10.領地開拓を進めましょう
あれから月日は流れ、桜花姫が目覚めてから約一年。
私ことアザリア・グロリエルは、十三歳になりました。
新たな家庭教師にダリエル司祭を迎え入れ、この時代の神学と呼ばれる神話話、教会成立の経緯、歴史。そして神聖魔法の立ち位置など。
更には世間で知られる十五の神聖魔法の内、半分近く習得出来ました。
え?早過ぎないかって?実はそうでも無いんです。
何故なら神聖魔法を習得する際の一番の障害は何か。それは魔法使いにとっての体力、魔法力なのです。
気付いてしまえば当たり前なんですが、慣れない神聖魔法を一日に何回何十回と発動させるって、並の神官には不可能なんですよ。
魔法が発動しなければ消耗しませんが、不安定でも発動すれば疲労します。
だから昨日出来たからと言って今日も出来るとは限らない日が何日も続き、安定した頃にようやく次の聖句暗唱へと移る。それが普通の流れです。
なら私は?一日に百回発動余裕でした!私の総量数千人分!
練習回数の桁が違うので一旦発動したが最後、多少不安定でもその日の内に慣れるまで繰り返せるんですよね。
序でに時々ダリエル司祭が私に破邪魔法を何度かかけて頂いておりますが、やはり万全の状態よりも多少消耗した状態の方が効きが良いご様子。
お陰か先日、遂に私自身も破邪魔法を習得いたしました。
効果の程は、他人にかける分には司祭様以上の高出力。但し自分にかけようとすると、自分が高めた光の魔力が障害となって威力は激減。概ね司祭様の半分未満の出力が届けば良いかな?といった感じ。
そんなこんなで冬も越え、もう良いだろうとお兄様とも正式に挨拶を済ませ。
今は時に一緒に学び、時に一緒に食事を取り、といった割と?家族らしい距離感に落ち着いたのでは無いでしょうか。
因みに両親との関係も思った以上に良好です。普段はともかく裏での打ち合わせでは本音をぶちまけ合う所為もあるのでしょうが、多分一番は領内の好景気。
先ず義母は前世の食文化が非常に気にいった様で、普段の食卓に加えてパーティの場で披露。一部レシピを販売して懐を肥し、社交界の話題を浚っております。
父は父で領内での対応に追われているとの体で過激派との接触を減らしながら、中立派閥との接触を増やす事で過激派側を牽制。ダリエル司祭を家庭教師に迎えた事で教会との対立が一部緩和されつつあります。
現状では噂が噂を呼んでおり、グロリエル伯はちょっとした注目の的。ただ活動範囲が王都中心なので、領内の注目は余りありません。
ので。そろそろ私自身の実績作りも兼ねて、動き出そうと思います。
「率直に言って、領地面積に比べて極端に収穫量が少ないんですよね。
これは怨霊、桜花姫としての知識を踏まえての発言ですが。」
裏会議の場。メンツは私が桜花姫の生まれ変わりと知る面々のみ。
今の辺境領は基本父が方針を決め、家臣団に問題点や必要な資料を提出させる形で運営しておりますので、表の方針を気にする必要はありません。
家臣達は概ね父の許しを得る形で上申するだけなんですよね、現状。
「そんなに少ないか?他領と比べてもそこまで劣ってる気はせんが。」
父の言い分は、世間一般的な領主としては正しいのでしょう。私も前世の知識が無ければ問題点に気付けませんでした。
「ええ。不作の年を挽回するには率直に耕作面積が足りてません。
これでも元が取れている最大の理由は、冒険者達による魔物退治。魔石売買分の納税のお陰でしょうね。
魔物肉と魔石で不足を補い切れている分、町村に開拓意欲が薄いんですよ。
だから飢饉の際の蓄えが確保出来ず、あっさり死者が増える。」
「な、なるほど。しかし、村々とて住民の拡大に合わせて多少の開拓は行っている筈です。彼らの自力でこれ以上は……。」
彼カードックは最近家令に採用された、この場で唯一の旧タムリン子爵家出身の家臣です。一応表の会議には他にもいるんですけどね?
