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ルルカ奥義

ま、俺の中学時代の勘違い黒歴史はさておき……。


『さぁ、いよいよ二回戦! 先ほどは少々ハプニングが起きましたが、今回はどうなるか!』


とりあえず、ルルカを応援しなくちゃな。さっきは背中を押してもらったことだし、今度はこっちがその役目を果たさなければ。


「ルルカー、 がんば」


\ザコデスネー/


「……おい、ゼノ」


\チャンチャラオカシイ/


「ごらぁぁあああああ!!!」


俺は、横でゼノンセイバーをサイリウムの如く振ってるバカ悪魔を怒鳴りつけた。


「あらら、間違えてゼノンセイバー振ってました。失敬失敬。もっと応援に適した物を振るべきでしたね」


そう言って今度はどこからともなく『白旗』を取り出し始め


「いや振らせねえよ?」


……たので、間一髪の所で止めた。


「さすがコータ君。ツッコミのスピードが上がってますね」


「いや嬉しくないから。こういう時くらい真面目に応援をだな……」


「二人共、もう試合始まってるみたいだよ」


ゼノンと漫才をしていると、横でケティが事も無げに呟いた。そうだった、こんなのと漫才してる場合ではなかった。俺はゼノンから白旗を奪いあげると、慌てて視線を闘技場に移した。すると……。


「さて……自分もそろそろ、『本気』、出しちゃいますかね」


なんと、イスケがニヤニヤ笑っているではないか。時雨の森での発言や実力から考えると、そこまで強い転生者には見えなかったが……。まさか、あいつもあいつで、リンファと同じく、何かを隠していた……?


「じゃ、行くっすよ」


イスケはそこで意味ありげに首をコキコキと鳴らした。そして……。


次の瞬間、ルルカの背後にイスケが現れた。


「え……?」


ルルカが絶句する間もなく、イスケが短刀を取り出す。なるほど、あいつの能力は《瞬間移動》だったのか。授かったチート能力としては、正直微妙な所だが、使い方次第ではかなり強力な技かもしれない。それこそ今のように、ネタばらしせず、不意討ちとして使えば一瞬にして勝つこともできる……!


「まずは一発目っす!」


突然の出来事に、うまく反応できずにいるルルカに、イスケは短刀を振り下ろした。


……そう。本来ならそれで勝てるはずなのだ。


相手が『ルルカ』でさえなければ。


「って痛ぇ! え、なんでっ!?」


《神鏡の加護》により、イスケの攻撃は反射された。ですよねー。


『おっと!? 今の一瞬のうちで、イスケ選手が瞬間移動してダメージを受けました……ってあれ?』


実況も、今起きたことを言葉にしながら、自分で混乱している。そりゃそうだ。今の一瞬で起きたことが多すぎる。


イスケも運が悪かったな。最初からルルカと当たるなんて……。相手が相手なら、あのカッコいい台詞と共に、一瞬にして勝利を手にするビジョンも有り得ただろうに。……というかカッコいい雰囲気を出しときながら一撃目が弾かれるってどんな気分なんだろう。まぁなんというか……。


「だっさいですね!」


あ、ゼノンの野郎言いやがった。俺がなんとかこらえた言葉を大声でかましやがった。いや正直今のはダサいけども。


「いやーダサい、ダサいですよあれは。フフっ、実にダサい……」


含み笑いを続けるゼノンがブツブツと「ダサい」を連呼する中、イスケは再び、最初の立ち位置へと瞬間移動した。


「え、マジでなんなんすかアレ……。一瞬で終わらせようと思って散々隠し続けた能力だったのに……」


あからさまに動揺し始めるイスケに対し、ルルカは舌を出しながら、ウィンクして言った。


「なんか、ごめんね?」


うわぁうぜぇ。特に「なんか」って付けてるあたり煽りスキル高ぇ。会場もいつの間にかルルカコールで埋め尽くされてるし。……でもちょっと羨ましい。いいなぁ。『チート転生者』してるなぁ。本来なら俺もあんな風に……って待て待て、まだ勝負は終わってないぞ。多分ルルカが全部反射して勝っちゃうんだろうけど。


と、誰もがルルカの勝利を確信していた時だった。


「じゃ、次は私の番ね! この日のために練習した魔法があるんだから!」


ん? ルルカさん?


