があり、
水は体内の血液や体液を調整して自然治癒力を最大限に高めることができる。
光は、精神的なダメージを回復するのに向いている。
疲労や不眠は、闇が解消してくれる。
だが、これらは対極の相手には効きにくいのだ。誰でも治療できる風歌の魔法が、貴重ということだ」
女達はお互いを確認するように顔を見合わせた。
刀矢以外の男達は、理解しようと必死に頭脳を働かせているため顔の筋肉が緩み、マヌケな顔になっていた。
「よし。一通り説明は済んだな。また疑問があったら追い追い聞いてくれ。今は、闇奈を探すのが優先だ。もし、奴らに捕らわれていたら……対極の黄魔導士に囲まれたら、闇奈でも敵わん」
その言葉に、全員の表情が一瞬にして引き締まった。




