第十八話:酒呑童子との対決 -2
「ほう……やるではないか、小僧! まさか、我の一撃を受け止めるとはな! だが、この一撃は避けられまい! 喰らえ! 貴様の命、ここで終わりだ!」
酒呑童子の声が、広間に響き渡る。彼の金棒が、雷鳴のような轟音を立てて太郎へと迫る。
「くっ……!なんて重い一撃だ! これまでの鬼とは、比べ物にならない……! だが、俺は負けない! この槍で、お前を討つ!」
太郎は、槍で金棒の一撃を受け止めるが、その衝撃に体が大きく揺らぐ。彼の全身の筋肉が軋み、汗が滲み出る。
「若様、大丈夫ですか!? 無理はしないでください! 若様……!」
黒鉄が、心配そうに叫んだ。彼女の瞳は、太郎の激闘に釘付けになっている。
「へっ、あの金棒……とんでもねぇ威力だぜ! あれを一人で相手にするなんて……! 太郎、頑張れ!」
八重は、豪快な笑みを浮かべながらも、その威力に驚きを隠せない。彼女の斧が、微かに震える。
黒鉄たちは息を飲み、二人の激闘を見守る。きびだんごがない中、純粋な力と太郎への信頼で戦う彼を見て、勝利を心から願い、固唾を飲んで見守る。
彼らの心臓が、太郎の激闘に呼応するように、激しく高鳴っていた。
「若様……! 必ず、勝ってください……! 私たちの希望は、若様だけです!」
黒鉄は、祈るように呟いた。彼女の瞳には、涙が浮かんでいる。
「太郎兄ちゃん、頑張れ~! ぶっ飛ばしてやれ~! 酒呑童子なんて、怖くないもん!」
琥珀は、悲鳴にも似た声で叫んだ。
「彼の力を信じるしかありません。太郎殿ならば、必ずや……。この試練を乗り越えられるはず……!」
天音は、冷静な表情を保ちながらも、その瞳には、太郎への深い信頼が宿っていた。
「お兄ちゃん……! 負けないで……! 穂積、お兄ちゃんのこと、信じてるよ!」
穂積は、太郎の袴の裾をぎゅっと掴み、泣き出しそうな声で叫んだ。
『太郎殿……! 彼の神力が、酒呑童子の邪気を押し返しています……! このまま、集中力を切らさぬよう……! 回復魔法をかけ続けます!』
葛の思考が、太郎の心に響いた。彼女は、魔法陣の光を強め、太郎の精神を支えようとした。
太郎は酒呑童子の隙を突き、「真槍・桃紋閃」を放つ。
その一撃は、酒呑童子の巨体を大きく揺るがし、玉座の間の壁を破壊した。
酒呑童子は、怒りの咆哮を上げ、太郎を追って破壊された壁の向こう、城の廊下へと飛び出した。
二人の激闘は、場所を変え、さらに激しさを増す。
「くそっ、逃がすか! 酒呑童子、覚悟しろ!」
太郎は、酒呑童子の後を追って、破壊された壁を飛び越えた。
城の廊下は、二人の激闘の舞台と化した
。酒呑童子の金棒の一撃が、廊下の柱を粉砕し、壁に巨大な亀裂を走らせる。太郎は、その猛攻を神速の動きでかわし、槍で反撃の隙を窺う。廊下の両脇に並ぶ鬼の像が、彼らの激闘の余波で次々と崩れ落ちていく。
「ははは! どこへ逃げる、小僧! 我の金棒からは、逃げられんぞ! 貴様の命、ここで終わりだ!」
酒呑童子の声が、廊下に響き渡る。彼の金棒が、雷鳴のような轟音を立てて太郎へと迫る。
「逃げているわけではない! お前の攻撃を、見切っているだけだ! 【真槍・疾風】!」
太郎は、槍を素早く繰り出し、酒呑童子の金棒をいなす。その動きは、まるで風のようにしなやかだった。
「若様、廊下の柱が危険です! 崩落に注意してください!」
黒鉄が、廊下の奥から叫んだ。彼女の瞳は、二人の激闘が城に与える影響を冷静に分析していた。
「へっ、派手にぶっ壊してるじゃねぇか! 太郎、もっとやれ!」
八重は、豪快な笑みを浮かべ、廊下の奥から二人の激闘を見守っていた。
太郎は、酒呑童子を中庭へと誘い込んだ。
中庭は、かつて鬼の宴が開かれたであろう場所で、巨大な岩や、枯れた木々が点在していた。
開けた空間は、酒呑童子の金棒を振るうには最適だが、太郎の神速の動きを活かすにも好都合だった。
「ははは! 開けた場所に出たか! これで、存分に暴れられるな! 喰らえ、小僧!」
酒呑童子は、金棒を大きく振りかぶり、太郎へと襲いかかった。その一撃は、大地を砕くほどの威力を持つ。
「くっ……! なんて威力だ……! だが、この空間ならば……!」
太郎は、金棒の一撃をかわし、中庭を縦横無尽に駆け巡る。彼の動きは、酒呑童子の巨体には捉えきれないほど素早かった。
太郎は、酒呑童子の猛攻をかわし続け、その隙を窺う。
