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名もない花  作者: 林 秀明
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電気7 三つの門

夢の中で大きな門が三つ前に立ちはだかっていた。それぞれの門には「救済門」「口論門」「奈落門」と書かれている。


Kは目をぱっちりと開けた。夢じゃないほど手の汗が、心臓の鼓動が、風が吹く音さえも鮮明に聞こえる。突然上から天の声がした。



「仕事で悩んでいるようじゃのう。その悩みもこの三つの門を無事突破出来たら極楽の道へと繋がる。恐怖に怯えて生に生き続けるか、自信を切り開いて生に生き続けるか問うてみよ。わしゃ神様じゃ」



風が突然止み、無音となった。この空間にいるのはたった一人。これはあの世かなとKは感じたが、おそらくそれは違う。ここには手も足も、頭、心さえ現実の自分としてはっきりある。


そっと歩き、門に手をついた。表面はざらざらとした木製であったが、とても温かった。そっと手をついただけなのに門は勝手に開いた。


「試されているのか?」その(つる)にまかれた木のように身動きが取れなかったが、前へ進むしかなかった。



門の外には砂漠の町が広がっていた。

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