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鬼になった同志  作者: マーたん


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最終話

ラスト

最終話 「鬼になった同志」


朝日が昇っていた。


長きに渡る戦いの果て。


鬼王は滅び、鬼島は崩壊を始めていた。


燃え上がる鬼王城。


崩れゆく大地。


そして、その中心に二人はいた。


カエデ。


そして――ザガン。


かつて里を守ることを誓った同志。


鬼となり、別々の道を歩み、何度も運命に引き裂かれた二人。


ザガンの身体は、既に限界だった。


鬼王との最後の戦いで、その命は燃え尽きようとしていた。


「終わったな」


ザガンは笑った。


鬼になってから初めて見せる、穏やかな笑顔だった。


カエデの目から涙が零れる。


「バカ……」


「何よ……」


「何でそんな顔してるのよ……」


ザガンは空を見上げた。


「朝日なんて、久しぶりに見た」


赤い目は消えていた。


角もない。


そこにいるのは、鬼ではない。


かつてのザガンだった。


「悪いな」


「いっぱい迷惑かけた」


「いっぱい泣かせた」


「いっぱい待たせた」


カエデは首を振る。


「そんなのどうでもいい!」


「帰るわよ!」


「一緒に!」


「またみんなで……!」


ザガンは優しく笑った。


「帰る場所、残ってるかな」


「作ればいい!」


「何もなくても!」


「何度でも!」


「だから!」


「死ぬとか言わないでよ!」


ザガンは静かに目を閉じた。


風が吹く。


夏の匂い。


遠くで波の音が聞こえる。


「あの頃みたいだな」


「夕方まで訓練して」


「くだらないことで喧嘩して」


「未来の話して」


「平和だった」


カエデは泣きながら笑った。


「弱かったけどね」


「お前、よく負けてたし」


「うるさい」


二人は笑った。


昔のように。


本当に昔のように。


そして。


「カエデ」


「なに?」


「生きろ」


「……嫌」


「頼む」


「嫌」


「泣くな」


「泣くわよ!」


「泣いてやる!」


「だから……いなくならないで……」


ザガンは最後に微笑んだ。


「ありがとう」


その言葉と共に。


身体が光になった。


暖かな光。


優しい光。


鬼の力も。


呪いも。


苦しみも。


全てを置いて。


ザガンは空へ還っていった。


「ザガンーーーー!!」


カエデの叫びが朝空に響く。


返事はない。


ただ、優しい風が頬を撫でた。


その日。


鬼島は海へ沈んだ。


鬼王軍も。


鬼たちの時代も。


全て終わった。


それから数年後――。


山間の小さな里。


子供たちの笑い声。


夏の川。


夕焼け。


そこには一人の女性剣士がいた。


「先生!」


「また昔の話を聞かせて!」


白い髪を揺らしながら、カエデは微笑む。


「しょうがないわね」


「昔々、人と鬼が戦っていた頃のお話よ」


「そこに、とてもお人好しで」


「とてもバカで」


「でも誰よりも優しい男がいました」


空を見上げる。


夏の風が吹く。


雲が流れる。


「見てる?」


「ザガン」


「私はちゃんと生きてる」


「約束、守ってるよ」


空の向こう。


どこかで。


懐かしい声が聞こえた気がした。


『おう』


カエデは笑った。


涙を流しながら。


笑った。




「鬼になった同志」


長き旅路の果て。


鬼となった者と、それを救おうとした者の物語は終わる。


けれど、絆は終わらない。


誰かを想う心がある限り。


彼らの物語は、きっと人々の中で生き続ける。

またお会いしましょう

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