マルガリータは侍女としては優秀ですが、統治知識は全くありませんので只の補佐として見張りを兼ねた待機中。
本当は父の家令が居る筈だったのですが、その、腰痛は仕方ないので。
彼の息子は未だ早いので、この機に増員しようという話になりました。
「そうですね。この辺は領主側の仕事でしょう。
開拓が進まない一因は、森に住まう魔物達の討伐が困難だからでしょうね。
我々の基本方針としては、飢饉の備えとして労役を課す形で開拓を進める方向でしょうか?」
冒険者というのは個人単位の、身分保障の無い傭兵の様なもののご様子。
但し保証も無い分仕事は資格の範囲内で自由に選べるとの事。権利は実績による資格次第、上位の資格であれば義務と引き換えに居住権も有するとの事。
要は一流の冒険者なら都会だろうと田舎だろうと、根無し草より行政側が身元を保証して定住して貰った方が有り難いのです。
何故その様な仕組みがと疑問に思えば、どうやら魔物の所為らしく、魔物は軍や騎士を派遣するには余りに数が多い。民衆に武器を持たせて自衛させない限り財政が容易く破綻してしまうのだそうです。
なので冒険者を当てにして護衛を頼み、樹木伐採を進める等の発想は町村レベルでは到底出て来ません。
村民視点だと自ら財産を削って増税の口実を作る様な話でしょうから、彼らに期待するのはそもそも間違い。ここは公共事業として開墾する必要があります。
「提案自体は結構だが、肝心な部分は解決していないな。
その開墾にかかる費用、どうする心算だ?」
私はにっこり笑って宣言します。
「取り敢えず、私が出張して来ます!」
◆◇◆◇◆◇◆
領地内のとある町、ある晴れた日。
十数名の護衛と冒険者一組を伴って訪れた私を出迎えた代官は、そりゃもう緊張なされてお出ででした。仕方ないね、私伯爵領の姫だもの。
彼らにはこれから私手動で始める開墾作業の手伝いをして貰う事、義務以上の労役となるため今年の税が減税される事などが通達されております。
働き次第でボーナスもあるよ。でもサボリは厳禁。数十人の労働者を用意すべしとの内容で、特に魔物の解体と伐採が出来る人材という条件です。
横暴に聞こえましたか?でも彼らはどう思ってるかは微妙ですが、ぶっちゃけて十分優しい方です。労役って要は税金ですので、労働者の日当を出すのは代官側。
管理側の方針次第で税金分だから手弁当で来い、も許されるんですよね。
仕事量も領主の匙加減次第なので、普通は減税額なんて明言されません。代官の揉み手と笑顔は絶好調。期間に余裕も有ったしね。
とはいえ本格的に仕事を頼むのは明日からで、今日は冒険者達を引き連れての現場視察と若干の作業だけです。護衛と従者達は明日以降の作業場設営開始。
ここに並ぶのはあくまで事前に解体処理が終わった物だけとはいえ、町中で全部を行うには多くなるでしょう。
今回の開墾範囲はそれなりに大規模の予定です。
尚、ぢつは視察自体は事前に終わってたりします。ホラ私一人なら闇夜に紛れて空から測量したり候補地を選出したりし放題だもの。
なので本日本当に行うのは、開墾のための、明日人を呼ぶための下準備です。
この辺の作業は詳しく説明しておりません。そもそも私の見た目自体が異形ですから、実際の作業を見ずに理解して貰うのは先ず不可能。
ふっふっふ。冒険者の皆さんは単なるお嬢様の我が侭だと思っている様ですね。
不満が顔に出ておりますが、良ござんしょ。私は寛大なので、実際の作業を見て驚く事を許可します。なんてね。
