Sham Battle(4)
俺が担当した子の名前は『春風 明日葉』と言う1年Dクラスの子であるが、俺が知り合った時の名前は『シルシィ・レイステラ(Ersy・Leistela)』という。おそらく日本に帰化したのだろう。正式な名前は『春風・シルシィ・レイステラ・明日葉』であるようだ。
銀髪のロングヘアーに赤の生地に黒で三日月が先に描かれた大きなリボンをつけている。それに碧眼なのでかなり目立つ、そのため周り男子たちからかなり注目を浴びていた。身長はユーと同じくらいかそれより 低いくらいでスレンダー体型だ。
この子は俺と関係があまりにも深いがそれはいずれわかることなのであえて説明はしない。
「わざわざ、私を選んでくれたのかしら?」
上目遣いと悪い笑みを浮かべながら聞いた。
一見とても大人しそうな顔をしているが、話してみれば小悪魔系などと呼ばれているような悪い子だ。だがそんな正確も嫌いじゃない。むしろ大好きだ。
捻くれているが根は優しくて甘えん坊なのだ。
「そんな訳あるか」
「嘘つきはよくないわね、ちゃんと私のことを見てくれてた癖に」
「気のせいじゃないのか?」
「じゃあ他の男に指導されても良かったのかしら? 他の男が触られても良かったのかしら?」
まるで答えを解りきったような言い方だが、その通りだ。
その認識は正しい。俺はこの質問にいつも答えるのだ。
「触れる前に殺すね」
「うん、だから大好きなのよ」
安心したようにくっ付いてきた。これもいつものことだ。こんなシルだが、かなりの心配症というか何というか、とりあえず定期的に俺がシルのことをどう思っているのかを聞かれる。そういう子なのだ。生意気だけど、どう思われているかいつも不安で不安でしょうがないそんな感じだ。
「俺もだよ」
だからこう返すのだ。
「そういえば、シルは銃なんか普通に使えるのに何でいるんだ?」
そう、シルは銃を使えるとか言うレベルのテクニックではない。比べたことはないが、俺よりも実戦経験は豊富で扱い慣れているはずだ。
「京四郎様があの部活で何をしているのか見に来ただけのことよ」
「だったたら部室に来いと何回言わせるんだ?」
「あそこはおっかない姫神美空がいるから行けないの。きっと私の顔を見るなり銃撃戦になるわ」
何だかよくわかないけど、部長とシルは仲が悪いらしい。実際に会ったところを見たことがないので何とも言えない。でもかなり頑なに言っているので間違いはないだろう。俺も部室は廃墟と化すところとか見たくないはない。
「私が負けることはないのだけれど」
「それで俺はシルに実射訓練させる必要あるのか?」
「ないわね、適当に撃っていましょう。他の生徒に教えたいと思うほど熱心じゃないでしょ?」
「否定はしない」
「じゃあ私からするわ、ちゃんと見ていて頂戴」
「はいよ」
俺はレーンから少し離れる。
いつの間にか生徒に教えられる教師みたいになってしまった。
シルは俺が離れたのを確認するとスカートに半分隠れている太ももの左ガンホルダーから『Colt M1877 Lightning』を抜いた。だが普通の『Colt M1877 Lightning』ではない。表面には美しい花柄のレリーフと持ち手の部分にピンクゴールドのハート型のレリーフが刻まれていてその他の部分はシルバーとゴールドのメッキ加工を施してある。
もちろんこんな銃は市販されていない訳がないし、もう生産もしていないはずだ。これは特注品かまたは模造品なのであろう。弾薬は正規品なら.38ロングコルト弾であるが、こいつは.44マグナム弾を使用している。
もう一つ決定的に違うのは現代的な『弾倉振出式』を採用しているところだ。
どこで入手したかはわからない。なぜならシルと出会った時からもう既に持っていたからだ。
この銃は現在製造されている弾薬が使えるようにリメイクされたものだ。
シルは両手で支えようとはせず、片手だけでスッと構える。普通はそんなことはしない。シルの体格で片手撃ちは愚か、両手で支えてもかなり反動の反動を受けるはずだ。そのため現実的に銃を撃つことは難しい。そう思うのはあたり前のこと、それに加えあの銃の大きさとシルを比べれば一目瞭然だがシルはそれを覆す。
その構えから無関心そうな瞳で狙いを定める。
しかし、俺が狙っていた25mターゲットではなかったのだ。その奥にある50mのターゲットだ。
俺では正確に中央の二重円の中心を狙うことは難しい。俺が銃を使い始めたのは中学3年生の時からなので、あれから2年しか経っていない。ベテランとかプロには程遠い、少しできるくらいのものである。それも俺のガタイの良さのおかげである。
銃口がターゲットを捉えた時だ。
バァーーン!! バァーーン!! バァーーン!! バァーーン!! バァーーン!! バァーーン!!
6発の銃声が響く。それからすぐにシリンダーをスライドさせてカランカランカランッと薬莢を排出してポケットから取り出した6発の銃弾と『Colt M1877 Lightning』が宙に舞った。
銃弾は魔法がかかったかのように六カ所の穴に吸い込まれるように入っていき、手元に戻って来る時には6発ともシリンダーに収まっており、キャッチずると同時にカチンとロックされ、シルは銃をクルクルと一指し指で回しながらガンホルダーにしまった。
一連の動きはあまりにも華麗で何かサーカスでも見ているような気持ちになる。いつ見ても驚いて見とれてしまう。
これは『空中装填(Handless Reload:ハンドレス リロード)』と呼ばれる装填方法で他のどの装填方法よりも早いが成功する確率はほぼゼロに近い。だがシルはそれを100%の確率で成功させている。
まるで映画か何かに出てきそうな技だが、これは現実だ。
シルが撃った弾は六発とも同じ場所に命中し一つの穴しかターゲットに空いていなかったのだ。
「いつ見てもすごいな」
「これを見習うことね」
飽きたような仕草を見せてレーンからできてきた。
シルは部長と鉢合わせしたら面倒とか言って、射撃場からフラフラッといなくなったので、待っている他の子に教えることにした。いつも本ばかり読んで人と積極的に触れ合わない俺ながら今日はやけに熱心だと思う。
さっきシルに言われたせいであろうか?
それから二、三十分ほどで演習は終わり、体育館に移動した。
~Misaki Side~
京四郎が銃の訓練に抜けた後、少しして更衣室に忘れ物をしたことを思い出して戻った時のことだ。
その時偶々銃声が聞こえてきたのだった。だが普通の音じゃない。風紀委員会が採用しているH&K USPでもなければ、生徒会の採用している『Glock 17』でもない。
リボルバー式で骨董品のような古い独特の音がしていた、場所は外、第3校舎裏、射撃場からだ。
その銃声に惹かれるようにして気が付いたら外に出ていた。
こっそり射撃場を覗くとそこは銀髪に特徴的な赤いリボンの付けた外国人が京四郎と仲睦まじく会話しているのが見えたのだ。
「どうしてアイツがここにしかも京四郎といるの!!」
思っていることがつい声に出てしまう。
思わず太もものベルトに収まっている『Cz75』に手をかける。
今すぐにでも事情を聴きたいくらいだが、その衝動を必死に押さえて引き返すことにした。




