表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/114

格上

「全てのステータスが限界値を超えてる……!? それってつまり……」


「ああ。そのまんまの意味さ。僕の現在のレベルは53620。攻撃力や防御力も、とうに限界値を突破している。無論、魔法耐性もね」


「……なるほど、そりゃ効かないわけだ」


俺は額を流れる冷や汗を拭い、なんとか平静を装った。あー、ここに来てとんでもないチートと出会っちまった。能力こそ単純明快なものの、シンプルに強い奴来ちゃったよ。こりゃ《ファイアボール》どころか、《フラッシュ》とかの不意討ちも効かなそうだ。


だが、俺にはまだエクスカリバーがある。幸いなことに、さっきの試合ではエクスカリバーの本領を発揮していない。そう、まだ隠し続けている、この剣のチート能力があれば……。


「とはいえ、君のエクスカリバーは、問答無用で相手を一撃で倒しちゃうからなぁ。僕の防御力も意味をなさないか」


「……は?」


俺は松田さんから放たれた台詞に、一瞬だけ、焦りがそのまま顔に出てしまった。たった今、まさにそのエクスカリバーのチート能力、『一撃必殺』を、あっさり看破されてしまったからだ。なぜ分かったんだ。いや、それともカマをかけているのか?


松田さんは申し訳なさそうに頬をポリポリと掻きながら「ごめんごめん」と、いつもの緩いトーンで言うと、後を続けた。


「驚かせちゃったね。まぁ、これは僕の《付喪神(つくもがみ)の加護》のおかげなんだ。この加護のおかげで、僕の扱うアイテムは絶対に壊れないようになっているんだ。それと、『アイテムの効果が見ただけで分かる』ようにもなっている」


そうか……。だからエントリー会場にいた松田さんの防具には、傷一つ付いてなかったんだ。どうやら加護の話も、《アンリミテッド》の話も本当のようだ。


おそらく、あの攻撃力ならエクスカリバーでなくとも、相手を一撃で倒せる。あの防御力なら、隕石が降ってきてもほとんど効かないのだろう。そして、魔力もきっと、ルルカを遥かに越えている。


俺は、初めて自分の『上位互換』を、目の当たりにすることとなった。


ただ、納得いっていないことがひとつだけある。


「……よく喋りますね」


できるだけ口角を上げながら、俺は皮肉っぽく言った。本来、能力なんてべらべらと喋るものではない。だが、松田さんはまるで世間話でもするかのような語り口で、緊張感なくひけらかしている。


――――人が自分の手札を公開するなんて、どういう理屈か、決まってるじゃないか。


「喋った所で、負ける気がしないからね」


そんなの、『勝てる確信』がある時ぐらいだよな……!


どうやらこれ以上語ることはないらしい。松田さんは穏やかな表情のまま、こちらに走ってきた。あの顔ができるのも、そういった自信から来るものなのだろう。ましてや、松田さんが倒すべき残りの相手は、もう俺とイスケだけである。どちらの能力もすでに把握してる以上、もはや松田さんを脅かす存在はないに等しい。


「クソっ……!」


攻略法が思いつかないまま、とりあえずがむしゃらに《アイスランサー》を松田さんの足元へ放った。


「そのやり方はさっき見ていたよ」


走るスピードを緩めないまま、松田さんは冷静に《アイスランサー》を弾いていく。ダメだ、あれでは地面に着弾しない。どうする……どうすれば……!


「こうなりゃヤケだ!」


俺は地面に《剣波》を放つと、反動を利用して空高く飛び上がった。


『おーっと!? コータ選手飛んだああ! これはまさかルルカ選手の模倣なのでしょうか!?』


「あんなの誰が模倣するか!」


実況に思いっきりツッコミを入れると、観客席から「バカにすんなー!」とルルカの声が飛んできた。やべぇ、戻ったらまたあの杖で殴られそう。言葉には気をつけないと。


だが、今気を付けるべきはあのぶっ壊れステータスのおじさんだ。多分、俺の読みが当たっていれば今頃……。


「……くっ、なんて衝撃だ……」


松田さんは、立ってるのもやっと、といった状態でなんとか地面に足を付けていた。そりゃそうだ。《剣波》は、パワー次第では山をも消し飛ばせる、とされている。今まで最大火力で放ったこはないから本当か分からないが、少なくとも……。


