第1話「ミケラさんの悩み事」
ミケラさんの案内所にたどり着いた俺は、ミケラさんの悩み事を解決しようとしていた。
「それでミケラさんはいったい、何に悩んでいるんですか?」
「聞いてちょうだい。近頃。精霊の卵を狙った悪党が案内所の付近をうろついているのよ。それで客足が減っちゃったわけ。」
「それは大変でしたね。悪党というと複数人近くいるイメージが多いですが、実際の所はどうなんですか?」
「最初からわかったら、苦労はしないわよ。だからあなたに頼んで見たの。」
難易度の高そうなミッションだが、ここまで来たら後を引くわけにはいかないな。
出来る限り、力になれるならやってみよう。
「わかりました。その依頼。引き受けます。まずはどうしたらいいですか?」
「そうだね。まずは聞き込みや情報集めから初めてみたらいいんじゃない?私は店番があるから悪いけど、動けそうにはないんだよ。」
「ミケラさんはそのままで大丈夫です。なんとかやってみます。」
さてと、情報を収集する為には一度、人口の多いトレスへ戻るとするか。
そこなら何か、わかるかもしれないしな。
案内所を後にした俺は、ゲートの入り口へ向かうため先を急ぐ。
(今思うと、足場の悪い道だな。これちゃんと道路整備はしてるのか?)
客足が戻れば多分、この道も整備されるだろうし、ミッションをこなさない限りは難しそうだな。
小走りで向かうこと約3分。俺はゲートの入り口へたどり着いた。
(よし、ここだな。それじゃあ早速!ゲート・オープン!)
ジャンプしてゲートに入り込むと、ゲート用のシステムロイドが、スパイルの身体をスキャンする。
「…スキャン完了。プレイヤー名はスパイル。現在地はミケラの案内所付近。これより、始まりの地トレスへの移動を実行しますか?」
「ああ、よろしく頼んだぜ!」
「承知しました。プレイヤー名スパイルを始まりの地トレスへ、転送します。転送中はゲートから出ないようにしてください。」
転送プロトコル起動…転送先、始まりの地トレス。受信の応答を願います。
チェック完了。トレスの者へスパイルの身柄を受け渡すことに成功。
「…転送完了。始まりの地トレスに到着しました。ご利用。ありがとうございました。」
「おう、ありがとうな!」
ゲートから出ると、トレスの街並みの風景が広がっている。
「んじゃあ、手っとり早く案内ロイドにでも聞いてみるか。」
前回、スパイルを案内したロイドを探す為、トレスを歩き回っている。
「おっかしーな、アイツ、どこにいっちゃったんだろう?結構便利で、頼りにしてたのにな。」
周りをキョロキョロしながら探していると、前方の歩行者らしき人にぶつかってしまった。
「…イタタって、大丈夫ですか?あの、お怪我はありませんか。」
「お客様の方こそ、怪我はございませんでしたか?」
「あれ?もしかして君は、違う個体のロボットなのか?」
「はい。私は双子の妹。メイと申します。」
「メイか。いい名前だな。俺はスパイルだ。よろしくな!」
彼女の名前は【メイ】双子の妹。あの子の話によると、姉の方は【リナ】というらしい。
彼女たちは、俺を案内した子とは違う個体になり、その個体の名前は【無名】だとか。
上下関係が厳しく、ロボット三原則によれば、プレイヤー自信を守る方を優先し、彼女たちの身の安全は二の次に考えている不思議なロボットだ。
「なあ、メイ。その無名の個体のロボットを探しているんだ。何か情報を知らないか?」
「承知致しました。お客様と接触したことのある者との通信を行います。処理には時間がかかりますので、しばらくお待ちくださいませ。」
受信中…応答を求めています。プレイヤースパイルとの接触を確認できた者は今、どこにいますか?
お客様がお待ちになられています。至急、返事をするようお願いします。
…信号をキャッチ。協力、感謝します。
「お客様。お待たせしました。ご要望の個体との連絡が取れた為、通信を行い、位置情報を共有したのでまもなく、到着する見込みとなっています。待ち時間の間、何かなさいますか?」
「いいや、大丈夫だ。それよりも、君たちは何にも感じたりしないのか?」
「何がでしょうか?」
「感情だよ。ただ、案内してるだけじゃつまらないだろ?」
「いいえ、そんな事はございませんよ。」
ふ~ん。なんだか、嫌な感じだな。
ただ命令に従って動いてるだけじゃ、面白くないと思うのは俺だけなのかな…
「私たちに、同情しているのですか?」
「まあ、そんなところかな。」
「スパイルさんは、優しい方なのですね。」
「そうか?」
「はい。」
俺たちが立ち話をして待っていると、以前あった案内ロイドがこちらへやってくる。
「お客様。ご要望の個体が到着しました。これで、案内を終了します。」
「おい、待て!」
「はい?」
「良かったらだが、俺と一緒に冒険をしにいかないか?」
「とてもいい案ですね。ですが残念ながら私は、トレス専用の案内人です。別の案内人が、別の担当場所へ行くと違反になり、廃棄されてしまうのです。だけど、悲しまないでください。私たちにあいたければ、いつでもトレスへ戻ってきてくださいね。」
メイは役目を終え、俺たちのそばから離れてしまった。
また俺は、誰かの役にたてなかったのか。
「…プレイヤー情報をスキャン中。スキャン完了。スパイル様。お待たせしました。ご用件は?」
「ミケラさんの案内所付近で、怪しい人物の動きがないかを調べてほしい。」
「…読み込み失敗。ミケラ案内所付近の連絡通信は担当外な為、調査は不可となります。」
「じゃあそこの案内人は誰何だ?」
「ミケラ案内所付近の案内人は、リナという名の者になります。」
タンマ!