彼の瞳は、酒呑童子の動きのわずかな乱れも見逃さなかった。酒呑童子の攻撃は、広範囲に及ぶが、その分、隙も大きくなる。
太郎は、その隙を狙い、槍で酒呑童子の体を的確に突いていく。
「ちくしょう! 小賢しい真似を! どこへ逃げる、小僧!」
酒呑童子は、怒りの咆哮を上げた。彼の金棒が、地面を叩きつけ、周囲の岩を粉砕する。
「逃げているわけではない! お前の攻撃を、見切っているだけだ! 【真槍・連撃】!」
太郎は、槍を素早く繰り出し、酒呑童子の体に連続で突きを放った。槍の穂先が、酒呑童子の分厚い皮膚を何度も貫き、鮮血が飛び散る。
「ぐあああああ! 小僧め……! この痛みを……!」
酒呑童子は、苦痛に呻き声を上げた。その巨体が、微かに揺らぐ。
「太郎兄ちゃん、すごい! 酒呑童子に攻撃が当たってるよ!」
琥珀が、中庭の入り口から叫んだ。彼女の瞳は、太郎の激闘に釘付けになっている。
「若様、その調子です! 酒呑童子の動きが、わずかに鈍くなりました!」
黒鉄が、太郎に指示を飛ばした。彼女の瞳は、酒呑童子の動きのわずかな変化も捉えていた。
「へっ、太郎、ぶっ飛ばしてやれ! 俺の斧で、援護してやるぜ!」
八重は、豪快な笑みを浮かべ、斧を構えた。彼女の全身から、漲る力が感じられる。
「太郎殿、酒呑童子の魔力の流れに、わずかな乱れが生じています。そこが、彼の核……!」
天音は、冷静な声で太郎に語りかけた。彼女の白い羽が、微かに震える。
『太郎殿の神力が、酒呑童子の邪気を押し返しています。このまま、集中力を切らさぬよう……!』
葛の思考が、太郎の心に響いた。彼女は、魔法陣の光を強め、太郎の精神を支えようとした。
太郎は酒呑童子の隙を突き、「真槍・桃紋閃」を放つ。
酒呑童子の巨体が、微かに揺らぐ。
その隙を太郎は見逃さなかった。
槍から放たれる黄金の光が酒呑童子を貫き、チート級の破壊力で鬼の体を吹き飛ばす。酒呑童子の巨体が宙を舞う。
「これで、終わりだ! 父の仇、ここで討ち取る! 【真槍・桃紋閃】!」
太郎は、渾身の一撃を放った。槍の穂先から放たれる桃色の光が、酒呑童子の巨体へと吸い込まれるように突き刺さる。
その光は、酒呑童子の体内を侵食し、彼の邪気を浄化していく。
「ぐあああああああ!な、なんだと……!?この力は……! まさか、浄化の力……! ぐあああああああ!」
酒呑童子は、断末魔の叫びを上げ、その巨体を揺らして崩れ落ちる。城全体に轟音が響き渡り、鬼の首領が討ち倒されたことを告げる。酒呑童子の体が塵となって消滅していく。
その瘴気は、太郎の浄化の光によって清められ、広間には清らかな空気が満ちていく。
「ま、まさか……この俺が……! この若き神に……! ぐあああああああああああ!」
酒呑童子の声が、断末魔の叫びと共に消え去る。
(城全体に轟音と振動)
「やったー!倒したー! 太郎兄ちゃん、すごい!」
琥珀は、喜びの声を上げた。彼女の小さな体が、ぴょんぴょんと跳ねる。
「へっ、見事だぜ、若造! まさか、一人で酒呑童子を討ち取るとはな! さすが俺が認めた男だ!」
八重は、豪快な笑みを浮かべた。その顔には、太郎への素直な賞賛が浮かんでいる。
満身創痍の太郎が、倒れた酒呑童子の前に立つ。彼の全身は、激闘の末、傷だらけだった。しかし、その瞳には、勝利への確かな光が宿っている。
「父上……仇は、討ちました……。この世界に、平和を……」
太郎は、息を切らしながら呟いた。彼の全身から、微かな桃色の光が放たれ、広間全体を清めていく。
黒鉄は、太郎の傍らに駆け寄り、その無事を確認した。彼女の琥珀色の瞳からは、安堵の涙がこぼれ落ちていた。
「若様!ご無事ですか!? 若様……! 心配いたしました……!」
黒鉄の声は、安堵と、若様への深い愛情に満ちていた。
「ああ……なんとか。みんな……ありがとう……」
太郎は、黒鉄の言葉に、力なく微笑んだ。
『太郎殿、お傷の手当を。すぐに回復魔法をかけます。しかし、城全体に不穏な空気が漂い始めました……。この震動は……』
葛の思考が、太郎の心に響いた。彼女は、魔法陣を展開し、太郎の傷を癒やし始めた。
「……この震動は……? まさか、まだ何かが……?」
天音は、冷静な表情を保ちながらも、その瞳には、新たな危険への警戒が宿っていた。城全体が、微かに、しかし不気味に震え始めていた。




