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【書籍1巻発売中】魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~  作者: 延野正行
第6章

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第86話 聖クランソニア学院かちこまれる?

☆★☆★ 7月24日第1巻発売 ☆★☆★


「魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~」の単行本第1巻が、

今月発売されます。白瀬先生によるルブルたちの活躍をぜひ見て下さい。


挿絵(By みてみん)


 聖クランソニア学院の〝番長〟がルブルであると聞いた瞬間、リリスの目の前は真っ暗になった。


 ルブルは王都に来て初めての友達。

 リリスの唯一の希望……。

 それ故に信じがたかった。


 リリスの目から見て、ルブルは虫も殺せない――まさに聖女のような少女だった。


 そんな人間が〝番長〟だなんて何かの間違いとしか思えなかった。


「ジャアク……」


 ふとリリスはガルナから聞いたルブルの渾名に注目した。

 先ほども言ったが、ルブルはこの世に降臨した聖女のような人間だ。

 美しく、優しい。清らかという言葉を形にしたような神々しい姿をしている。


 そんな人間を「ジャアク」と呼ぶのは何故か。

 リリスからすれば、いじめられているとかし思えなかった。


 聖クランソニア学院の生徒の多くは、貴族だと聞く。

 ルブルも子爵(キル)であることは名前からしてリリスも認知していたが、下位の貴族でも人間扱いされないと噂で耳にしていた。


 仮にルブルがそうした貴族から虐げられ、「ジャアク」という渾名を与えられて、〝番長〟なんて野蛮な役を押し付けられているとしたら……。自分に向けられたあの天使のような笑顔の裏に、そんな苦難を抱えているとしたら……。


 そう思うと、少しゾッとした。

 同時に、リリスの中に怒りと使命感が湧き上がる。


 なぜなら、今抱えているルブルの心の痛みをわかってあげられるのは、自分しかいないと思ったからだ。


「ここにいましたか、〝番長〟」


 声をかけたのは、ガルナと同じくリリスの親衛隊であるセスカ・リィン=ノクテルだった。


 黒髪のボブに、丸眼鏡。

 手には常に分厚い辞書のような魔導書を持ち歩いている。

 頭にはもはやノクス・マギア魔女学院では形骸化している三角帽子を被り、紫色のアンニュイな瞳をリリスに向けていた。


 セスカはノクス・マギア魔女学院では珍しい、真面目な委員長タイプの人間だ。

 けど、持っている魔導書の中身はド下ネタで溢れ返っていることを、リリスは知っている。そのため、禁書扱いされていて、セスカ自身も界隈では有名な危険人物とレッテル張りされていた。


「ケケケ……。いたいた。探したよ、〝番長〟ちゃん」


 他の親衛隊たちが敬語を使う中、同じくリリスの親衛隊の1人ミュリ・カラミティが気さくに話しかけてくる。


 小柄な身体。白髪のツインテール。ちょっと眠そうな垂れ目と、幼児体型。

 お人形さんのような可愛さは持つが、性格は残忍極まりない。


 以前、ある学校と諍いがあったとき、負けて帰ってきた生徒を、死霊術で召喚したゾンビを使って、倒れるまで追いかけ回らせていたのを、リリスはこの目で見ている。単純な恐ろしさから考えれば、以前の〝番長〟よりも怖い生徒だった。


 ぞろぞろとリリスを中心に生徒が集まってくる。


 それまで聞く側だったリリスは、初めて質問した。


「ガルナ、そのルブル・キル・アレンティリっていう奴は、なんでジャアクなんて呼ばれているんだい?」


「え? そりゃあ、めちゃくちゃ怖いからじゃないですか? きっと悪魔のような生徒なんでしょうぜ。まあ、リリス〝番長〟ほどじゃねぇですけど」


「そんなことはない!!」


 リリスはつい叫んでしまった。

 自分のことはまだいい。

 でも、友達のことを悪く言われるのは我慢できなかった。

 それが王都で会った唯一の友達なら尚更だ。


 リリスはキッとガルナを睨む。

〝番長〟の鋭い視線に、ガルナは冷や汗を流すしかなかった。


「それはお前の推測だろ。なんでちゃんと調べないんだ。相手は向こうの〝番長〟なんだろ!」


「へ、へい! すいやせん。……じゃあ、早速――――」


「いいわ。あたい(ヽヽヽ)が直々に確認するから」


 瞬間、周りがざわついた。


 思いも寄らぬ生徒たちの反応に、リリスは我に返る。


(あれ? リリス、何か悪いこと言った?)


 目をしばたたいていると、ガルナがパンとリリスの肩を叩く。

 今までの中で一番の衝撃のおかげで、肩が外れそうだった。


「さすがはリリス〝番長〟! 〝番長〟自ら、かちこみってわけですね」


「へっ? か、かちこみ????」


 リリスは思わず目を点にする。


「このタイミングですか。我が輩の予想を裏切るとは……。さすが、〝番長〟です」


「やった! かちこみ! かちこみ!!」


 セスカもミュリもノリノリだ。

 他の生徒たちも、まるで戦争が始まることを喜ぶ戦士のように喜んでいる。

 早速、手に持ったナイフ――もとい水晶玉を磨き始める生徒もいた。


 みんなが盛り上がる中、1人取り残されたリリスは呆然とする。


「ガルナさ――ガルナ! かちこみって?」


 たぶん、不良の用語だと思われるが、田舎娘のリリスには縁遠い言葉だ。

 何より、その語音には不吉なものを感じる。


「やだなぁあ、リリス〝番長〟。そんなの決まってるじゃないですか。聖クランソニア学院に挨拶しに行くんすよ」


 な、なんだ~。あいさつかぁ~。


 リリスは安心したかったが、そのとき見せたガルナの凶悪な顔は、どう見ても挨拶以上のことが起こるとしか思えなかった。


☆★☆★ 好評発売中 ☆★☆★


『ククク』単行本12巻が好評発売中!

姉妹作品になりますので、ブレイゼルが目印に、

ぜひお手に取ってください。


挿絵(By みてみん)

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