崩壊と残火
怒りと絶望に心を引き裂かれ、僕の幼い足が一歩、地を踏みしめたその刹那だった。
僕の小さな体は、背後に潜む死の気配を捉えるには遅すぎた。影から分かれた影のように、暗殺者の一人が鋭い刃を手に現れる。その動きは風の切れ音さえ立てず、ただ冷たい殺意だけを伴って、僕の左目へと突き刺さった。
「――ッ、ギャアアアアアッ!!」
眼球が裂けるような、焼け付く激痛が脳髄まで達する。僕は無防備に悲鳴を上げ、よろめきながら顔を覆う。指の間から、粘り気のある温かい液体が溢れ出し、僕の視界は赤黒い波となって歪む。しかし、その生々しい痛みを理解する暇もなく、世界はさらに深い、音を立てない闇へと引きずり込まれた。
パシッ、と乾いた、耳をつんざくような銃声が響き渡る。
涙と血で霞んだ僕の瞳が、本能的に向かった先。そこにいたのは、僕がその小さな胸で守ろうとした、世界のすべてであった両親だった。
無慈悲な鉛の弾丸が、愛そのものであった彼らの胸を貫く。母さんは穏やかな表情のまま、不意に力を抜かれた人形のように崩れ落ちる。父さんは最後の力を振り絞り、僕の方へ手を伸ばしかけるが、その指は届く前に力なく垂れ下がった。
世界が、音を立てて崩壊する。
衝撃はあまりに巨大で、五歳の僕の心では処理できなかった。僕の体は硬直し、ただ、ただ、目の前の光景を焼き付けることしかできない。すべてを与えてくれた両親が、僕の目の前で生命の輝きを失っていく。もう、いない。
「やめて……やめてええええッ!!」
僕の喉の奥から絞り出すような、獣の咆哮。僕の左目から流れ出す血と、溢れ出す涙が混じり合い、僕の顔を絶望の色に染める。目の痛みなど、もうどうでもよかった。僕の胸の真ん中が、えぐり取られたように空洞になる。愛と温もりで満たされていた僕の世界が、一瞬で修復不可能な瓦礫の山と化したのだ。
冷徹な暗殺者たちに囲まれ、僕の視界は赤と闇に染まっていく。
震える僕の指を、もはや動かない両親へと伸ばす。だが、その指が届く距離は、永遠に失われてしまった。
その瞬間だった。
絶望のどん底で、僕の心に何かがカチリ、と音を立てて変わった。
深すぎる悲しみは、凍りつくような静けさを生み出し、その静けさの中心で、黒く、冷たい炎が静かに燃え上がり始めた。
僕の持てる知性のすべて、宿された異能のすべて。
それらはもはや、誰かを守るためのものではない。
奪われたすべてを、奪い返すための、復讐の道具となるのだ。
血の海の中、崩れ去った世界の残骸の上で、五歳の僕は静かに誓う。
この夜の痛み、この夜の絶望を、骨の髄まで刻み込む。
奪った者たちに、地獄そのものを見せてやる。
その日が来るまで、僕は死ねない。




