三話
商都メルクリアークまでは徒歩で5日程、僕が少し速歩きで行けば、2日程で着く。それだと、旅という感じがしないので、普通の歩きで進む。
「(テンプレだと、貴族や商人の馬車が魔物や盗賊の集団に襲われたり等あるけど、まあ、そうそう無いでしょ。)」
僕は、そんなことを考えながら進む。街道は、見晴らし良い平原を貫いている。僕にとっても、魔物や盗賊達にとっても、姿が分かりやすい場所である。まあ、子供一人で旅歩きするのなんて無いらしいからな…。僕は10km位先ならば余裕で視認できるので、相手の魔物に見つかる前に攻撃している。よって、僕に接近することすらほとんど無い。だから、本格的な戦闘も無い。
「(このまま、何事も無く街に着けば良いな…。)」
と、フラグ建てるようなことを考えてしまっていた。
「(ん?15km位先に、人間同士が戦っているみたいだな…。近くまで行って、どちらが害するものか見るかな。“神速”!)」
僕は、超高速で駆ける。比較対象としては、の〇みが丁度良い位だな。
約3分後、近くに着いた。そこには、馬車を取り囲む柄の悪い男達と、必死に抵抗する護衛と、がいた。
「おい、差し出すものさえ差し出せばよ、命は助かるかもしれねえぜ?」
「お前達のような盗賊に差し出すもの等無い!」
「ほう…、俺達に逆らうということだな?皆の者、掛かれ!」
盗賊達は、武器を構える。
「(やばい状況か?一般人レベルを再確認してみるか…。)」
僕は、馬車に近づく。
「ちょっと、おじさん達!街道の真ん中で、止まってたら、邪魔だよ?」
盗賊達は、こちらを向いた。
「何だ、がきんちょ?お子様は、ママの乳首でも…」
「おじさん達、悪い人だよね?悪いことしたら、地面に頭擦りつけて謝らないといけないよね?」
僕は、彼らの見えない速度で、一人の頭を持ち、地面に擦りつけさせる。
「ほらほら!自分達は悪いことしました。これからも、悪いことする所存ですから、謝罪させていただきますって。」
僕の方が悪役みたいだ。僕は善人なんて言ってないよ?
「舐めるな!」
「やっちまえ!」
盗賊達が向かって来る。
「(遅!カタツムリが這う位遅いぞ?)」
僕は、彼らの腕を捻って投げ飛ばして相討ちさせたり、股間蹴りをしたりして、好き放題した。
「この!喰らえ、“フレアボール”!」
盗賊の一人が、熱球を飛ばしてきた。
「“破”!」
僕は、熱球に高濃度の魔力をぶつけ、かき消した。
「何!?」
魔法使いの男も、護衛の男も、驚いているようだ。
「ほんまもんの魔法を見せてあげるよ。これ位出来たら、良いよね。“大炎球”!」
僕は、大きな炎球を超高速で放つ。男は目を瞑る。しかし、
「“停止”!」
男の目と鼻の先で停める。
「なっ!」
男は口が開いたままだ。
「“破裂”!」
パン!と大きな音を立て、炎球は破裂した。
「おお!」
男は腰を抜かしているようだ。
「じゃあ、さよならだね。」
僕は、手刀を頸に打ち、気絶させた。
「(白十字の紋章?クライスター教会か…。人間至上主義、魔族を悪魔の使いとする宗教団体。免罪符と称して、信徒から金を集めているらしい。どちらが悪魔の使いか!っていう感じだよな。)じゃあ、おじさん。縛っておくから、この人達、連れて行ってね。」
僕は、盗賊達を縛った。
「それじゃあ…」
「おい、少年!」
僕は、護衛のおじさんが声を掛ける間も与えず、そそくさと、その場を後にした。だって、面倒な予感がしたから。