◆◇これホラーってマ?◇◆
クラン・ファランクスは辺境伯領で売り出し中のB級冒険者パーティだ。
B級ともなれば王国内何処でも移住権が認められる。比較的魔物が多い辺境伯領を出るには丁度良い頃合いで、そろそろ王都へ拠点を移そうかと検討中。
冬場は遭難の危険も有るので無理せず蓄えを消費して過ごし、途絶えがちだった各地の被害情報や連絡が活発化するのはもうそろそろ。
辺境伯直々の依頼など滅多にないので、今後を考えてコネでも作っておこうかと軽い気持ちで受けた護衛依頼だった。
だがパーティ内の反応は今、真っ二つに割れていた。
「ホント、もっのスゲェ美少女だな……。」
「ホントホント。いやぁ眼福眼福。」
「アンタ等いい加減にしなさいよ?年端もいかない相手に鼻の下伸ばして。」
「いくら顔とスタイルで負けてるからって嫉妬は見苦しいぜ?」
これである。一応依頼人の前では取り繕っているものの、リーダーに惚れ込んでいる女神官の機嫌は急降下中。しかも依頼人もかなりのキワモノだ。
何せこのグロリエル伯のご令嬢ときたら、馬車ではなく騎乗しているのだ。
見た事も無い質素な服を着こなし、しかしみっともない所か極上に輝いて見える程の美少女だ。白い肌に白い髪は、雪よりも白く輝いて見えるのだから完敗だ。
蝶の羽の様に袖をはためかせ、紅色の馬上袴の腰には小剣の柄が伺える。
序でに背中には用心のためか、異様に長い弓、馬には多数の矢筒が並んでいた。
振る舞いに騙されそうになるがこのご令嬢、決してお淑やかでは有り得ない。
けれどまぁ、歌舞いて見えるのも仕方ないのかも知れない。
何せこのご令嬢、薄く鮮やかな碧眼の片目が、常に小さく腫れて閉じている。
両腕も時々肩が無いかの様に見える時すらあり、これが俗に言う傷物令嬢なのだとしたら、人には言えない苦労があるとしても不思議はない。
それこそ自ら開拓地の指揮を執るような。
(けれどまぁ。魔物の解体処理って依頼内容は、どう見てもこのお嬢様が戦おうとしているようにしか思えないんだよねぇ……。)
だとしたらこれは最悪の依頼だ。魔物という生物は体内に魔石を持つ、物理法則に反する程の身体能力を持ち合わせる獣達の総称だ。
冒険者資格も持たないか弱い少女にどうにかなる相手ではない。その場合何処でどの辺りが依頼人の妥協点なのか。単に形だけ魔物退治を行えば納得するのか。
開拓はオマケなのか。本命なら何故魔物退治を依頼のメインにしないのか。
(自分を認めさせるためだけの我が侭だとしたらって考えると、ホント胃が痛いったらありゃしない。)
魔法使いは帽子を目深に被って視線を隠す。依頼が不明瞭だからって権力者の依頼人を怒らせたって良い事は何もない。
良さげな所を上げるなら見た目は素直そうな深窓の令嬢なところか。性格も見た目通りである事を祈るばかりだ。
目的地に着いたらしい辺境伯令嬢は、迷いなく地面に旗を立てて目印とする。
そこで此方を振り仰いでひらりと手慣れた風に、馬上から降りて供の騎士一人に此処で待っている様に指示を出す。
全く以って不用心、幾らB級とは言え冒険者だ。極論血迷えば他国に逃げれば良いし、目撃者が居ないなら尚危うい。もしや己が美人という自覚が薄いのか。
それも有り得なくは無さそうだ。案外躾けられた異性しか身近に居ないのか。
けれど。箱入りお嬢様だと思っていられたのはココまでだった。
「さて。これから私は魔法の練習序でに壁を作りたいと思います。
