↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/24

ヴェレフェーヌの光

テルクの国境を越えた瞬間、空気が変わった。

ずっと乾いていた。旅の間ずっと。埃の味がした。喉の奥に、ずっと残っていた。

それが、すっと抜けた。

代わりに来たのは、甘い風だった。草でも花でもない。もっと静かな匂い。街そのものが、匂いを持っているみたいだった。

「着いた」

グレンゼが前を向いたまま言った。その声に、珍しく何かが混じっていた。聞き取れるほどじゃない。でも、わかった。

私は窓から顔を出した。

白かった。

建物も、石畳も、壁も、全部が白かった。でも、白いだけじゃなかった。光の向きが揃っている。街全体が、同じ方向を向いて立っているみたいだった。

きれいだ、と思った。声には出さなかった。

「メルセミュ、顔出しすぎ」

ガジに肘で突かれる。

「見てるだけ」

「見てるだけって顔じゃないけど」

引っ込める気にはなれなかった。

坂を下りるにつれて、音が増えてくる。人の声。荷車の音。石畳を蹄が叩く、乾いた規則正しい音。

にぎやかなのに、うるさくない。この街には、何かそういう調子がある気がした。

石畳に入った瞬間、坂の上に目がいった。

丘があった。

何もない丘だった。建物も木も、何もない。ただ空に向かって、開いている。

あそこから見たら、何が見えるんだろう。

声にはならなかった。馬車が止まった。

「まず宿を取る。それから依頼所へ行く」

グレンゼが立ち上がる。フィロニィが頷く。ガジがあくびをかみ殺す。

私は窓から目を離して、荷物を掴んだ。

ヴェレフェーヌ。ここが、しばらくの拠点になる。

その時はまだ、「しばらく」がどれくらい続くのか、考えてもいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。