第3話「Episode:ケレス(前編)」
ミティア・ベルクにて、偶然にもスパイルと合流をする事ができた私は、ベルクカフェで茶を飲みながら離脱していた期間の話を直接、聞くことができた。
彼の話によると、知人の案内付近をうろついていた者の正体は、始りの地トレスの案内ロボット・メイのお姉さん、リナによる仕業だということが判明した。
これで、彼女の案内所は平穏になり、客足が増えにぎやかになることだろう。
―さて、彼が初ミッションにて手に入れた報酬、精霊の卵は実に興味深い。
彼女の話によると、スパイルの感情のエネルギーが満ちたとき、主に姿を見せると。
つまり、彼は近々、精霊術師になるという事だ。
果たして、今の彼にはその、覚悟はあるのか?
「―問おう。汝は、精霊術師になる覚悟はできているのか?」
返答はなしとなるか。
それとも、まだ自覚を持てていないと判断すべきであろう。
だが、私はそんな君を心から尊敬している。
だから、ミケラも君に精霊を託せる信頼感があったんだろうな。
大丈夫。誇れ。君は私の人生を変えてくれた恩人だ。
―その時だった。
「ケレスさん。俺、分からないんです。精霊術師になる資格があるかどうかを。これから、生まれてくるコイツに迷惑をかけたくないから、教えてください。自分にその資格があるのかを。」
「いい覚悟だ。でも、その前に私の話を聞いてほしい。だって君は僕に話してくれただろ?だから私にだって話す権利はあるはずだ。ゆっくりでいい。少しづつ、私を知ってほしいんだ。」
彼に迷いが見える。だが私は、そんな彼の肩に手を添えながら真剣に頼んだ。
それに応えるかのように彼は、私の顔をじっと見て、こう呟いた。
「わかりました。聞かせてください、ケレスさんの話を。互いに信頼を得るには、自分の事をきちんと伝えて理解してもらわないとダメですからね。」
「ありがとう。感謝する。では少し、長くなるかもしれないが付き合ってほしい。」
―こうして、ケレスさんは語りだした。
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ミケラの案内所を出ていった私が目指した先は、彼と初めてでった街。
そうー始りの地トレスだ。
私はそこで、急用の依頼が立て込み、忙がしかったんだ。
「お困りのようですね、お嬢さん。パトロール隊のケレスが今、到着しました。要件をお聞かせ願えますか?」
「あのね、ゲート付近で揉めてるプレイヤーさんがいて。怖くて近づけないの。」
どうやら、依頼主は害悪プレイヤーに対して、困っている様子であった。
「それはお困りですね。でも、もう大丈夫ですよ。この私がすぐに終わらせて見せましょう。」
「ほんと?ありがとう、お巡りさん!気をつけてね。」
少女は僕に手を振り、私を最後まで見届けてくれるようだ。
「そこの君。パトロール隊の者のだが、ゲート付近での揉め事は他のプレイヤーの迷惑になるので、悪いがそこをどいてはくれないだろうか?」
「ああん?パトロール隊。どこの誰だか知らないが、邪魔すんなら容赦はしないぜ。」
「なるほど。そう簡単には、動いてはくれませんか。ならば!」
私は彼に剣を振るった。そんな私に対して、反撃を仕掛けてくる。
別に私は彼を、傷つけたいとは思わない。
だって、そんな事をしたら。英雄に会わせる顔なんてないのだから。
「どうした、どうした!攻撃が全然当たってないぞ。」
「わからないのか。私はあなたを、傷つけるために剣を振るってるわけではないんだ。」
「はぁ?何言ってるんだ、お前。剣は武器だ。武器は人を貶すために使うもんだ。そうだろ?」
違う。違う、違う!
剣はそんなもののために、生まれてきたんじゃない。
ー人を、助けるために生まれたものだ。
「では君に、特別講師として、本来の扱い方を伝授しよう。」
「そんなもん、必要ない。」
「いや、ある。」
なんだよ、コイツは。
理屈が通じないだと?しかも、俺の講師になろうだなんてどうかしてるぜ。
頭がイカれてやがる。
「お前の根性には参るぜ。面倒くさいから降参。降参するよ。だからもう、剣はしまえ。」
やっと、口を聞いてくれる気になったか。正直言って、有り難い話だ。
「それで。おまえは俺にここをどけと、いいたいんだろ?いいぜ。どいてやるよ。」
「すまない、協力。感謝する。」
彼の敬意を払うために、私は剣で祈りを捧げた。
例え、どんなに不甲斐ない結末にたどり着いたとしても、一人ひとりに、感謝を伝えなければならない。
それが、正義への道を目指す者の心得だからだ。
それでは、依頼主のところに戻り、現状報告をするとしよう。
そのほうがきっと、彼女も安心するだろう。
「ただいま戻りました。害悪プレイヤーは無事に、排除をさせていただきましたので、安心してゲートに通ってくれて大丈夫ですよ。」
「ありがとう、お巡りさん!これでやっと、家に帰れる。」
「それは、よかったです。では、いってらっしゃいませ。」
少女は笑顔で手を振って、ゲートのに入り込み、目的地へと向かった。
さて、スパイルをミケラの案内所に置き去りにしてきてしまったのだが、大丈夫だろうか?