双子の姉の名前だよな、それ。妹はトレスで、姉がミケラさんの案内所って、どういう事だよ!?
頭おかしいんじゃないのか!
「頼む!メイをまた、ここに呼んでほしい。確認したい事があるんだ。」
「承知致しました。個体名メイの受信を追跡中…しばらくお待ちください。」
待ってろよ、メイ!今、姉ちゃんに合わせてやるからよ!
「エラー、エラー。個体名メイからの受信が拒否されました。他にはございますか?」
「ふざけるな!こうなったらもう、俺が探しにいくしかなさそうだな。」
…お人好しにも、ほどがありますよ、スパイル様。
私たち姉妹の事は、お忘れください。さようなら、心優しき旅の人。
「待ってくれ、メイ!」
「スパイル様、どうしてわかったんですか?」
「そりゃ、街中ダッシュで探し回れば見つかるさ。」
「その割には、疲れが見えませんが。」
「どうでもいいだろ、そんな事。今はお前の方が優先だ!」
「私のことはもう、ほっといてください。」
「いいや、いやだな!」
「ム~、このお人好し!」
「あはは、他にも表情変化ができるじゃねえか。」
「笑わないでください。さようなら。」
冷たい妹だな。俺の姉ちゃんとは、大違いだ。
でも、やっぱほっておけやしない。
わかるんだ。お前のその、寂しいって気持ちが。
イヤだよな、二度と家族にあえないんなんてさ。
「さようなら。なんて、寂しい事をいうんじゃねよ。そんな事をしたら、俺は許さない。」
「離してください。あなたはまだ、私たちと出会って間もないんですよ?それなのに…」
「俺さ、家族全員亡くなっちまったんだよ。高校生の頃に。だからわかるんだ。おまえ、本当はリナに今すぐにでもあいたいんだろ?だったら、あいに行けよ。俺が許可してやる。」
「随分と偉そうな態度をなさるんですね。でも。リナにあいたい気持ちは消えていません。もし、今。あいにいっていいとおっしゃるのであれば、立場を降りてでも、一緒にいかせてください。」
真剣な目を向けて、俺を見つめてくるメイ。
俺は彼女の願いを叶えてあげたいと思った。
「わかった。行こう、メイ。ミケラさんの案内所付近へ。」
「はい!」
こうして俺たちは、一時的に共に行動をすることになった。
「そうだ、君には立派な名前を授けよう。そうだな…レプカ!なんてどうだ?」
「命令受信…個体名無名から新たに、レプカへと名付けられました。よって、あなたをこれから主と、お呼びします。」
「どういう事だ?」
「案内人に名を与えた者は、その個体を自分の者にできる権利が与えられます。なのでレプカさんは、あなたの案内ロボットとしてついてきますよ。」
なるほどな、そういう仕組みだったのか。
まあ、これからよろしくなレプカ。
「それじゃあ、行こう。目指すはミケラさんの案内所だ!」
俺たちは再び、ミケラさんの案内所付近のゲートへと歩き出す。
「姉さんに会える日が来るなんて、夢にも思いませんでした。ありがとうございます。スパイル様。」
「いや、まだあってないだろ?ほら、着いたぜ。ミケラさんの案内所付近のゲートだ。」
「無事に、通れるでしょうか?」
「…個体名メイをスキャン開始。スキャン完了。調査結果。通行可能と思われます。」
「レプカ!調べてくれたのか、偉いぞ。」
「では、まいりましょう。ミケラの案内所に。」
ゲートの中に入った俺たちは、レプカと同じく、スキャン調査が入り、ミケラさんの案内所付近へと、転送されていった。
「目的地、ミケラの案内所付近。到着を確認。今後、どうしますか?」
「とりあえず、リナを探しつつ、ミケラさんの悩み事を解決しなければならないんだよな。」
「ミケラさんの困り事ですか?ご内容はどんな感じでしょうか。」
「どうやら、案内所付近に精霊の卵を狙う。怪しい連中がうろついているらしい。」
「怪しい人物がいないか、調査を開始…」
「待て、敵にバレたらまずい。いったん、聞き込みをしよう。」
俺たちは案内所から離れる為、少し遠くまで歩くことにした。
「なあ、メイ。リナはミケラさんの案内所付近のどこらへんにいるんだ?」
「姉さんの居場所は特定できません。受信は前から途切れています。」
「そっか、無事だといいな。」
「姉さんならきっと、大丈夫です。だって、私より強いですから。」