「まだまだ完全には使いこなせないけど……」


あいつもしかしてなんか発動しようとしてる? 嘘でしょ?


「私、やってみせる!」


いや、やってみせないでくれ。てかもう何もしないでくれ。何もしなければ勝てんだよお前は!


なんとかルルカに忠告を試みようとするも、さっきより一段と高まったルルカコールに俺の言葉は消されていく。まずい。まずいぞ。あのチート魔術師、バカみたいな魔力で一体何をしでかす気なんだ……!?


「奥義! 《クイック》!」


ルルカがそう叫んだ途端、彼女の体からオレンジ色の光が溢れだした。いまいち事情を掴めていない観客たちが、その現象に合わせてさらなる声援を送る。


「《クイック》かぁ。移動が速くなる魔法だね。初期中の初期みたいな魔法なんだけど、ルルカほどの魔術師がなんで今さらあんな魔法を……?」


ケティが無表情のまま首を傾げる。だよな、そういう反応になるよな。まさか「魔力が強すぎて初期魔法がむずいから」なんて思わないよな。


そう、あいつの魔法は強すぎるのだ。それは最大の長所であり、最大の短所である。この流れ的に、次の展開は多分『短所』の部分が色濃く表れそう。


「わっはっはー! イスケ、あんたの能力、確かに凄かったわ! でもね……」


俺の不安と裏腹に、会場が最高潮になる中、ルルカはそこで一呼吸置き、言い放った。


「私の方が、もっと速いんだからっ!」


次の瞬間、ルルカが消えた。


……は?


……あれ、マジでいねぇぞ。


「ふぇ……?」


おい、ケティがストロー咥えながら聞いたことない声出しちゃったぞ。さっきまで超盛り上がっていた会場もすげぇシーンってなっちゃってるぞ。お前は魔術師であってマジシャンではないだろ? なに消失マジックしてんの?


『……えー……ルルカ選手、いなくなってしまった模様です。ど、どうしたん……ですかね』


ね、本当にどうしたんですかね。


徐々にざわめきが広がっていく中、ゼノンが横でくすくすと笑っているのが見てとれた。さてはこいつ何か知ってるな?


「おい、ゼノン。うちの魔術師どこいったよ」


「ぷくく……え、見えなかったんですか? そりゃ……ほら」


「あそこです」……と、ゼノンが指を指した先には……。


「いやあああああああっ!! 落ちる、落ちるぅうあああああ!!」


会場から少し離れた上空に、絶叫しながら落下しているルルカがいた。


「いやぁ、すごいスピードで空に飛んでいっちゃった時は笑いましたね」


「ほれ見ろ! やっぱこうなるんじゃねえか! だから余計なことはしてほしくなかったのに!」


どうやら《クイック》が暴発したらしく、その勢いで遥か上空に吹っ飛んだらしい。突然空から絶叫が聞こえたもんだから、会場は一瞬にしてパニックに陥った。


『え、えっと!? ルルカ選手は場外に出てしまったので、イスケ選手の勝利……?』


実況は実況で困惑のあまり、この状況で普通に説明しちゃってる。


「それどころじゃねー! おーい! ルルカー! 聞こえるかー!?」


声を張ってみたものの、パニック状態の会場から俺の声が届くはずもない。


「あ、皆さんすいません! 道を開けて下さい! あのバカ……じゃなかった、アレうちのパーティメンバーなんです! ちょっと回収してくるんで! すいません、すいません!」


俺はパニック状態の観客の間を、さっきゼノンから奪った白旗を上げながら、道を開けるようにアピールした。まさか白旗がこんなとこで役立つとは。俺はなぜか自分が敗北したような気分のまま、ルルカの方へと向かったのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「びぇぇええんっ……!!」


ルルカが俺の横で、耳障りなまでに泣き喚く。こいついっつも泣いてんな。


「ご゛わ゛か゛っ゛た゛よ゛コ゛ー゛タ゛ぁ゛~!」


「分かった、分かったからもう泣くな! ちゃんと会場の人たちには説明したから!」


結局あの後、俺はルルカの元へ駆け付け、上空にいるルルカに《転移魔法》を使うようアドバイスしたのだった。なんとか俺の声が届いてよかった……。というより、我ながらよく間に合ったと思う。

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