Sham Battle(6)
~Misaki Side~
その直後のことだ。
美空はグラウンドに出て旧校舎の屋上を見上げる。
そこにはあの時見た銀髪で赤くおおきなリボンをした月代学園の制服を着た背が小さい少女が柵の上に座り、こっちを見ている。
こっちへ来いと言わんばかりに。
美空はそれを確認すると猛スピードで旧校舎に入り階段を駆け上がり、屋上のドアの勢いよく開けた。
「いらっしゃい、美空、元気にしていたかしら」
やけに慣れ慣れしい口調で話す。
彼女は柵の上に座り、足をプラプラと揺らしながら、まるで子供ような仕草で待っていた。
旧校舎の屋上は風が強く、彼女のスカートはパタパタ揺れ、またリボン、ネクタイもそれに合わせるようになびいている。
「まさか、こっちに戻って来てたとはね、シルシィ!!」
一方こっちは何かの因縁でもあるかのような口調、攻撃的な話し方だ。
「随分私も嫌われたものね、でも大丈夫私はそんなあなたでも大好きなのだから」
「慣れ慣れしいわね」
「だって私たちは友達でしょ?」
「そんなのになった覚えはないわ」
「そう残念だわ」
「今日は何しに来たの?」
「別に何も、ただ学校に通っているだけのことよ、特に何をしに来たわけじゃないわ、それに私は風紀委員なのだから校内的立場で言えば三方よ、もう少し優しく接してほしいわ」
割る笑みを浮かべて嬉しそうに美咲を見つめている。
「御断りよ、質問が悪かったわ、あなたどうしてこの都市に戻って来たの?」
そう彼女は4年以上も前にこの都市去った、いや去らなければならなかったはずである。
彼女が犯した罪は重い。
かつては超能力結社『REVIVE』に所属していたのだ。
『REVIVE』は『超能力者こそが人類の上位種であり世界を導くもの』という『革新思想(Innovateism:イノベイティシズム)』を独自に作り出し信仰するものたちの集団で最終的な目的は『世界征服』この思想で言えば『上位種による管理』を行うことを目的としている。そのためならどんな犠牲もいとわない、攻撃的かつ弾圧的な行動を起こすことが多く、対話による解決を行わない集団である。
結社に加盟している企業のすべてに置いて超能力者を利用しており、彼女も利用されていた一人である。
「実は去ってないのよ、私は神に救われたの」
「何わけ分からないことを言っている『11人の重罪人(Eleven Children)』の分際で!!」
『十一人の重罪人(Eleven Children)』それは十一人の大罪人のことである。そしてそれらは十一人の未成年であった。
彼女らは幼くして超能力に目覚めし者たち。
能力ランク平均A以上の凶悪な能力に目覚めた者たち。
孤児にして『革新思想(Innovateism)』による洗脳教育を受けた者たち。
それが彼女たちである。
「今は違うわ、それに『11人の重罪人(Eleven Children)』の生き残りは私を含めて三人だけ、後はあなたとやり合った戦場で死んでいるわ」
そう私たちは戦ったのだ、本当の戦場で、その事件はのちに『月見山事変』と呼ばれるようになった。
これは五年前のことだ。
まだ美空が中学生の時のこと、ある夜に突然事件は起きる。原因不明の山崩れにより、多くの民家が倒壊したのだ。その崩れた山が『月見山』である。この山に月見が丘が含まれており、この学園この山の中腹に建っている。
事件はそれだけではなかった。それと同時に出現した『十一人の重罪人(Eleven Children)』にによる殺戮と器物損壊行為が始まった。
それに対処すべく私を含めた能力者が派遣された。
その時にシルシィと対峙したのだ。
結局、事件の詳細は公表されることはなかったため、現在でも動機は不明で、ニュースではただのがけ崩れと報道されている。
あの戦闘で私の両親が負傷した。その原因を作り出したのがシルシィなのだ。幸い一命は取り留めたが、現在でも後遺症が残っている。現在、両親は美咲市を離れ、千葉で暮らしている。
「人殺しの癖によく捕まらなかったものね、今ここで引導渡しても好いのよ!!」
「怖い顔♪ でも美空は勘違いをしているわ」
「何が」
「私はまだ人を殺してはいないわ」
美空の声を遮るように言った。
「でもあの時……」
そうあの時あらゆる所が血まみれだったはず。
「あれは私たちが殺された時の血よ。怖かったわ、私たちのことをあんなに早く探知しれしかも7対1で皆殺し何て、私も危うく切り殺されるところだったわ」
そうあの事件の死者は容疑者である十一人のうちの6人、三人は逃走し、二人は行方不明、風紀委員に負傷者は出たが死者は出なかったのだ。
あの異様な速さの対応は普通にはありえないものだった。美空もその対応のための応戦指令で飛んできたが、それは事件発生から間もなかった。
「でもあなたも加害者、罪は償うべきよ」
「だから美咲は私に裁きをくだすの? それは無理よ、今の昔も美咲の私の差は埋まらないわ」
美咲はただ睨み続けている。
「あなたと話すときりがないから最後に美空が一番知りたかったことを教えてあげるわ」
「何の事?」
「京四郎様との関係よ」
「!?」
美空は激しく動揺する。今本当に聞きたかったこと、久しぶりの再会に怒りが込み上げてきたせいですっかり見失っていた本命、核心を突かれた。
「あの事件の後、私の心も体の救ってくれた方『神様』とは京四郎様のこと、そうあの日、私は京四郎様の愛で真人間に戻れたのだから……」
シルシィはこのことをとても嬉しそうに語る。
そして柵の上に立ち上がりバランスを取る。
「待ちなさい!!」
「待たないわ、そんなに慌てなくてもこの学園の在籍している限りいつでも会えるわ、私は一年Aクラス、春風明日葉よ、これからもよろしくね」
そう言い残し、柵から飛び降りた。
美空は慌てて柵に駆け寄るがそこには誰もいなかったのだった。




