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幻影魔法

新しい馬車を作ります

3種類の魔道具付きです


 レルミスと猫耳戦士は抜けたが、残った3人にはもう少し練習を続けさせた。


 練習が終わった後、バンザの工房に出かけ、馬車用の魔道具の材料を受け取った。

 ローズに馬車用の魔道具を作ってもらう。馬車に取り付ける魔道具は、重量低減の魔道具と、マジックライトだ。重量低減の魔道具は、馬車のフレームの重量を軽くするために使用する。軽くしすぎると、不安定になり、横風で倒れたりする危険があるので、重量低減効果を調整出来るようにする予定だ。

 重量低減の魔道具は初めて作るので、試作用材料を使って、1回練習し、うまく作れることを確認した。その後、本番用材料で、魔道具をつくってフレームに取り付け、動作を確認する。重量低減効果を最高にすると、重いフレームが、二人で持ち上げられる程度の重量になった。計測方法がないので正確なところは分からないが、20分の1以下の重さになっていそうだ。


 馬車の残りの部分を仕上げた。1階部分には断熱層入りの板壁を張り、一部に収納戸棚を取り付ける。採光用の窓には、窓ガラスの代わりに硬質のプラスチックを入れておいた。

 ロフト部分は布張りだが、前回同様断熱層入りだ。ロフトの床は、金属フレームにナイロンメッシュを張り、その上にプラスチックの断熱クッション層と、厚手の木綿を重ねて、寝心地の良い作りにした。ロフトは前後二部屋に分け、別のはしごを使って登るように作る。

 取り外し可能な椅子席と、椅子用のクッションも作った。御者席と椅子席の座り心地を確かめ、ロフトの寝心地も確かめる。どちらも快適だ。

 一通り作り終わり、出来映えを見る。すごく大きくて立派な馬車が出来た。作ってから気がついたが、大きくて立派すぎて、すごく目立ちそうな気がする。


 昼になったので、昼食にする。昼食中に皆の感想を聞いてみた。

 「さすが、レディク様の作られた馬車。大きくて立派。」ローズが言う。

 「お金持ちの商人や貴族の方が、快適に旅をするために、大きな馬車を作ることがあると、聞いたことはありますが。実際に、こんなに大きくて立派な馬車を見るのは、初めてです。」アベリアが答えた。やはり、重量低減の魔道具を使った、旅行用大型馬車は、他にもあるようだ。

 「でかいだけじゃなくて、設計も個性的だな。見れば誰でも驚くぞ。乗り心地の良さも知られれば、馬車を売るだけで暮らしていけるんじゃないか。」ダリルの目には驚くレベルの馬車に見えるらしい。

 「さすがヤリチン大魔王だにゃ。旅行中にもやりまくるつもりだにゃ。」猫耳戦士は、発言は普段と変わらないが、挙動不審だ。朝の記憶がまだ鮮明なのだろう。顔を赤らめて、ちらちらこちらを見ては、目をそらしている。


 馬車のデザインを変えるべきだろうか、内部の構造や機能は、うまく出来たと思うので、なるべく変えたくないが。外見だけ、うまく変える方法はないだろうか。


 午後、再び領主館に出かけた。ローズ、クロエ、ヒュー、レルミスを連れて行く。

 門衛に来意を告げると、すぐに奥まで通された。案内された部屋に入ると、今回は応接室ではなく、ローランの私的な部屋のようだ。中には待ち構えていたらしいローランが居た。他にも、見たような顔の男が居る。


 「ほほう。おまえさん達、坊ちゃんの遊び友達だったのか。」

 「ゴンザさん。私もいい年なので、坊ちゃんはやめてくださいよ。」ローランが困った顔で言う。そういえば、防具工房のゴンザだったか。

 「ん?もしかして知り合いなのか?」ローランは次に、私に向かってたずねた。

 「この前防具を作ってもらったばかりだ。」

 「それならサイズは分かっているのか。ちょうど良い。」

 「いや。その時にはまだ、レルミスは居なかった。彼女の分の防具は作っていないぞ。」

 「ああ。あなたがレルミスさんですか。なるほど。素敵な装備ですね。おっと、自己紹介がまだでしたね。ローラン・ニズロンです。」

 「レルミス・ルティネールです。よろしくお願いいたします。」レルミスが例の挨拶をした。前回より浮き上がる高さが低くなっている。改良を加えたらしい。

 ローランとゴンザが、それを見てニコニコしながら、手を叩いている。なんだか、娘のダンスの発表会を見に行った、お父さんとおじいさんのようだ。

 「わしは、ゴンザ防具工房のゴンザです。よろしくお願いいたします。では、レルミスお嬢ちゃん、採寸させて頂けますか。」

 ゴンザはさっそく採寸を始めた。


 ローランは部屋の隅の方に置いてあった箱から、ワンドを取りだした。2本ある。両方とも白っぽい木で作られており、例によって運命の神の紋章が描かれている。先端にはめ込まれている宝玉だけが色違いで、1本は黄色、もう1本は緑色だ。

 この前の衣装をもらったときにも不思議に思ったが、ローランは何故こんな物を持っているのだろう。そういえば、ゴンザがさっき『遊び友達』と言っていたな。何かの遊びのために作ったのか?まさか、勇者ごっことか?

