017 仲間になりたくなさそうに見てみる~泥棒は言った奴が泥棒
ようやく主人公のステータスが公表されます。ただし、後ほど変更するかもしれません。
どういう原理かはこれっぽちもわからないけど、どうやら私はこの異世界でも認識される身体になったらしい。ただし、幼女になるという代償を払って。
「ちょっと、どうしてくれるのよ?」
こんな風になるなんて聞いてない。
これは明らかな詐欺だ!
「どうしてそうなるかはわからない。けれど、僕の言うことが正しいと思っていれば自分もそうなる可能性があると気付くと思うけど?」
暗に信じてなかっただけだろうと言われてしまった。
だけど、当然じゃないか。夜中に墓場で出会った、自分を勇者だと名乗る怪しい少年、しかも初対面の人間の言葉を全部信じるなんて頭のおかしい奴のすることだ。
「ちょっと待って。……とりあえず、この子が夢宮さんだっていうのは信じる。信じるけどっ、私たちにもわかるように説明してくれない?」
「委員長……」
委員長も目の前の少年がただ者じゃないことを悟ったのか、はたまたこんなに可愛い幼女が裸で衆目の目に触れていることを危惧したのか落ちていた服で私を包んで抱き寄せてくれた。
う~ん、温かさは感じるけど包容力を感じないのは体形のせいかな?
「……もちろん。初めからそのつもりだったよ。君たちにはショックなことも多いだろうけど、それ以上に受け入れてもらわなければならないことが多いからね」
「……感謝するわ。色々」
「まず、どこから……って言っても彼女について話すのが筋だと思う。君たちは気付かなかったけれど、彼女はずっと一緒にいたんだよ」
「……ずっと?」
「そう、ずっとだ。君たちが目覚めた召喚の間や王から説明を受けた玉座の間にも彼女はいた。ただ、君たちがそれを認識できなかっただけでね。……彼女のように召喚されてそれでいて存在が認識されない者、それを僕たちは『真の勇者』と呼んでいる」
「……僕たちっていうのは?」
「後ろの彼女、君を治療した人物を含めた僕の仲間のことさ。彼らについては後で紹介する。……問題はこの『真の勇者』が世界に認識されないということ。どんなに強力な力を有していても活躍の場がなければ宝の持ち腐れになる。そのために彼女には少し痛みを与えさせてもらった」
「あれは少しなんてもんじゃなかったけどねっ!」
ほんっとに死ぬかと思ったんだから!
例え絶対に必要なことだったとしてもあのことについては許さない。絶対だ。
「…………(幼女萌え)」
んっ? 今、不吉な呟きが聞こえたぞ? 追い出されたロリコンか、それともまた新たな信者が出たか。ふぅ、美しすぎるっていうのも罪だな。
「――で、存在が認識されていない状態っていうのはつまり魂が剥き出しな状態と同じなわけで傷つけば急いで修復しようとする」
「……それって修復されなかったら?」
あるいは修復不可能な傷を負ったり、回復が間に合わなかったら?
問い掛けるもにこりと笑みを返してきやがった。こいつ……!
「どういうわけか魂だけの状態ではレベル0だし、それを補填する意味もあるのかもしれないけどね」
「なんだか随分省いた説明のような気もしますけど、夢宮さんのことは納得しました」
「おや? そんなに簡単に信じてもいいのかい?」
「ええ。あなたは嘘を吐いていませんので」
「……ほぅ」
「ふふっ、なかなか面白い子ね。初対面で彼にここまで言えたのはあなたが初めてよ。……それがあなたのスキルかしら?」
「さあ? どうでしょうね」
う~ん、委員長がなんかキャラじゃない感を出してるよ。
いつもよりも落ち着いた雰囲気だし、何かきっかけでもあったのかな?
「ああ、そうそう。スキルと言えば、君のステータスも確認できるようになっているはずだから確認してみたら?」
「えっ、マジ!? そういうことは早く言ってよ! 待ちに待ったスッテータス、オープン!!」
ネムネム
ジョブ:巻き込まれし+α・???・テイマー
レベル:1
スキル:【経験値奪取】
「なんっじゃこりゃあああっ!?」
初めて自分のステータスを見て、思わず叫んだ。
そりゃそうだよ。だって、気が付いたら名前が変わってるぅうううう!!
後ろから覗きこんだ委員長が何やら呟いてるけど、どうしてぇ?? 私なんにも悪いことなんてしてないよ!?
