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027 改めて第一の町へ~木刀と並ぶ名物

「入場料は一人銀貨一枚だ」


 ようやく、ようやくのことやっとの思いでまともに人が生活している町に着いたと思ったのに……!

 私たちを待っていたのは歓迎ではなく、横暴な態度で金を払えと催促してくる門番だった。


「……高くないですか?」


「嫌ならとっと消え失せろ。余所者を受け入れてやるだけありがたいと思え」


 委員長が果敢にも値切り交渉をしてみたが、素気ない態度で嫌なら帰れと言われてしまう。しかし、こちらも引けない理由があるので渋々お金を払わざるを得ない。


「……キッドから聞いてはいたけど、碌なもんじゃないね」


「まあ元は人の物だったお金を使って堂々としている私たちも似たようなもんじゃない?」


「う゛っ! そ、それを言われると……」


「なんでもいいから早く入ろうぜ!」


「……子どもは思考が単純で羨ましい。だけど、キッドの言う通り。こんなところで立ち往生しててもなんにもならないし、さっさと目的を済ませよう」


「目的は……」


「観光!」


「美食!」


「違うでしょ!? キッド君が安全に暮らせる場所を探すのと旅で役立つ情報収集が目的だから!!」


 やんやんやと町中へ。


「レームたちはちゃんと上手く隠れられるかな?」


「……見つかっても大丈夫でしょうけど、早いとこ出た方が良いかもしれないわね」


「そうだね。食料は……少し高くつきそうだけど」


 問題はキッドの方かな。

 来る前に聞いた情報を思い出すと、キッドの面倒を見てくれるような奇特な人間はまずいないと思う。


 この世界は、魔王軍との戦闘の真っただ中。

 今までの旅でそれらしい軍勢と出会ったり、戦闘がなかったから実感はないのだがキッドの故郷が襲われたように平穏ともかけ離れた世界であることは間違いない。


 そんな世界を支配しているのが私たちを召喚したガンファーレ大王国を含む勇者という一大戦力を有する大国。その大国の庇護という名の支配を受け入れることで一見すると平穏を保っている属国。

 そして、大国に目を付けられない程度の力を有し、独立する小国。


 大国は傲慢さから、属国は大国に取り入るため、小国は自国を守るため。それぞれの理由で入るのにも何をするのにも多額のお金を要求される。

 この町だけが法外な入場料を取っているわけじゃないっていうのは安心できる情報ではない。

 特に私たちみたいに実力のなさそうな一行が旅をしている状況は装備が充実している……つまりは金を持っていると思われるそうだ。


「……そうね。門番の人の態度を見ててもこの町は安心できそうにないわ」


「一応、この町は属国じゃなかったはずだよね?」


「そうだよ。だけど、おれの育った村とおんなじさ。この町も次の見せしめにならないように上納金を渡すので必死なんさ」


 面倒な世界。

 こんな世界で子どもが安全に暮らせる場所なんて探し出せるんだろうか?


「でもでも、もっと向こうまで行けば大丈夫さ!」


「……根拠のない励ましはいらないよ」


 本来なら励まされる側の人間に言う言葉じゃないけど。

 あ~あ、キッドがこんないい子じゃなかったらとっくに見捨ててたのになぁ。


「根拠がないってわけじゃないんだぜ! この辺りはガンファーレ大王国が一番力が強いからこんな感じだけど、別の大国だとそうじゃないって噂だぜ!」


 おおう……。

 子どもにここまで言われるって、ガンファーレ大王国はどれだけ嫌われてるんだ。


「なんたって勇者様がいるんだからな!」


「おうっふ……!」


 ま、まさかここでその言葉が出て来るとは!

 今度こそ耐え切れずに膝を着いてしまった。

 会ったこともない勇者だけど、勇者って言葉のイメージは私の中では勇者(笑)になってしまっている。アレが、アレの同類がいるから大丈夫なんて……なんて安心できない言葉なんだろう!


「ひーひっひっひ!!」


 おっかしー!

 おかしすぎてお腹イタイ!


