第2話 六年後……
「んっ……」
私が起きたのは早朝だった。
時計を確認すると時間は五時半。
まだ部屋が寒く、窓が結露している冬の時期だ。
「……三十分も遅刻か。
まだまだ修行不足だな……」
そこは悔しいが、悔しがっている時間もない。
「……今日は三十分だな。
……《ウォーター》」
部屋のコップを持ってウォーターで喉を潤す。
そして、そのまま瞑想に入る。
「……スゥー」
魔術師にとって必要なものは魔法を使うための魔力と、それを制御するための集中力。
そのどちらかが欠けていても魔法を使うことはできない。
瞑想はそのどちらも伸ばすことができる魔術師にとって理想な修行方法だ。
だけど、私はまだ子どもで睡眠が優先しているのか、いつも起きようと思っている時間を過ぎてしまう。
「……ふぅー」
私が魔法を使えるようになってから六年。
あれから色々と成長した。
母さんのお願いした通り他の子が魔法を使えるようになるまで魔法を使うことができることを内緒にしていた。
その間にシャイン以外の原初魔法を扱うことができるようになった。
それだけではなく、基本魔法も扱うことができている。
母さん曰く、私ぐらいの年齢の子が使うにはまだまだ早い筈のようだ。
「……このくらいでいいか」
三十分が経過し、私は目を開けた。
「さて……」
残りの時間は予習に使った。
本を読みたいが、学業も嫌いではないから疎かにする理由もない。
教科書を開き、一時間勉強する。
時間が過ぎ、両親が起き出す音が聞こえた。
六時四十分くらい。
そこで終わらずに残り二十分を勉強に使う。
「……そろそろか」
七時になり、勉強を終え、今日必要な教科書、宿題をカバンにしまう。
そして、忘れ物はないかを確認する。
「……ないな」
忘れ物がないことを確認してから、今日読んでおきたい本をカバンに入れる。
そして、一階に降りた。
「おはよう、母さん」
「おはようサイレン」
母さん、カレン・マジャンは私に笑顔で挨拶してくれた。
「今日も早起きね」
「まだまだだ……
また遅刻した」
「あなたくらいの子どもが早起きできる時点ですごいことよ。
ほら、席について」
そして、私の父【ダイン・マジャン】を欠伸をして起きてきた。
「……おはよう、父さん」
「……おはよう、サイレン」
私の父さんは戦士系冒険者を指導する教官のような人で私以上に冷静沈着な男だ。
正直、私がクールなのも喋り方も父さん譲りだと私でも思う。
「それじゃあ、朝食にしましょうか」
「ああ……」
今日の朝食はご飯と味噌汁、たくあん、玉子焼きだ。
「いただきます」
「「……いただきます」」
玉子焼きを最初に食べる。
玉子焼きはホクホクしてて出汁も入っていて美味しかった。
「サイレン、今日も訓練場に寄るの?」
母さんは確認のために私に話しかけた。
「ああ……」
「……あれの練習ね?」
「……そうだ」
母さんは少し困ったような顔になる。
「サイレン……
前にも言ったけどあれはあなたにとっては早過ぎる魔法よ。
それが使えなかったとしてもあなたは十分に魔法の才能があって他の子よりもダントツで早いわ。
だから、慌てないでいいのよ?」
「……慌ててない。
……使いたいから練習をしているんだ」
母さんが言っている魔法は《シャイニング・バーニング》だ。
バーニング系魔法。
属性攻撃魔法の中では基本的な魔法で一撃の威力は高い、魔術師にとって必殺魔法の基本形だ。
それを使えるようになれば周囲から一人前の魔術師として認められる。
それだけではなく、訓練用の杖で使える唯一の上級魔法だ。
唯一とはいうが、あくまで理論上であり他の人からは机上の空論扱いされるレベルだ。
それを今練習するよりも自分だけの杖を手に入れるまで他の魔法を練習して習得する方がいいと言われる。
「……それは自慢するためか?」
父さんも静かに聞いてくる。
「……違う。
魔法は使い続けた時間によって練度が変わってくる。
今、シャイニング・バーニングを完成させて練習すれば私の夢に役立つ筈だ」
私の夢は冒険者となり、仲間と一緒に冒険すること。
そのためにも魔法を練習しておきたい。
「……サイレンの夢か。
冒険者になって世界を仲間と共に旅をすることだな」
「ああ……
未来の仲間のためにも私は強くなりたい」
「……ならば、止めることはできないな」
「本当にその一途さは誰に似たのかしら?」
「……母さんだろ」
「あっ、やっぱり?」
「……どういうことだ?」
「……母さん、ポーション屋をやっているだろ」
「ああ……」
「……母さんが薬を作り始めたのはお前と同じ年齢くらいだ」
「……私と?」
「そう。
他の子と遊ばずに薬草探したり簡単な薬を調合したりとかね」
「……自分の部屋を爆破したこともあっただろ」
「あったわ〜
懐かしいわね」
「……マジか」
「もちろん、私も今の私みたいに注意されることも多かったわ。
でも、私は薬を作ることはやめなかった」
「……俺はその後始末をよくした」
「そうね。
お父さんに感謝してるわ」
「……父さんとはその時に顔見知りだったのか」
「幼馴染ね」
「……幼馴染。
……私にそういう相手はいないな」
「……今なら私を注意していた人達の気持ちが少しわかるわ。
純粋に心配なのよ。
でも、だからこそ止められないこともよくわかっている。
私が止まらなかったもの。
私が薬に夢中なら、サイレンは魔法に夢中ね」
「……ああ、そうだ。
……私は魔法が大好きだ。
愛していると言ってもいいくらいだ」
「本当に似たもの同士ね」
「……私は父さんと母さんの娘だからな」
「……そうね。
もう止めないわ。
その代わりにそう言った以上はやり遂げなさい。
私ができないと言ったことだけど……
シャイニング・バーニング使えるようになって、私もみんなも驚かせてみなさい」
「……約束する。
ご馳走さま」
私は食器をキッチンに持って行く。
そのまま洗面台に向かった。
髪を濡らしてから寝癖を整える。
歯を磨き、顔も洗う。
「……よし」
私が洗面台を出ると入れ替わりに父さんも入った。
二階の私の部屋で着替えをする。
私の学校の制服は女子は黒いローブだ。
これも汚れが目立たないから悪くないが、白い服の方が好みだ。
そう思いながら着替える。
そして、再度忘れ物はないかを確認する。
「……それじゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、サイレン」




