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“闇奈と闇”


 闇奈(あんな)は、焚き火を背にして膝を抱えて座り、『闇』と睨み合っていた。


 普通の人なら、数メートル先の木などもう見えないだろう。しかし、闇奈には花の(つぼみ)も数えられるほど鮮明なのだった。



≪お前には闇の力があるはずだ≫


 四色(よしき)の声が耳について離れない。



(一体、こんな力何に使えっていうんだ)


 闇奈の後ろでは、四色に言われた通り『眠りを誘う闇の力』を試された被験者三人が、気持ち良さそうに寝息を立てている。


 眠らせることは容易く、目に手を当てて少し念じたらコロッと寝た。


 璃光子(りみこ)には効きづらかったものの、何度かやったら効いた。


 こんなことが、母にも祖母にもできたんだと思うと、自分の家系の陰湿(いんしつ)さに嫌気が差す。


 祖母は、母は、父は。


 自分をどんな気持ちで生み、育てたのだろう。


 ずっと、こんな名前をつけるぐらいだから、自分の明るい未来など視野に入れてもらえなかったのだろうと思っていた。


 『闇』の字を名前に使うなんて、いくら伝統だからと言ってもナンセンスだ。


 ずっと呪ってきたこの名前に、もっと深刻な意味が含まれているんだと思うと、つい悪い方向に考えがいく。



(もしも、修行をして闇の力をもっと手に入れたらどうなるんだ? 悪人にでもなっちまうのか)


 自分の考えがあまりにバカバカしくて、フッと笑いが漏れる。



 ふとその時、空が段々白んで闇が薄れてきた。


 濃厚な黒だった空が藍色(あいいろ)へと変わる。


 すると、さっきまで少し脅威(きょうい)に見えていた闇も、そうでもなくなってくる。


 と同時に、闇奈の悩みも薄れていくのだった。



(とにかく、闇だろうがなんだろうが、武器になるものは何でも使って、早く終わらせるんだ。そして、こんな伝統ここで断ち切ってやる)



 闇を追い払うように光が広がっていく空を見つめながら、心の中で気合いを入れた闇奈は、静かに振り返り熟睡中の三人を見る。


 まさに、快眠。



「自分に魔法をかけることはできねぇのかな」



 闇奈は三人の側で横になって目をつぶり、眠る努力をした。




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