「ちょっと夢宮さん!」


「ひひひっ、な、なに?」


「こんな往来でいきなり笑いださないで! 周りの人の視線が」


「え~だっておかしくない?」


「そ、そりゃあ大蔵君を見てたら説得力はないかもしれないけど……!」


「ぷぷっ! 委員長、それ認めてる認めてる~!!」


「ちょっ、大鳥さんまで! も、もう二人とも笑うから私だって我慢してたのに……もうっ無理! あっははは!」


 おやおや、とうとう委員長も堪え切れなくなって笑い出しちゃった。

 往来のど真ん中で笑い飛ばす私たちを始めこそ何事かと見ていた町の人たちもその様子を気味悪がって遠巻きに見つめるだけ。

 今やこの町は私たちが支配していると言っても過言ではないだろう!


「って、笑い事じゃなくなってきたぞ!?」


「え~そんなこと言わないでよぉ」


 キッドも一緒に笑おう? そして、このいけ好かない町を支配しよう? 大丈夫! あなたは真の勇者ぶーぷぷっ、だ、ダメだ! この単語も今の状況じゃ爆笑ワード!!


「だ、だから笑い事じゃないんだって! 見ろよあれっ!!」


 あれ? ああ、なんか門番に似た格好の人が走って来るね。


「あれ、この町の警備隊だよ!」


「なっ、なんだってー!?」


 ま、まさか町中で楽しく過ごしているだけの旅行者を捕らえようというのか!?

 なんて外道! 


「……じゃなかった逃げるわよ!!」


「もう遅いよ!」


 うわっ、ホントだ!

 見渡した時にはすでに数人の兵隊がずらりと。兵士たちは未だにお腹を抱えて笑う二人を取り囲んでいた。

 私? ほら、私は子どもだからこういう時はノーカンだよノーカン。


「お前たち、随分と機嫌が良さそうだな?」


「へへっ、こんなご時世に景気のいいこって」


「他所はそんなに儲かってるってか? だったら、俺達にも恵んでくれよ」


 うわ……。そのセリフは兵士が言うセリフじゃないでしょ?


「……あ~レームたちを突っ込ませたい」


「気持ちはわかるけど、そんなことしたらこの先どの町でも受け入れてもらえなくなるぞ?」


「だからって黙って侮蔑を受け入れろっていうの?」


「そうは言ってないけど……」


「……まあいいわ」


 キッドに当たってもしょうがないことだった。

 それに、この世界の常識が正しいならこんなことは問題にはならない。

 さあ、委員長今こそ世界間の常識の壁を打ち破るのだ!


「…………」


「…………」


 あれ? 委員長? お~い!

 ……ハッ! そうだった。委員長は堅物のマジメ人間!

 当然、ナンパされたことなんてないし、男たちに絡まれることなんてないに決まってる!


 実力はあっても、このままじゃあ……。


「こうなったら……!」


「えっ!? おいっ、ネムネム!?」


 突然駆け出した私を慌てて止めようと手を伸ばすキッド。だが、もう遅い!

 一度動き出した私を止めるのは何人にも不可能なのだよ! フハハハハッ!


「おいおい、黙ってんじゃ……いっつ」


「……おい、お前の連れが俺達の連れにぶつかってきやったぞ?」


「お~いててて、こいつは重傷だぜ」


「はははっ、慰謝料も上乗せで貰わなきゃな。それまでこのガキは預かっておくぜ!」


「ぐぎゃ!」


 こらっ、せめてもう少し優しく扱え!

 猫じゃないんだから襟元を掴まれても苦しいだけだ!


「ひゃははは、ははぁ?」


「……その手を放しなさい」


「あぁん? てめえ……てて、イタタタタタッ!? 折れる、折れる~!!」


「おいおい、何をふざけてっておいっ、青くなってんぞ!」


「いいから、放しなさい」


「わかった。わかったから!」


 喚く男、凄味を利かせる続ける委員長にその委員長の手を必死に仲間から剥そうとする男たち。

 どうでもいいけど、耳元で喚かないでほしい。うるさくてしょうがない。


「うっ、うえぇぇ……」


「夢宮さんっ、あなたたち……!!」


 ――ボキャッ!


「うぎゃあああっ!?」


「あてっ!」


 ふっ、必殺嘘泣きが見事に決まったな。

 私の嘘泣きを本気にした委員長は怒りのままに力を込めたのだろう。哀れ男の腕は曲がってはいけない方向に曲がってしまっているではないか。


「ありゃあ、完璧に折れてるね」


「……鬼だなネムネム」


 キッドがドン引きしているようだが、私は気分がいい。

 あ~清々した。  

 名物は絡まれること。なぜファンタジーだとよそ者は絡まれるのでしょうか?

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