真白レア
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わたしは待っていた。
意識を取り戻してからずっと、誰かを待っていた。
それが誰なのかは分からない。
分からないけど、わたしは待ち続ける。
今日もこの広い施設でたった一人、する相手もいないのにチェスセットをいじりながら待ち続けている。
悲観はしていない。こうやって待ち続けていれば、いつかは会える。そんな気がするから。
コンコンコン。
そして、そういうものはいつだって唐突にやってくる。
跳ねる心臓。一瞬、呼吸が止まる。
きっと、わたしが待ち続けていた人はこの扉の向こう側にいる。そんな予感がした。
息を整え、心の準備をしてから、声が震えないように。
「どうぞ」
入ってきたのはわたしと同年代くらいの男の子。
この人だ。わたしが待っていたのは、きっと、この人だったんだ。
なぜかそれが分かる。理由は深く考えられない。なぜなら彼を前にして極度の緊張状態に陥っているからだ。
いくつか言葉を交わして緊張をほぐした後、意を決して口を開いた。
はたして彼はどんな返事をするだろう。
良い返事をしてくれるよう心の中で祈りながら。
「最近覚えたんだけど、相手がいなくて。もしよければわたしとチェス、してくれない?」
これにて完結です。ここまでお読みいただきありがとうございました。




