電気8 救済門
門をくぐるといつの間にか門は消えていた。前方には砂漠が広がる街並みが見えている。石膏造りの家が立ち並び、外壁の上の方には18センチほどの丸い穴が開けられていた。
すれ違う人々はみな暑さにやられていた。肌は乾燥しきっていて、潤いが感じられなかった。
「そこのお方……」テントの隙間から老婆がひょっこりと顔を出した。助けを求めてくるような目を差し出している。
「お察しの通り、この街は本当に暑いです。日陰でも熱風が舞い込み、砂嵐が私たちを痛めつけます。屋内に避難したとしても蒸し風呂以上に暑くのたれ死んでしまいます」
「確かに暑いですね。何か涼む所はないんですか?」Kは冷静な口調で言った。
「涼む所はありませんが、冷やしてくれる器具はありました。それは『エアコン』です。エアコンがあったからこそ私たちは何年も生きてゆく事が出来ました。しかし近年都会の若者達の悪戯が流行り、エアコンの内機と外機を繋ぐ
配管をみんな切っていくんです。一台残さず全て……なのでエアコンはあるのですが使える状態ではないのです」
周りを見ると確かにエアコンはあったが、配管等は全て切られていた。
「また取り付けをすればいいじゃないですか?」
「ここの街は施工出来る人間がいないんです。都内から来てもらっていたのですが、砂嵐による都内を結ぶ橋が壊されてしまいました。若者からの悪戯もなくなり、自給自足も出来ますが、この暑さでみな死んでしまいそうです」
「率直に僕はどうしたらいいのですか?」
老婆ははにかんだ笑顔を見せ、ゆっくりと答えた。
「この街全てのエアコンを取り付けして欲しいのです」




