表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/240

3話 屍骸蹂躙


 俺は騎槍を構えて突進してくる護衛を見て確信した。

 完全に俺のことを敵としてなんとも思っていないことを。


「……傲慢だな」


 心を無にし、先頭の護衛に意識を集中させる。

 周囲の護衛を統率し、息を合わせて迫りくる3騎の護衛。

 それは俺が城壁の内側にいようと変わらない。

 

「傲慢さ共々、砕け散れっ!」


 そう大声を上げて、自身を鼓舞すると同時。

 俺は右手で握ってた剣を、勢いよく先頭の護衛へ投げつける。

 風を切り、護衛の頭部へ護身用として拾った剣が命中した。


 投擲した衝撃によるものなのか、護衛が騎馬から落下する。

 地面に落ちる寸前、後を追っていた2頭の騎馬が迫りくる。

 2騎の護衛が騎馬を静止させようとしたが、その判断は遅すぎた。

 抵抗すら許されず、骸骨は鎧ごと2頭の騎馬に踏み潰された。


『『───ッ!!』』


 残こされた2騎の護衛が再度、槍を構える。

 その眼窩は先程よりも蒼に染まり、炎のように燃え盛る。

 蒼炎が、声に変わって怒りを伝えているようで。


「すまないが、俺も生きるのに必死なんだ」


 俺は城の外部と内部を繋ぐ柵を挟んで、護衛に告げた。

 激昂している護衛は、騎槍で俺を貫こうとするはずだが。

 その場合は、どう対処すれば生き残れるのか。


『───!!』


 乗り手を失った骸の騎馬が、柵に向かって突進してくる。

 騎馬の予想外の行動に驚愕し、俺は経路上から回避するのが遅れた。

 だが、騎馬に柵を壊されることも、突撃されることもなかった。

 そのことに疑問を感じ、骸と化した騎馬に視線を移す。


「な、何が起こったんだ……?」


 視界に映る光景に、俺は目を見開いた。

 乗り手を失ったことで激怒していた騎馬の姿が消えていた。

 いや、正確にはその姿が原型を留めていなかった。

 全身がバラバラにされ、周囲に馬の骨が飛び散っていたのだ。


「まさか、あの木の根が……?」


 現状、最もありえそうな結論を導き出した。

 けれど、それにしては不可解な点が多すぎる。

 あの木の根は刺し貫くことで、骸骨を絶命させていた。

 だが、音もなく全身を弾けさせているのだ。


『『───!!』』


 目前で起こった出来事に恐怖するように、2頭の騎馬が身を震わせる。

 俺はその行動を見て、この騎馬は何が起こったかを知っていると確信した。

 不可思議な出来事について聞き出す術は、俺にあるはずもない。

 だが、その恐怖を利用して、今を生きるための障害を倒す手はある。


「───うわぁああああぁぁっ!!」


 ヒュンという音の後、大気を揺らすほどの衝撃が生じた。

 落下地点には砂煙が立ち込めていて、誰がいるのかはわからない。

 確かなのは、人が落ちてきたということだけだ。


「なんで、こんな最悪なときにっ!」


 俺は城壁を飛び越え、2騎の護衛がいる花園へ降りた。

 落ちてきた人を逃がすための時間を稼ぐために1騎の護衛を蹴り上げて。

 急いで、砂煙が立ち込める道へ向かって駆ける。


「やっと会えた! シンちゃん!」


 砂煙の中から人が飛び出してきたことに驚愕し、足を止める。

 だが、相手が俺に激突したことで、そのまま地面に倒れた。

 地面に頭を打つな、と覚悟を決めたのに衝撃はなにもなかった。

 不思議に思い、目を開けると女の子が俺を見つめていた。


「お兄ぃ、大丈夫?」


「……ん、あぁ」


 月蝕を想起させる赤い瞳が、俺のことを心配そうに見ている。

 砂煙に汚されることなく艶めく黒髪が、俺の顔を撫でる。

 見覚えのある女の子に会って安堵したのか、視界が漆黒に染まる。

 その瞬間、俺の意識はあっという間に闇に沈んでしまった。


「頑張ったんだね、お兄ぃ」


 黒髪の少女は、「お兄ぃ」と呼ぶ少年の頭を撫でた。

 そして優しく抱えて、安全な城内へと運んだ。



 *   *   *



 少年を地面に下ろして、骸骨たちへと少女は振り返る。


「おい、貴様ら」


 激情のままに発せられた声は、骸骨たちを震え上がらせる。

 それは戦意を削ぐには十分すぎる効果がある。

 だが、その声は戦意を削ぐために発せられたものではない。

 ただ自身が愛する存在(もの)を殺そうとしたことに対する激怒。


「殺そうとするのなら、もちろん殺される覚悟はあるよなぁ!?」


 少女は声を荒げ、激情を骸骨たちへと向ける。

 その手には白い光を放つ鎖を握りしめられている。

 鎖を視認した2騎の護衛は、ゆっくりと後退した。

 瞬間、上空に跳び上がった少女は両手に握る鎖を繰り出した。

 その鎖は鞭のように自在に動き、護衛を純粋な力だけで消した。


「さぁ、高みの見物は終わりだぞ」


 刹那、上空で一部始終を見ていた骸骨は、魔力を圧縮していた。

 超高速で飛翔することで、相手を撒こうとしていたのだ。

 そのことに勘づいた少女は、鎖を自在に動かして集中力を削ごうとする。

 だが、骸骨は最小限に抑えた風の魔術だけで鎖を受け流す。


「あぁ、もう! ウザいっ!!」


 あと数秒で、逃げおおせることができると骸骨は思った。

 だが、その考えは少女の絶大な一撃によって打ち砕かれる。 


「───【幾望崩癒煌(ディアーナ)】」


 骸骨は、世界が闇に呑み込まれたのだと錯覚した。

 瞬間、その考えを打ち消すほどの光が世界を照らした。

 世界を照らす光球は、少女の手中に存在していた。

 少女は冷酷に骸骨へと視線を移して、光球を握りつぶす。


「なっ───この力は!?」


 刹那───世界が純白に染め上げられる。

 純白の光、それは太陽光の反射によって生じる月光。

 敵には破滅をもたらし、仲間には癒やしをもたらす。

 それこそが、月煌神(セレーネ)



───

最後まで読んで頂きありがうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 厨二秒がガッツリくすぐられます!!! 続きがすんごく気になりますが、 読まなければならないものが多いので ブックマークさせて下さい! 後日また走ってきます!!
[気になる点] 「おい、貴様……我と『血盟[パクトゥム)』を結ぶぞ」 ルビが振られていないので、確認をお願いしたいです! [一言] <主様が居た世界は魔力、霊力、神力、肉体共に莫大な負荷がかかる所で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