Audit Committee(1)
5月に入り雪は完全に溶けた。だがまだ肌寒い日は続いている。
今日もいつも通りの風景が目の前には存在していた。風紀委員会との合同演習した時のような活気はなく。何かしているわけではない。
そんな空間が割と好きだ。部屋でゆっくりと本が読める。図書館と違うのは若干うるさいメンバーはいることと、紅茶とお菓子が出て来ることだ。
俺はカップの紅茶がなくなっていたので、お変わりおかわりをすることにした。
「あれ、お湯出ない」
電気ポッドの『給湯』ボタンを何回押してもでない。ロックがかかっているのかと思って確認したけど、そうじゃなかった。
「お湯ないだけじゃない?」
部長に言われふたを開けると案の定なくなっていた。
「先輩、私汲んで来ます」
「そうか」
音子が自発的に汲みに2Lペットボトルを片手に走って行った。
部室には水道設備がないので第一校舎のウォータークーラーまで行って汲まなければならない。割と大変である。部長も時々そのことで愚痴を言うことがある。
俺は諦めて再び席に戻り本を読むことにした。
数分後に音子が戻って来た。
さらに数分後、ポットがありふれたメロディーでお湯が沸いたことを知らせる。
それを合図にカップを空にした部員がポットの周りに集まってきた。
みんなそれぞれ自分のカップを持参している。
御影先輩はクールな外見と裏腹にピンクの水玉模様のカップでインスタントコーヒーを飲んでいる、砂糖とミルクたっぷりで。どうやらブラックでは飲めないらしい。
ユーと俺はなぜかお揃いのモノクロなカップで紅茶を飲む。
部長はピンクのラブリーなカップでオレンジジュースを飲んでいる。
音子は大人っぽいシルバーのカップでコーヒーをブラックで飲んでいる。あの性格から予想できないほど大人な飲み方をしている。
光圀はガラスのコップで炭酸飲料を飲んでいる。
こんなに様々なドリンクが提供できるのは、この部室に冷蔵庫があるからである。先代部長が自腹で購入したらしい。それ以降、部長になった人が家電を一つ買うことが伝統となっている。ちなみに現部長は本棚の横にあるパソコンを購入したというか自作した。10万くらいで前まであったパソコンに部品を買ったりして改造したらしいが原型を留めていない。マザーボードからパソコンケースまで交換したらしい。残っているのはモニターとキーボードくらいだ。
「ユー砂糖いるか?」
俺が入れてついでに聞いてみる。
「もらうわ」
「何個?」
「京と同じでいいわ」
俺は3個角砂糖を入れてスプーンで混ぜた。
「あんたら傍から見たら恋人に見えるわよ」
部長がからかうように言う。
「そうかい、一緒に暮らしてるからじゃないか?」
口が滑ったとか思ったけど、そのうち後輩にもばれるだろうし、いいか。
「先輩方は同棲してるのですか!」
突然食いついたのは音子だ。まだ話してないし、この反応は正しい。
「まあね」
「すごいですね。それで結婚式はいつですか? 私も呼んでくれますか?」
「まだ話が早い」
「まだと言うことが後々ということですね」
テンプレートの切り返しをする音子の目はキランと輝いていてああいえばこういわれる気がしてきた。そういう話題が高校生は好きなのだろうか。先輩方にも同じこと1年前に言われた気がする。
「そうね」
「おい、何勝手に答えてるんだ」
俺は言い返したり弁解するのを諦めて椅子に座り、紅茶を一口飲んだ。
前にもユーは同じこと言った気がする。
「今日は特にすることはないから適当に解散ということで」
相変わらずの適当な部活である。始まって早々終了宣告したのだった。
俺はとりあえず読書を続行することにした。
部長はそれから部室ないをウロウロしだした。
「この部屋にソファーほしいのよね~」
部長がメジャーを音子に引っ張らせて色々と図っている。
「いくらくらいするのでしょうか?」
「そうね、1万ぽっきりで買えるのリサイクルショップで見つけたんだけど、部費で買っちゃっていいかな?」
なぜ俺に聞くと言いたいが、部費のことでうるさいのは俺くらいのものだからである。
「いいんじゃないか?」
部室は結構広いと言っても大きい本棚にパソコンラック、テーブル、冷蔵庫、ホワイトボードとものは多い。部員が6人なのがせめてももの救いだ。そういえば、俺が床に本を乱雑に置いているのもあって、本が場所を取っている。それらはほとんど読み終えたものばかりなので、今度家に持って帰るかな。
「でも置き場あるのか?」
「テーブル前にずらせば置けるよ」
「じゃあいいんじゃないか」
「部費で落しとくね」
そういうことで『EARTH部』の備品にソファーが加わろうとしていた。




