04 エピローグ
この話で終わりになります。
俺はリーセとの再会のため、王女に協力を仰ぐ事にし、部屋へと行った。
入室の許可が下りて中に入ると、そこには、王弟一家が勢ぞろいしていた。
「スミッツ家の嫡男か。久しいな」
「お久しぶりでございます」
「ちょっとだけ待ってくれないか。娘が頼みがあるというんだ」
「はい。かしこまりました」
「待たせたな、エルシェ。さぁ、頼みは何だ?」
「まず、この作戦を教えてくれたのは、リーセっていう侍女なのです。だから、そのリーセを私付きにしてはくださいませんか?」
「お待ちください」
俺の声に、可愛らしい王女がビクついた。
「下からお言葉を遮ってしまい、大変申し訳ございません、殿下。そのリーセは私の婚約者でして、コーレインの策略で、無理矢理王城の侍女として働く事になったのです」
「え!? そうだったのですか?」
「はい。本来なら学園卒業後、すぐに私の妻となる予定でした。本日殿下に、そのリーセとの橋渡しをお願いしたく、図々しくも参上した次第でございます」
「まぁ……そうでしたの」
王女が残念そうに言うと、王弟も困り顔で口を開いた。
「スミッツ家の奥方になるんじゃ、侍女は頼めないな。それに、覚える事もたくさんあるだろうし……」
「ダメですか……」
「ただ、交友する事に対しては本人に任せておりますので、文通くらいなら大丈夫でしょう」
スミッツ家は名門と言われるだけあって、交友関係も広く、マナー面で覚える事も多い。しかも、女主人としての教育も待っているのだ。
「わかりました。では、次はまともな家庭教師の方をお願いします」
「うん。任せてくれ」
何とか丸く収まってよかった。
その後再会し、結婚したリーセに、王太子が泣きついて来た。
「令嬢を紹介してくれないか? 婚約者がなかなか決まらなくて……」
なのでリーセは、学園時代の公爵家の友人を紹介した。
子爵家の令嬢の友人になるには高すぎる身分だが、おっとりした性格らしく、リーセ達とは気が合い、よく一緒にいた中の一人だったという。
婚約者もいない事から打診したが、そのままうまくいったようで、すぐに婚約が調い、結婚も果たした。
公爵家の令嬢の中では地味だったため、誰もがその結婚に驚いたらしい。
リーセは未だに王国の危機を救い、全てを良い方向へと導くきっかけを作った事に気づいていない。コーレイン家の企みを退け、隣国との戦争を回避し、なかなか決まらなかった次期王妃も、あっさり決まってしまった。
周りもリーセへの評価を変えつつある。彼女の事を侮る奴らは、周りが見えない愚か者だ。
そんな彼女を俺は溺愛しまくっているのだが、それが過ぎると、しばしば王女に怒られる日々を送っている。
それから数十年後。
子ども達も俺達に呆れる事が多いようで、俺がリーセに構っていると、「はいはい」とばかりに皆、その場を離れていく。
一番上の面倒見の良い、俺そっくり第一号の嫡男を筆頭に、お調子者だが、空気が読める俺二号の次男、おっとりとしたリーセ似の長女に、しっかり者の、俺とリーセの良いとこどりの次女。最後に、一番のやんちゃボーズで俺三号の三男。
正直子どもには興味がなかったが、リーセが嫡男を妊娠した瞬間にその考えは覆った。
これも皆、リーセのお陰だ。
俺はこれからも、リーセが奪われないよう、散歩中はしっかりと手を握って歩く。
この隣は誰にも譲らない。
王国の危機を救ったリーセは、今日も無自覚な顔で、こちらを見て微笑んだ。
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