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エピローグ

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

 翌日には、安いアパートを見つけて、姫が引っ越していった。名残惜しいが、仕方がない。でも、まあ、一時の事だ。結婚してしまえば、当然この家で暮らすのだから。


 それから、三ヶ月、週一回か二回のペースでデートを重ねているものの、中々決定打を切り出せない。出そうとするたびに、怖気づいてしまう。婚姻届けも準備して、後は姫の名前と日付を入れるだけなのに情けない。


「たまには、私の方が奢るわ。レストランを予約しておいたの」


 今日のデートはランチだ。お互いフリーランスなので、平日の昼間にデートすることも珍しくない。姫の仕事も順調で財政的な余裕が少し出て来たそうだ。

 何でも、ドの付く語学の天才と認識されており、その手の依頼が絶えないそうだ。そして、強味を活かすために、仕事の合間を作って、語学検定を取りまくっている。試験官に口の動きの違和感に気付かれないようなテクニックも身に着けたそうだ。

『資格者が少なそうな言語を狙っているの。でも、教材も受験料も高くて大変なの』などと俺に受験料をねだりながら、既にロシア語、スペイン語、インドネシア語の資格を取得済みだ。


 姫に案内された店は、結構お洒落だ。値が張りそうだな。折半にした方が良いだろうか。


 何時もながら、姫との会話は楽しい。何としても、結婚したい。何年でも甘い生活を送りたい。そんな、ムフフフな感情に浸っていると、姫の気配が変わった。


「ケダモノさん。妄想している所、悪いけど真面目な話をしたいの」


「お?おお。俺は何時でも真面目な紳士だぜ」



 姫は、俺をジト目で睨んでから、テーブルの上に見覚えのある箱を出した。


「良くして貰ったけど、私があなたの籠の中の鳥だったのは事実。この国にもストックホルムシンドロームは知られているわよね?

 わたしの気持ちが、精神病理的な一時のものであれば、一緒になっても真の幸せにはならない。一人暮らしを三ヶ月も続けたのは、それを確認する為だった。

 その結果、逃走資金として貰ったこのジュエリー、不要になったので、あなたに、一度返すわ」


 自分でも判る位、血の気が引いた。別れ話なのか? そんなの嫌だ。


「幾らヘタレでも、最期はキチンと決めて欲しいの。女のプライドを傷つけないで、私の目をよく見て」


 姫の目は、何か欲しがっているように見える、俺を嫌っていないのか? そう言えば、『一度返す』と言った。



「遥かな世界の壁を越えて、俺は理想の女性に出逢った。永遠の愛を誓う。一生大切にする。だから、この指輪を受け取って欲しい。俺と結婚して欲しい」


 手配してあったのだろう。俺のプロポーズが始まると同時に、店の音楽がウェディングソングに切り替わった。


「あなたの誠に誠で応えるわ。永遠の愛を誓う。愛は移ろい易いと知っている。でも、私の全てを掛けた誓いと誠意で、永遠を勝ち取ってみせる。

 私を貰って下さい。その指輪とネックレスで私を捕え、永遠に離さないで」


 俺たちは、自然とキスをし、姫に指輪とネックレスを付けた。美しい。美しい。感動だ。


 長いキスの後、婚約者になった姫は、更に時を加速させるべく、俺に(ささや)いた。


「あなた。花の命は、移ろい易いの。

 私達、二人とも、結婚を報告する親族が居ない。そして、あなたのカバンには、婚姻届と結婚指輪がある。そうでしょ」


 俺は、ゴクゴクと唾を飲み込んでしまった。


「このまま、姫を(さら)っていきたい」


「喜んで。

 私を、攫って下さい。あなたの全ての愛の表現で私の躰と心を虜にして下さい。でも、この国の法律と道徳に従って、結婚を成立させてからよ」




 その日、俺たちは心の底から結ばれ、至福の時代を開いた。四人もの子供を得た、幸せな時代の果て、姫は季ノ国に戻る事になるが、それは、また別の話である。



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