ケチャップの試食会
家令のノア様たちに話の流れでオークの肉を食べてもらう事になり、それを聞いていたシスターが人数分の豚汁を運んできてくれた。
「お熱いのでお気を付け下さい」
そう言って、シスターはテーブルに座る四人の前に配膳をしていく。
「「おおっ!」」「こんなに肉を入れてもらっては、後から来た者の分がなくなってしまうのではないか?」
それを見た四人が肉の多さに驚いていた。自分たちが特別扱いされたと思ったのか、恐縮していたので問題ないことを伝えてあげた。
「かなりの量を作ったので、心配をなさらずにお食べ下さい!」
四人はお礼を言うとすぐさま食べ始めた。よく考えたら従者が一緒に食べるっておかしくない? 警護とかしないの? どうやらその辺りは大分ゆるいようだ。スープをスプーンで掬い口に運び、全員が目を見開く。
「何と濃厚な味なのだろう! 王都の祝宴でも食べたことがない」
ノア様の言葉に従者たちも興奮気味に答える。
「おっしゃる通りです! 肉の旨さもさることながら、何種類もの食材を使っていて、色々な食材の旨味が味わえて何と贅沢なんでしょう」「この不思議な食感の白い変わった食材は何でしょう?」
「そちらはケイ様がお作りになった豆腐という食べ物です」
シスターがそう答えると、ノア様が驚いてこちらに向き直る。
「料理をされるのですか? ……やはり王女の可能性は消えたか、だとすると……」
後半は声が小さくて何を言っているか分からなかったが、どうやら料理をする事に驚いたらしい。
「一人旅ですからね、料理ぐらいできないと大変ですから」
そう答えるとボソボソと何か言っていたので聞き返すと『あ、いや、オークの肉を譲っていただけないかと思いまして、もちろん代金はお支払いいたします』と答えた。多分『まだ可能性は』何とかって言っていたはずだけど、本当にオークの肉かの判断に迷っているのかな?
「心配であれば、鑑定をすればオークの肉だとわかるはずですよ! 私が保証しますと言っても信じては貰えないでしょうから……」
「いえ、決して信じていないわけではないのですが……」
まあ、確かに子供が倒せる魔物じゃないみたいだし、信じられなくても仕方がないか……。豚汁を食べ終わると従者の一人がオークとの遭遇と討伐の報告に加え、オレの訪問を知らせる為に先触れとして出発するらしい。その時に一緒に肉を持って帰りたいという事だったので、部屋から十キロくらい持ってきて背の低い方の従者に渡した。どうやらこの人が先触れとして出発するらしい。
「あっ! 帰りの道中でお腹すいたら食べて下さい!」
可哀想なので弁当を渡してあげると、暗かった顔がパッと明るくなった。やはりこの人も食べたかったのだろう。形式通りに遠慮してきたので『そうですか、じゃあ!』と意地悪をして弁当を取り上げると、この世の終わりのような顔をしていたので、慌てて『そんな顔しないで下さい! 冗談ですよ! 気を付けて帰って下さいね』といって弁当を渡してあげた。
「いや、これは、決して…………ありがとうございます。ケイ様もお人が悪い」
彼が真っ赤な顔でお礼を言うと周りから笑い声が上がる。ノア様と少し話した後、荷物を馬にのせると挨拶をして彼は出発していった。そして、しばらく遠ざかる従者を眺めたのちにノア様が料金を支払ってくれたのだが、渡されたのは何と金貨二枚であった。
「えっ! 金貨? え~と、確か相場だと大銀貨九枚くらいなので一枚お返しして、後は大銀貨一枚のお返しですね。ちょっと待って下さいね」
そう言ってまずは金貨を一枚を返そうとすると、ノア様が手のひらをこちらに向けそれを制止する。
「貴重なオークの肉を譲っていただいたのに、そんな買い叩くような真似をしたらレンドール男爵領の沽券に関わります」
そして商人を目指しているなら通り相場で売るのではなく、どれだけ高く売り利益をあげられるか、どのように搾り取るかを考えた方がいいとも忠告された。まあ、頷ける部分もあるが搾り取りたい訳ではないんだよね。でも、くれるって言うんだから貰っちゃおう。
「ご忠告ありがとうございます! では、有難くいただきますね! 後、先程の従者さんに渡したものと一緒ですが、よろしかったらどうぞ!」
三人にも弁当を渡す。結局オークの肉の代金は鑑定の倍以上も貰っちゃったよ! 全員に弁当を配ってもお釣りがくるな……。弁当と豚汁は無料でいいか。
「そうだ! こちらもお持ち下さい。神父さまもシスターもどうぞ! 子供たちも並んで~! 一枚ずつ取って。この後の催し物で使うので、なくさないようにお願いします」
全員に渡し子供たちにも何に使うか聞かれたが、後のお楽しみと秘密にしておいた。
「それでは、私は外に出て用意しますね。お酒も後で配るので、ノア様にはその時に乾杯の挨拶をお願いできますか?」
ノア様は快く引き受けてくれた。
♦ ♦ ♦ ♦
「聖女さま! 少し早すぎたかね?」
声の方に振り返るとトマトのおばあちゃんが来ていた。
「丁度よかった! 袋に用意しておいたから、持っていってください」
おばあちゃんは受け取った袋をまじまじと見ていた。
「この袋は何だい? まさか紙かい? もの凄く高価だと聞くけど、袋に使うなんて流石お貴族様だね!」
「意外と丈夫だし軽いから持ち帰るにはいいかと思って! 中に色々入っているからお腹が減ってたらすぐに食べてもいいし、器が入っていると思うんだけど、その器をシスターの所に持っていけばスープがもらえるから良かったらどうぞ」
「何だか、あたしの持ってきた物じゃ釣り合わないね」
「持ってきてくれたんだ。みせてみせて!」
カゴの中身を見せてもらうとかなりの数のハーブが入っていた。
「いい匂い。シャンプーとかによさそう! おっ! ミントもある! 逆にいいの? こんなに沢山?」
そう聞くと山ほど生えてるから、幾らでも大丈夫だと笑っていた。
「ありがとう! そうだ! あの赤い実で調味料を作ったよ! とりあえず、このソーセージに付けて食べてみて感想をきかせてよ!」
焼き台に乗っていたソーセージを切って、おばあちゃんに渡してあげる。
「こんなおいしい腸詰、長年生きてるけど初めてだよ」
おばあちゃんはケチャップはそっちのけで、ソーセージに関心がいってしまった。
「違う違う! 調味料の感想を聞かせてよ」
おばあちゃんは顔を赤くして『そうだったね』と恥ずかしそうに呟いた。二人で笑って話していると子供たちが集まって来たので、ケチャップの試食会は子供たちも加わり村の人たちが集まるまで続いた。
〇お金
銅貨 10円
大銅貨 100円
銀貨 1000円
大銀貨 10000円
金貨 100000円
大金貨 1000000円
白金貨 10000000円