「……どうかした?」
「どうしたこうしたモゴモッ!?」
「……いえ。特に大した問題はなかったわ。ただ、夢宮さんが知らなかったことが起きただけよ」
「――ぷはっ! 委員長、なんで突然口を塞ぐの!?」
「(いいから、少し黙ってて!)」
えぇ~~!? り、理不尽~~~!!
「大鳥さん、どうやらあなたのスキルの影響で夢宮さんの名前が変わってしまったみたいよ?」
「あれっ? そうなの?」
「ええ。私と同じようになっていたから間違いないわ」
どういうこと? 除け者にしてないで教えてよ~。
「あははは、ごめんね~ネムネム。私ってどうやら【名付け】っていうスキル持ってるらしいんだよね~」
「その名前!?」
「うん。ネムネムっていうのは私が付けたあだ名。ほら、夢宮結女でしょう? そこからゆめゆめ、夢は寝る時に見るものだからネムネム!」
「なるほど」
うん、説明されるとピッタリのあだ名だ。
それになんだかしっくりと来るような気がしないでもないような。
もしかしたら名付けた本人が口にすることでより浸透するという効果でもあるのかな?
「……驚いたでしょう? 私も急にステータスの名前が変わった時には驚いたわ」
「そりゃそうでしょ」
だって名前が変わるんだよ?
親から最初に貰った名前が変わるとか意味わかんないね! これだからファンタジーってやつは……。
「……もういいかな? さて、おそらくステータスには『真の勇者』とは出ていなかったと思うけど」
言われてみればそうだった。あれだけ自信満々に『真の勇者』なんて痛い名乗り方をしてるもんだからてっきりステータスにも表示されてるのかなと思ったのに。
ステータスには、たしか……。
「ステータスでは『巻き込まれし+α』ってなっていたはずだよ」
そうそう、そうなってた!
「あと、読み取れない表示もあったと思う。実はそれが出ているのが『真の勇者』としての根拠なんだよ。読み取れないステータスはそのうちに読めるようになる。今は実力が足りていないだけだから」
「へぇ~」
「……興味なさそうだね」
だってないもん。そんなこと言われたって今は見えないんだったらピンとくるわけないし。
「まあいいや。君たちは今王国という勢力から外れたことになるわけだけど、とりあえず僕たちの仲間になってくれない?」
「初っ端からぶっこんで来たね」
もうちょっと段階を踏んで勧誘するのが普通じゃない?
「なんとなく、細々と説明するよりも直球でお願いした方が良いような気がしたからね。……それで、どうかな?」
「ことわ――」
「――わかったわ。仲間になります」
「委員長!?」
またもや邪魔されたっ!?
ていうか私はいーやーなーのー!
「夢宮さん、あなたに協調性がないことやこういう時にとりあえず反対する性分なのはわかってるけど、ここは私の顔を立ててくれない?」
「え~」
そりゃあ、この世界に来てからも私を心配してくれていた委員長の頼みは聞いてあげたいけど、あの子ども勇者はどこか胡散臭いんだよね。まあ、今となっては私も子どもだけど。
「(……よく聞いて。あなたのステータス、そのスキルは使い方次第で大きな意味を持つと感じたわ。彼らがどういう動きをするつもりか、それは今はわからない。だけど、現状で私たちよりも情報を持っていることと私たちよりも圧倒的に強いことはたしかよ)」
「……委員長。耳元でしゃべられるとくすぐったくてちょっと変な気分になるんですけど」
なんだろう。こう耳から入った空気がいい感じに脳に染み込んでいくような……まるで脳内麻薬が分泌される?っていうのかな?
なんとなく委員長の言うことを聞いていいような気分になってくる。あくまで気分だけど。
まあ、たしかに委員長言うようにここがどこかもわからないし、異世界で生きて行くための地盤も何もないわけだからしばらくは行動を共にしてもいいのかもね?
ちょっといけ好かないのは我慢しましょう。
「……たぶん相手も夢宮さんは態度が大きいと思ってるから、人のことは言えないと思うの」
えっ? 何? 聞こえな~い。
そうと決まれば即実行!
委員長に抱きかかえられた状態で胡坐をかいた上に踏ん反り返って仲間になる宣言だ!
「――よかろう。この私が協力してやる」
あれ?
思っていた以上に不遜な物言いになっちゃった。まっ、いっか!