闘技場に『地震』を起こすことぐらいはできる。


そのまま、自由落下の勢いで、俺は松田さんの方へと向かっていった。まだ地面は揺れている。このアンバランスな状況では、剣術はおろか、魔法にも集中できないはずだ。問題は空中にいる俺自身も、自由には動けない。ここからは賭けだ。うまくいくことを祈るしかない。


『松田選手、まだ体勢が整っておりません! 果たしてどうなってしまうのか!』


松田さんの頭上付近まで来た俺は、エクスカリバーを構えた。


……いける。


このまま、一撃必殺の(つるぎ)を叩き込むんだ!





「いやぁ、危ないなぁ」





松田さんは頭を掻きながら『笑った』。


「やっぱり、武器は多く持っていた方がいいみたいだ」


独り言のように、周りに聞こえないトーンで喋る松田さんは、地面に大剣を突き立てると。


「これで、ギリギリなんとかなる」


大剣を支えに、(ふところ)から()()()()()()()()()()()()()()


思考が追い付かないまま、俺は機械的にエクスカリバーを振り下ろす。だが、大剣で体を支えている上、どこから来る攻撃なのか分かりきっている松田さんにとって、もう一方の武器で俺の剣撃を防ぐことなど、造作もないことだった。


ガチン、と鈍い金属音が響いたと同時、俺のエクスカリバーは宙に放り出されていた。相手の攻撃は捌ききれるが、自らの攻撃が防がれた場合までは、獅子王の加護も対応しきれない。あっけなく、手ぶらになってしまった俺は、着地と同時に、慌てて回避行動に移るも……。


「遅い」


大剣は地面に突き刺さったままで、ハンドアックスはたった今、振るったばかり。この状況で、一目散に逃げようとする俺に、最速で出せる攻撃……それは。


『蹴り』だった。


俺に足が触れた瞬間、まるでハンマーで殴ったような、重い音が、俺の全身を伝って、脳内に響き渡った。


「がっは……っ!」


その、まさに『ハンマー』のような一撃を、なんとか両腕で防いだものの、一瞬にしてステージ端まで吹っ飛ばされてしまった。防いだはずの腕は痺れ、感覚が薄くなっている。マジかよ……ただの『蹴り』で? これが『武器』だったら確実に一発退場だぞ……。


「へぇ、よく耐えたね」


「……まぁ、加護があるんでね」


獅子王の加護、もう一つの効果……『ダメージを百分の一まで抑える』によって、なんとか持ち堪えた。だが、逆に言えば百分の一まで下げてこのダメージということである。《アンリミテッド》……あれズルくねえか?


「防御に対して、攻撃はやや劣る……。今まで僕の攻撃を防ぎきれていたのも、加護のおかげかな?」


「さぁ、どうで……しょう……ね……」


とうとう加護の種まで明かされてしまった。腕の痛みがひどく、エクスカリバーを呼び戻そうにも腕が上がらない。あー、なんで呼び戻すのに剣を持つモーションが必要なんだよ。一言「戻ってこーい」って言ったら戻ってこいや。てか痛くて喋るのもしんどい。


「じゃ、そろそろ終わりにしようか」


松田さんは大剣を地面から引き抜くと、右手に大剣、左手にハンドアックスを持った状態で、こちらにゆっくりと歩いてきた。


……もうふざけてる場合じゃねえな。


チート武器は弾き飛ばされ、おまけにステージ端に追いやられる始末。さっきの蹴りで、身体はほとんど動かない。対して、相手の方は無傷。こちらの能力はもう、全て見破られてしまった。


「絶体絶命ってやつか……」


俺は、自嘲気味に、上げたくもないはずの口角を釣り上げながら、自分の状況を口に出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