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赤いバンダナ


 ミドリンに腕輪を渡すと感激のあまり倒れてしまった。ミドリンの介抱はゴブリンたちに任せて、次は斧の加工に取り掛かる。


「ミドリンはお願いね! みんなは斧の素材で作れる物で何が欲しいかな? 出来ればみんなで使える物がいいと思うんだけど、思いついたゴブリンさんは手を挙げて下さい!」


 すると全員が一斉に考え始めたが、一人のゴブリンが素早く手を挙げた。


「はい! そこのゴブリンさん!」


 手を挙げたゴブリンに答えをうながす。


「ケイ様! 私たちは金属加工を得意としていますが、装飾などの美しく加工する技術を苦手としています。ですから、お手本となる装飾がされたツルハシを作っていただけないでしょうか?」


 それを聞いたゴブリンたちから歓声が上がる! 


「「「おおお~っ!」」」「それはいい!」「ギギィ~~!」


 『ギギィ~~!』の意味が知りたい所だが、もっと気になる金属加工の話を聞いてみる。


「金属加工って具体的にどんな事が出来るの?」


「単一ではもろい金属を他の物と合わせて強度を上げたり、錆びづらくしたりする事が出来ます」


「凄いね! ゴブリンさんたちの種族スキルだよね! 合金が作れるって事だ!」


 みんなが褒められてクネクネしている中、手を挙げたゴブリンと話を続ける。


「流石はケイ様! 知っておられるのですね! 合金という言葉は初めて聞きましたが……」


 その言葉に浅い知識で答えてみると、ゴブリンたちは感動していた。


「なるほど、金属をあわせるから合金ですか! これから我々も使わせていただきます」


「どうぞ、どうぞ! あっ! だったらこの鉄の斧を鉄の延べ棒にしたら鋼にできるのかな?」


「お任せください! おい!」


 鉄の延べ棒をいくつか作りゴブリンたちに渡すと、それを担いで急いで走り去ってしまった。


「えっ!」


 話していたゴブリンに目を向けると、洞窟内の加工施設に持って行ったと教えてくれた。あっ! 魔法じゃないのか。


「じゃあ! その間にこの布を使って作りたい物があるんだけど、赤い色を付ける材料って何があるのかな?」


「少々お待ち下さい! おい!」


 その声に反応した何人かのゴブリンたちは、返事をすると森の中へと消えて行った。どうやらこの指示を出しているゴブリンが、族長であるミドリンの次に偉いようだ。


「時間かかりそうかな? そろそろ帰らないとマズいだけど……」


「では夜には鋼も仕上がると思いますので、その時にお届けに参ります。何か必要な物がございましたら、お持ちしますが何か他にはございますか?」


「金属や鉱石に詳しいんだよね! じゃあ、いくつか欲しい物があるんだけど、手に入りそうだったらお願いできるかな?」


 快く引き受けてくれたので、いくつか欲しい鉱石をお願いしておく。


「でも結構な重量だよね? どうやって持ってくるの? 意外と遠いよ?」


 聞いてみると、普通に担いでくると言う。


「えっ! 大変だよ! そうだ! ちょっと待ってて!」  


 そう言うと木を切り倒して、リアカーをゴブリンサイズで作ってみた。


「ゴムがあればタイヤも作れたんだけど……。とりあえずこんな感じでどうかな?」


 リアカーを見たゴブリンたちは、また固まってしまってしまう。


「これは一体……」


「いや、普通に荷物をのせて運ぶものだよ! こんな感じで」


 興味津々なゴブリンたちにリアカーの実演や説明をして、ゴブリンたちにもリアカーを引いてもらったりして使い心地を試してもらう。どうやら種族的にこういう物を作るのが好きらしく、構造を知るために這いつくばって下から観察している者までいるほどだ。知っている範囲で構造について話をしていると、手に赤い木の実や鉱石を持ったゴブリンたちが帰ってきたので、質問はそこで一旦、打ち切りとなった。


「ケイさま! 只今、戻りました。こちらの木の実や鉱石を持ってきたのですが、いかがでしょうか?」


「わぁ、いっぱい取って来てくれたね~。ありがとう! じゃあ、両方使ってみて良さそうな方にしよう!」


 試しに作ってみると、鉱石で作った方が鮮やかな赤で、木の実の方は朱色だろうか? 


「鉱石の方が鮮やかでいいかな! どう?」


 それを聞いて、何故かみんなが暗い顔をしている事に気が付く。


「私たちのような醜いものが、このような美しい布を持つ事は許されるのでしょうか?」


「みんなは、醜くなんかないよ! それに布を持つのに誰の許しがいるの? 持ちたいなら持てばいいよ! 何か言ってくる奴がいたらオレが文句を言ってやるよ!」


「「「ありがとうございます!」」」「ありがとうございます! ありがとうございます!」「ギギィ~~!」


 全員がおでこを地面に付け、土下座状態になってしまう。悪夢再びである。


「ハイハイ! そういうの無し! 並んで~! 渡していくよ~」


 手早く人数分のバンダナを作り渡していく。大げさすぎるお礼を受けながら全員に渡し終えて周りを見回すと、みんな布をどうしていいか分からない様子で大事そうに持っていた。なんだか、かわいい。


「そうだね! こんな感じにつけてくれるといいかな」


 いくつか実演して巻き方を教えてあげる。


「今日は好きな巻き方でいいけど、役割ごとに巻く場所を変えても面白いかもね。後は怪我の時に使ったり、毒を吸わないように口元に巻いたり、自分たちで色々使い方を見つけていってよ!」


「ありがとうございます! 大事に使わせていただきます」「「「ありがとうございます」」」


 オレが首にバンダナを巻いたままだったせいか、全員首に巻いていた。


「後はミドリンと鋼を作ってる人の分があればいいかな? あっ! あとミドリンの介抱してる人の分もか」


 人数を聞いてバンダナを作ると代表のゴブリンに渡しておく。


「あと余った分も、何かに使って! はい!」


 残りの分も全部、渡しておく。オークの腰巻なんかいらないしね……。


「じゃあそろそろ帰るね! 多分、あまり遅くなければ教会の近くの広場で催し物をしてるから、その辺に来てくれれば多分気付けると思う」


「教会ですか……」


「もし嫌だったら明日の朝にまた来るからいいよ」


「いえ! 大丈夫です! 今からケイ様をお送りしていく時に、運ぶ場所を決めておけば確実かと」


「えっ! いいよ! 一人で帰れるし!」


「オークの肉と白い石はどうやって持って帰るのですか?」


「あっ! そうか!」


 【秘密の部屋】は見せない方がいいかな? リアカーで運んでもらうか!


「じゃあ! お願いしようかな!」


「かしこまりました」


 ゴブリン四人がリアカーを運ぶのと警護にわかれて、送ってくれることになった。


「じゃあ、ミドリンや他のみんなによろしくね」


 そう言って手を振りみんなの見送りの中、死の大地を後にした。

 

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