「その…姉さんは、力強さでか?」
「はい、そうです。」
姉さんどんだけ、強いんだよ。できるなら、あいたくないかも…
「随分と歩いたが、プレイヤー情報の受信を確認できない。また、リナという個体名の位置情報も、取得不可能。状況は壊滅的。」
「そんな事はありませんよ。レプカさんの情報は少しだけ、古いんです。なので今、アップデートを行いますね。」
「サンキュー、メイ。」
メイとレプカは、アップデート情報を交換し、最新型へとアップグレードした。
「アップデートの情報を確認。アップデート完了。」
「よし、準備万能だな!」
レプカのアップデートを終えて、スパイルたちは人気のない路地へと入り込む。
「薄暗くて気味の悪い路地ですね。」
「路地裏というと、嫌な予感しかないんだよな…」
「背後に敵の信号を確認。戦闘モードに切り替え、次はどうしますか?」
「おっと、噂をすれば何チャラとやらか?」
「出てきてください!あなたが方が、ミケラさんの案内所付近をうろつく、悪者ですか?」
スパイルたちは、警戒心を強めて戦闘モードに入る。
そして、薄暗い路地から出てきた人物は…
「フードを被ってて、姿が見えないな…」
「エラー、エラー。生態認証に失敗しました。」
「私の方でも、確認できませんでした。面目ないです。」
「仕方ないだろ。それよりも、お前の目的は何なんだ?」
フードを被った謎の男は、何も答えぬまま、暗闇の世界へ姿をくらました。
「逃げられてしまいましたね。どうしますか?」
「いったん、ミケラさんに報告をしに行こう。多分だけど、心配してるだろうし。」
「ミケラの案内所まで、ナビゲーションシステムを発動させますか?」
「そうだな、頼んだぞ。レプカ。」
スパイルたちは、レプカの後をついていきながら、ミケラの案内所へ向かいだした。
「メイ。レプカ。ありがとな。お前たちがいると心強いよ。」
「そんな事はありませんよ。まだ、何もお役に立ててないじゃないですか。」
「いいや、ちゃんと役に立ってるよ。」
「スパイル、スパイル!」
「あはは、何だよ。レプカ。甘えん坊さんか?」
「子は主に懐くものです。きっと、レプカさんはスパイルさんを、親のように思っているんですよ。」
「なんか、かわいいな。」
何だかんだいって、話しているうちに俺たちは、ミケラの案内所へたどり着いた。
「ミケラさん、戻りました。」
「あら、意外と早かったわね。どう?何かわかった感じ。」
「それが、何もわからなかったんです。だけど、謎の怪しい人物が路地をうろついていました。」
「はい、私たちもはっきりとこの目で見ました。」
「あなたたちは、トレスの案内ロボット。どうしてここにいるの?」
「スパイル!主、主。」
「私はこの地に、姉さんがいると聞いて来ました。名はリナと言います。聞き覚えはありませんか?」
「リナねえ…悪いけど、私はわからないな。だけど、助かった。お礼にこれを受け取って。」
スパイルは、ミケラから精霊の卵を受け取る。
「精霊の卵。いいんですか?」
「ええ。精霊の卵はね、あなたの感情のエネルギーで育つのよ。時がくれば、あなたの前に姿を見せてくれるわよ。大事にしてあげてね。」
「すごいです。精霊の卵。初めて見ました。これは貴重なレアアイテムですよ。どうして、ミケラさんがこれを持っていたのですか?」
「入手経路は企業秘密。それよりも、君たちは相方を探しにいってあげてよ。探してるんでしょ?」
「はい、ミケラさん。色々とお世話になりました。精霊の卵。大切に育てます!それじゃあ、また。」
「うん、気をつけてね。いってらっしゃい。困ったら、いつでもおいで!」
スパイルたちは、ミケラに手を振りながら案内所を出て行った。
「ミケラさん、優しい方でしたね。今度、姉さんと合流したらまた、訪れたいです。」
「いいんじゃねえのか。きっと、ミケラさんも喜ぶと思うよ。」
「レプカも行く、レプカも行く!」
「よし、ミケラさんの悩み事は解決できた事だし。次はメイの姉さん探しだな。」
「スパイルさん、ありがとうございます。引き続き、動向しますね。」
「おう、よろしくな!」
ミケラの悩み事を解決したスパイルたちは、メイの姉【リナ】を探す旅を続ける。
果たして、無事にリナと再会をすることができるのだろうか?