今からでも、彼に追いつくことは可能だと思われるが。
「あら、あなたは確か。スパイルさんと一緒に同行されていた方ですよね?」
「そうだが、君は一体。誰なんだ?」
「私は、トレスの案内ロイドのメイと申します。そして、こちらは姉のリナです。」
「はじめまして、警備員さん。メイの姉のリナよ。」
彼女は一体、どこで私たちとすれ違ったのだろうか?
疑問に思うことはあるが、話を聞いてみよう。
「なんだか、不思議そうな顔をされていますね。私はただ、あなたとスパイルさんが、受付所を一緒に出ていくのを見ていただけです。なので知らなくて当然ですよ。」
「スパイルは優しい人だったわ。ずっと、離ればなれになっていた私たちを。導いてくれたの。」
どうやら、一時的に彼女たちは彼とともに、旅をしていたようだね。
「では、君たちに質問だ。スパイルは次に、どこにいくと言っていたか分かるかな?」
「それは、存じておりません。ですが、スパイルさんはレプカさんと一緒に、ミティア・ベルク方面へ向かっていく様子が見受けられましたよ。試しに、訪れてみてはどうでしょうか?」
「彼との合流を望むのであれば、メイを信じなさい。メイは嘘はつかないわ。」
「わかった。協力。感謝する。」
そして私は、急いでミティア・ベルクへ向かう。
ゲート付近にたどり着いてから、何分か経過後に、私はスパイルと出くわしたんだ。
「ケレスさん!?どうして、ここにいるんですか?」
いやぁ~あの時の彼の驚いた顔は、いつ見ても忘れなれないよ。
そして、現在へ繋がったというわけだ。
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なるほどな。ケレスさんは、俺たちと別れている間。任務に行っていたんだ。
そして、驚くべきことに。メイとリナに、トレスで出会っていたということ。
偶然と、偶然が重なり合って、奇跡が起こったみたいな話だ。
「ケレスさん。色々と聞かせてくれて、ありがとうございます。すごいですね。誰かのために、そうやって剣を振る舞えるというのは、なかなかできないことですよ。」
「ありがとう。スパイル、君だって、僕みたいに剣を振るじゃないか。」
「そんな事、ないですよ。ケレスさんみたいにだれかを救えたことなんて、あまりないので。」
「そんなことはない。君はだって、双子の姉妹を救ってあげただろ?ならば、自信を持つべきだ。」
ケレスさんは真面目そうな顔で、俺を見つめてきた。
本当に彼は、優しい人だ。こんなにいい人に出会えることは、もはや運命といえるだろう。
そんな人の前で、くよくよしてたらみっともないから、気を取り直していこう。
「わかりました。自分に自信を持てるように努力をします。そして、立派な精霊術師になれるように、もっと頑張りたいです!」
うん。いい覚悟だよ、スパイル。
その気持ち、確かに受け取ったよ。
そして、その子もね。
「精霊の卵が、光だした!?でも、なんだか勇気が湧いてくるような感じがします。」
「それはきっと、その子が君の想いを受け取った証拠だよ。」
「そうか。ありがとな。早く、お前に会いたいよ。」
「ときが来ればきっと、その子に会えるだろう。」
俺たちは、温かい勇気を受け取りながら、精霊の卵が光っているのを見守っている。
「そうだ、ケレスさん!お願いがあるんだけど、聞いてくれますか?」
「君の願いであれば、聞こう。」
「えっと、トレスのバトルトライアルに出場してみたいんですけど、俺と同盟を組んでもらえませんか?」
「スパイル。同盟を結ぶのは構わないが、組む相手を決めるには。信頼してる相手を選ぶといい。」
「ですよね、なんかすみません。」
「いや、そんなことはない。私も、君と同盟を組みたかったからね。」
「本当ですか、なら…」
「だがしかし、君には私の過去を知ってもらう必要がある。同盟を組むためには、相手の事を知るということは必要になってくる。」
ケレスさんの過去。
ということは、パトロール隊になった経緯を知る。ということになるのだろうか?
安易に口に出してしまった俺も悪いけど、そこまで語るべきなのかはイマイチ、わからない。
「俺、同盟を組みたい気持ちは強いんです。だけど、他人の過去を明かさせてまでも、組ませたいというわけではなかったんです。ごめんなさい。」
「いいんだよ、スパイル。これは僕が、君に伝えたかったことだからさ。」
「どうしてケレスさんは、そこまでして俺と、組みたいんですか?」
「決めたから。この剣は君のために、存在するものだとわかったからね。」
「それは、つまり?」
「僕はこれから、君の騎士になる。だから、僕の話を知ってほしい。そのうえで、君が決めてほしい。」
なんだか、壮大な話になってきたな。
俺の騎士?ケレスさんは何を考えているのかが、全然わからない。
だけど、必死さだけは伝わってくる。
「わかりました。だったら聞かせてください。ケレスさんの過去の話を。」
「心得た。」
ースパイル。
時が来た。今、君に語り継ごう。僕がパトロール隊になった話を。
第3話「Episode:ケレス(前編)」(完)
次回第4話「Episode:ケレス(後編)」へ続く。