 ローランは黄色の宝玉のワンドをローズに渡す。

 「ローズさんにはこれを差し上げましょう。ワンドに魔力を注ぎ込んで、くるっと回してみてください。」

 「くるっと回す?」ローズが首をかしげながらも、ワンドに魔力を流し込むと、ワンドが淡く光り始めた。さらに、ワンドをくるりと回すと、ワンドの先端から小さな光の粒子が飛び散る。ローランもエフェクト好きだったのか。勇者ごっこをやっていた疑いが濃厚になったな。

 「おお」ローズが驚きの声を漏らし、ワンドをくるくる回している。ちょっと嬉しそうだ。

 「そ・・そのすばらしいワンドは・・」エフェクト好きのレルミスも、食いついてきた。

 「レルミスさんの分もありますよ。」ローランがもう一方のワンドを示す。

 「本当ですか。」レルミスがすごく嬉しそうだ。すぐにでも欲しそうだが、採寸中で身動きが取れず、もどかしそうにしている。

 「終わりました。もう良いですよ。」採寸を終えたゴンザが、苦笑しながら言う。

 レルミスは待ちかねたように、小走りにローランに近づいた。

 「はい、どうぞ。」

 「ありがとうございます。」ワンドを受け取ったレルミスは、早速くるくる回しだした。おもちゃをもらって喜んでいる子供にしか見えない。レルミスは確か27才だったはずだが、エルフの場合、容姿が幼い間は精神年齢も幼いものなのだろうか?


 今回作ってもらう変装用の装備は、やや特殊な装備なので、完成までに1週間くらいは掛かるらしかった。いったんローランが受け取って、王都に出発するまでには家に届けてくれることになった。

 王都への出発は、今のところ11月4日前後になる見通しらしい。リンドとヘルミ博士は、一足先にエドリンに戻り、エドリンでの仕事を片付けて、我々がエドリンに到着したら合流する予定だそうだ。


 家に帰ってからは、幻影の魔道具の魔術構築式を研究した。馬車を幻影で覆ってしまって、目立たない外見に、見せかけられるかも知れないと思ったのだ。

 何度か魔道具を使って魔法を発動させ、魔術構築式がどのように作用して幻影を発生させるかを確認する。複数の光魔法が組み合わせて使用されているが、原理は難しくなかった、しばらく練習すると、魔道具を使わなくても、同じ幻影を発生させることが出来るようになった。さらに、練習を続け、工夫を重ねると、姿を消す魔法も使えるようになった。これはかなり便利かも知れない。

 自分の姿が完全に消えていることを確認しているところへ、レスリーとローズがやって来た。

 「大変ですー。レディク様が消えちゃいましたー。」レスリーはきょろきょろ見回しているが、私の姿は全く見えないようだ。

 「きっと、新しい魔法。」ローズも、どういう魔法を使ったかは分からないようで、考え込んでいる。

 ちょっと、いたずら心を起こし、レスリーとローズの背後に、幻影を出現させる。私の姿だが、拡大した幻影だ。天井にぎりぎり頭が触れない大きさにした。

 振り返ったレスリーが、びっくりして転びそうになり、ローズに抱きつく。

 「レディク様が、・・巨人になっちゃいましたー。」

 「大きい・・」ローズもびっくりしたようで、ポカンと口を開けている。しかし何かに気がついたようだ。

 「違う。これは幻影。本物は・・」と言って振り返り、手を伸ばしてきた。二人のすぐ後ろまで、近づいていた私に気がついたようだ。

 ローズは私の体に触れると、抱きついてきて、

 「レディク様。捕まえた。」嬉しそうに言った。


 幻影の魔法は使えるようになったが。馬車の外見を変える魔法を、ずっと使い続けるのも大変なので、ローズに新しい魔道具を作ってもらうことにした。ローズと相談しながら、魔術構築式の詳細を詰めた後、試作用の材料で魔道具を作ってもらう。

 できあがった魔道具を馬車に取り付け、幻影魔法を発動させて、効果を確認した。やや大きめ程度の、普通の馬車に見える。近づいてじっと見れば、若干違和感があるが、普通の馬車をしげしげと観察する物好きは居ないだろう。


 魔道具を発動させ、下部の水タンクに水を入れた状態で、馬車の走行テストをした。乗り心地も操作性も良好だった。重量低減の効果を変えて、走行時の安定性の比較もする。やはり軽くしすぎると、少し不安定になるようなので、普段は少し重量低減の効果を抑えた状態で走らせることにした。


 夕食時に、明後日から、遺跡に行きたいという話しをした。ゴブリン族の村にも行くので、明日お土産の準備をすることも話した。

 もちろん、資金稼ぎと練習もする予定だ。ギルドの依頼もチェックしておく必要があるだろう。


 「ジニさん、来ないですねえ。」寝る前にアベリアが言う。

 「アベリアの予想が外れたか?」

 「私の予想よりも、恥ずかしがりやさんだったようです。でも、明日の晩には、間違いないですわ。」と言って微笑んだ。



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