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名もない花  作者: 林 秀明
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電気9 電気工事①

「エ、エアコンですか?」


Kは無意識の内によだれを垂らしてしまった。そのぐらい唐突な質問であった。


「ええ、あのエアコンですよ」


「あの~すいませんが、僕はエアコンの知識はあるんですが、工事は出来ないんですよ」


「……そうなんですか、でもやってみれば行けるかも知れないねぇ。工具も部材もあるので一回だけ」


老婆はそう言うと、奥の部屋にあった埃まみれの工具類を荒々しく持ってきた。


工具はサビついており、蜘蛛の糸が電動ドリルに絡んでいた。


「穴あけはしなくていいですよ。ただ付けるだけでいいんだから」


Kの背中を押しやると、エアコンの下に脚立を置き、もう後戻りはできないといった感じで扉に鍵を閉めた。


「なんで、こうなるんだ」Kは意味が分からないまま、床に置いてある室内機を裏に向けた。


まず、背板を取り外し、壁の穴に沿ってどこに据付するかメジャーで測定した。

今回は穴が右横出しとなるので、フレア加工をするのは外でも出来たので取付しやすかった。


室内機の幅と壁の天井の幅を確認し、背板中央上の部分に長めのビスを打ち付ける。ガガッという音と共に天井から砂埃が少し落ちてきた。構わず左右と下二箇所にもビスを打ち込む。


続いて何点か開いている箇所にビスを打ち込み、水平器にて勾配を確認した。まずまずといった所だろう。


Kの額には無数の汗が噴き上がっている。

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