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2-(3)

「ところで、直中伊佐六」

「何故フルネーム。いつもみたく伊佐六で呼べよ」

 なるほど、伊佐六と呼んでいたのか。親しいだけある。

「悪い悪い。伊佐六、今日の放課後なんだけど、ちょっと付き合ってくれないか?」

「ん? あぁ、いいけど。どこ行くんだ?」

「ラーメン食べに行こう」

「急だな、おい。財布と相談する」

 そう言うと直中はブレザーのポケットから黒い革の長財布を取り出した。それから中身を確認して、少し渋ったような顔をしながらもグーサインを突き出し、

「ギリギリ、ラーメンくらいなら行けるかな。来週お小遣い入るし」

「そっか。何なら半分くらい払うよ。僕が誘ったんだし」

「へ?」

 スイッチが切れたロボットのように、一瞬にして直中は硬直した。

 まるで、僕の言葉が起因しているみたいに、僕の言葉が信じられないように。

 言っておくが、僕は決してケチではない。と言っても財布の紐が緩いわけでなく、きちんとケジメをつけて財布の紐を緩めたり固くしたりしているのだ。その辺、僕は自分でもよく管理出来ていると自負している。

 簡単には奢ったりはしないけれど、普段お世話になっている相手にだったりはお礼として奢ることは当然だと思ってるし、自分のせいで相手にお金がかかってしまう場合にはこういう風に少しだけカンパするのも躊躇わない。

なのにどうして、直中はこんな鳩に豆鉄砲を喰らったような顔をしているのだろう?

「お、お前……本当に、樫耶野七伍か!? 金を貸すのも躊躇うのに!?」

 なるほど、こっちの僕はすこぶるケチだったみたいだ。

それならさっきの反応も頷ける。

 金を貸すのも躊躇うって、そりゃまあ僕も二千円とかなると高校生の身としちゃ大きな額に入るから躊躇うけれど、まさかジュース一本分の値段も躊躇ってるとかじゃないよな? このオーバーリアクションばりの反応だと、そうだと推測される。

 なんて心が狭いこっちの僕なんだろう。

「気分が良いんだよ、今日は」

「ははぁー……」

 直中は疑うように僕を覗き込んできてから、

「ま、好都合な話を断る理由はないか。ありがとうよ」

「裏もないから、安心しろ」

「本当に信じ難い……」

 親友とは言ってもここら辺の信頼関係はそこまで築かれていないらしい。

どんだけケチなんだよ、僕じゃない方の樫耶野七伍……。

はてさて、ここいらで僕が直中を放課後、ラーメン屋に誘った理由について話そうと思うけど――どうやら、朝のホームルームが始まるらしいから、一旦止めておこう。

「さーっ、これ終わったら一時間目、体育だ」

 僕と直中の運動能力が披露される機会が訪れたわけだし。


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