皆さんはその途中で私が倒した魔物達の解体と、待機中の自衛をお願いします。
まあ口で言っても分かり辛いと思うので、一旦そこで見ていて下さい。
それじゃ、〔粘土防壁〕っ!」
「へきょッ?!」
取り出された短杖を突き立てた地面が抉れ、彼女の足元が丸々周囲の土砂を巻き込んで引き摺り上げる。瞬く間にせり上がった土砂は、塔のような壁になった。
それは膨大な魔力に裏付けされた、桁外れの制御力の産物。
〔粘土防壁〕は本来であれば精々頭より上程度の高さに引き上げ、様々な危険を受け止めるための攻撃魔法だ。
実戦では防御に使われる事が多いが、相手に向けて倒せば人を埋められる立派な攻撃術式で、実際自分にも近い事は出来る。近い事は、だ。
問題はその塔の如き壁は、土砂とは思えぬほどに一面が圧縮されていた点だ。
後で知った事だが地面が陥没していた側は堀で、殆ど垂直に圧縮された面は文字通りの防壁だった。高さはざっと、簡単に超えられない三階程度。
内側は一般的な土塁の様に競り上がっており、中からなら登る事も少々大変なだけで済んでいる。一応城壁に近い使い方を想定していたと聞いた。
とは言え、動かした上に圧し固めるのは、並の魔力では全く足らない。
何より問題は、単に一ヶ所押し上げるだけでは無く、横に圧し固めながら移動し続けた事だ。グロリエル令嬢自身も土砂の上から動き続け、まるで道の様に彼女の前に溝を掘り壁を築き上げ続ける。
魔法使いはアワアワと目の前で起きた惨劇に怯えるしかない。
今物凄い量の魔力が蠢き津波の様に膨大な力が壁を作り続けている。
だが更に小脇に、えげつない事態が起きた。
グロリエル令嬢の周りから無数の黒い腕が伸びて、進行方向にある樹木を次々と引き抜き始めたのだ。それはもうめきょめきょと。地面から根っこごと次々と。
夢じゃない。その証拠に私達の後ろに伸びた腕が、次々と空で土をほろい落した根っこ付きの樹木を並べて適当に山積みし続けている。
何コレ。理解したくない。
でも未だもうちょっと現実は酷かった。
壁の進行方向に魔物と思しき影が現れたからだ。
「あ!あれはバインドモンキーだ!!」
こきゅり。
〇バインドモンキー~伸縮自在の腕を持つ手長猿の魔物。分類上はDランクモンスターだが実際にはCランク相当と言われるランク詐欺モンスターの代表格。
何が問題かというと、間合いが一見して分からない上に、群れで襲い掛かる。
ごり。ぼき。ぶち。こきゅりこきゅりこきゅり。ぼきぼきぼきぼきぼき。
堀の底に血抜きされながら、十数体のバインドモンキーが次々と目の前に並ぶ。
一同は呆然と目の前の惨劇に立ち尽くす。
「え?何コレ。何が起きているの?」
「お、おい。お前、同じ魔法使ったことあるよな?
お前もあんな事出来るの?」
ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん。
無理に決まってんじゃん。アレ絶対魔族だよ人の魔力じゃないよ。
でも沈黙に耐えかねて、出来そうなラインは白状する。
「家一軒分の幅なら一日一回くらい?」
「…………この壁、何十件分?」
知るか馬鹿。もう遠過ぎて蠢いてる手しか見えないよ。
けれどグロリエルのお嬢様は、何時までも現実逃避させてくれなかった。
ぴょん、と言わんばかりの手軽さで、折れ曲がった直後の壁から飛び降りる。
飛距離は考えないものとする。多分腕でこっちの壁掴んだだけだもの。
「もしも~し?皆さん、それ皆さんのお仕事ですよ~?
これからもっと増えると思うんで、ドンドン解体してって下さいね?」
序でにぽいっと、ビックベアーとスカルスネークを堀に並べるお嬢様。
もう驚かないよ?だってそれCとDだもの。このお嬢様ならちょろいもの。
「ははは、はぃいっ!!只今!ホラあんたらもボケッとしないで!急いで!」
慌てて短剣取り出しながら他の仲間達を蹴り飛ばす魔法使いに微妙に納得のいかない顔をしながら、お嬢様が後はお願いしますと壁の向こうに跳んでいく。
皮を剥ぎ、食用の魔物は肉を切り分け、魔石を繰り抜き。売り物になるなら骨や牙、そして目玉も相応の保管用具がある。
この保管用具の数は冒険者の実績に影響するので案外馬鹿にならない。内部空間を拡張して大量の物を収納出来るという魔導鞄は全ての冒険者の憧れだ。
「へへへ。一日でこんなに解体したのって初めてだぜ。
俺達の今迄の稼ぎとどっちが多いかねコレ。」
死んだ目でリーダーがひたすら手を動かし続ける。戦っていないのに奴の全身は血塗れだ。勿論自分達も似たり寄ったりだ。
「流石に百未満とか無いわよ。それに最高がC級なのは確かだしね。」
でも数十体の魔物が山積みとかとても壮観。達成感あるわ。
「あ!イーグルタイガーだ!」
〇イーグルタイガー~虎模様の巨大鷲の魔物。Dランクモンスターの中では最も手強い、巨大な魔鳥。豚を浚う程の巨体ながら急降下や急飛翔、急旋回を得意としており、地上に降りたとしても即座に空へ飛び立てる程の脚力がある。
「はぁ!血の臭いに惹かれてやって来たんだわ!」
明らかに群れを成して此方を目指している内の一羽が、後頭部を射貫かれる。
「「「あ。」」」
飛んでる鳥に当たるんだ。
後ろから射貫いた事が幸いしたのか、五羽のうち三羽が一方的に落ちていった。
残りの二羽は別々に急上昇し、一羽は御令嬢に向けて急降下を試みる。
見れば反対側の壁が一周して戻って来ており、壁の上では立ち膝になったグロリエル令嬢が土壁に突き立てる短杖を握りながら、両腕で長弓を斜めに構えていた。
構えも狙い方も独特だったが、その横顔は惚れてしまいそうな程凛々しかった。
そうか、これが吊り橋効果という奴か。
流石に不意討ちでも無ければ逃げ回る相手に必中とは行かなかったが、近付いた方は首を捻られ、もう一方も程無く射落とされて脇に並ぶ。
魔物達の倍ぐらい引き抜かれた樹木を並べて、長方形の砦が完成する。
その広さは、まるで城でも建造するかのようだった。
ふわり。まるで雪の妖精の様に軽やかに地面に着地した彼女には血飛沫の一欠片だって見当たらない。そりゃそうだ、C級程度じゃ近付く事すら出来ないよね。
「ふぅ。流石に結構疲れましたね。
今日の仕事はこちらを片付けたら終わりです。」
まじかい。
◆◇ホラーかなぁ?◇◆
うわぁ。魔法使いのお姉さんとかガチガチ歯を鳴らしながらこっち見てます。
何がいけなかったんだろう。別にそんな強い魔物も居なかったし、この程度なら百姓達でどうにかなりそうだと言ったら有り得ないって言われました。
え、何で?熊鍋くらい何処の百姓でも食べるでしょ。
「魔物と普通の熊を一緒に……。いや大して変わんないか?
と、とにかく住民に対処出来るのはEランクまでが常識なんですよ!
野生の熊だってDランクになりますからね?熊相手に農民が一騎打ちとか物語の中だけですから!現実に居ませんそんな連中!」
わぁ、前世の農家を全否定。
まあマタギも居ない時代ですしね。もう百姓と兵士の境界が曖昧だった時代とは違って、そこらの民家に槍が立てかけてありは致しませんし。
訓練をしてなければ民百姓と言えど、ここまで変わってしまうのでしょう。
「ていうかグロリエル御令嬢、ずっと気になっているのですが。
その沢山ある手みたいな帯は一体……。」
「ん?ああ。この腕は魔導具による魔力義手ですね。
実は私、死霊に呪われていまして生身の両腕が無いんです。実は対処法が見付かるまで外も出歩けないくらい酷かったんですよね。
見ての通り、かなり便利ですよ?私呪いの影響で人一倍魔力が多いので。」
(((いや、便利ですよ、じゃねーよ。)))
あれれ~?思ったよりドン引きしているぞ、っと。
まあ良いか。いきなり呪いなんて言われて受け入れるとは思わなかったし。
大事なのはこの開墾作業がどの程度実際に出来るかどうかです。本日の結果次第で後日の予定は大きく変わりましたね。
ですがこれなら、予定通り進められそうです。
(いやいや呪いって。そりゃ訳アリにしか見えなかったけどさ。)
(いや何言ってんの、あんなん生まれつきとか言われた方が心折れるわ。)
(……そうだな!でも俺は既に折れたけどな!超天狗の鼻折れたけどな!)
渇いた笑いを浮かべながら解体を再開した、B級冒険者ファランクスの皆さん。
私も後は彼らの解体した素材を回収しながら町へ戻るだけなので、待っている間に昼食の準備を進める事にしました。
あ、流石に手料理では御座いませんよ?高貴な血統の手料理は時に褒美としても振る舞われるもの。裏ではともかく、今回のような場は保存食です。
「と、ところでですね?明日こちらに町の住民達を連れて来るとの事ですが、一体この砦みたいな壁は何なのでしょうか。」
恐る恐ると言った態度で昼食休憩中に、護衛(建前)として同行して貰った騎士が訊ねて来ると、ファランクスの皆さんも次々と伺う様に頷きました。
ふむ。ちょっと実際の作業だけでは判り辛かったかな?でもまあ、今なら実際にやった諸々があるし、きっと想像し易いでしょう。
「ああ。つまりこれ、開拓地です。
一応農業用地を予定してますけど、魔物の侵入を防げるようにある程度の高さで壁が必要でしょう?
ほら、今そっちから徐々に川の水が入って来てますから、周りの窪みは農業用水にも使える水堀になる筈です。」
「「「????」」」
あ、これ未だ見当付いてない顔だ。
「町の住民に開墾を命じたって魔物を倒しながら木を切るのって大変でしょう?
だったら私が魔法の練習序でに魔法力任せに安全を確保した土地を用意してしまおうって話なんですよ。
明日は壁の内側に残っている木々を引っこ抜き、中に取り残された魔物達を一掃する予定です。」
「って、えぇぇぇ~~~~!こ、これ農園なんですか?!
もしかしてこの中の森全部、御令嬢が開墾するんですか?!」
門は敢えて未だ作ってません。中の魔物を一掃してからの方が安全だし、門だけは魔法で作った後に補強が必要だろうしね。
流石にそこは、諸々の追加施設合わせて町の人々に任せる事になります。
「ええ、その通りです。と言っても私は木と魔物迄ですが。
引っこ抜いた木だって乾燥させて売れば一財産ですし、魔物を後始末せずに放置するのは流石に勿体無いですから。
けど中の魔物の解体を全部、皆さんだけでやれって言われたら無理でしょう?」
「「「…………。」」」
あれ?返事が無いな。どうしたんだろ?
「えっと。あれ、もしかして全部皆さんに任せた方が良かったですか?」
全員に飛び跳ねられた挙句、全力で土下座られました☆
え?何で、私無理強いなんてしてないよ?
ちょっと?もしもし?皆さぁ~~ん?
※次回、展開上の都合により11/3日の金曜投稿をします。
※世界観はRPG風をイメージしております。
強さ的には、魔王>姫w≧四天王≧ドラゴン>S~A級冒険者。まあ大体はLV次第?
ヒロイン達は覚醒すると全員魔族特攻持ちになります。
卒業パーティで戦う時があるって事は、その頃にはA級並の実力はあるって事だ……w




