4話
【声劇用台本】
【上演時間 各話 約15~20分】
『里中ハルの不思議なジョウキョウ日記』第4話
作:伴野久兵衛
■登場人物
里中ハル(サトナカ ハル):田舎から上京してきた純朴な女の子
高津リョウ(タカツ リョウ):何かの理由で、女性の体に入ってしまった引きこもり青年
アズリエル:天界からやってきた天使。チャラい、軽い、そしてウザい
ミカエル:アズリエルの上司に当たる天使。仕事の出来る中間管理職
■パート0
ナレ 「初めに、声劇をお聞きになるリスナーの皆様に、お願いがございます。
本作には『固有名詞っぽいモノ』が度々出て参りますが、それらは全て、
現在・過去を問わず、実在の人物・企業・団体・その他の存在とは一切関係が御座いません。
仮に何か思い当たる節を感じても、それはリスナーの皆様の『思い違い』で御座います。
本作とは一切の関係は御座いませんので、
他のリスナー・演者・放送主などへお確かめになる行為は慎まれるよう、強くお願い申し上げます。」
ナレ 「ここまでのあらすじ。
大学入学のため上京した里中ハルは、気が付いたら女性の体になっていた高津リョウと出会う。
困惑する二人の前に天使アズリエルが現れ、ハルの隣人だった豊島ナナミの体にリョウの魂が入っており、
アズリエルはナナミの魂を回収するため、しばらくリョウは豊島ナナミとして生活することを告げられる。
こうして始まった3人の不思議な生活は、紆余曲折を経て3か月が経過しようとしていた」
ハル 「6月22日。
最近アズにゃんさんの機嫌が悪い。理由は、カケラがなかなか見付からないから。
もうほとんど集まっているらしいけど、どうしても見付からないカケラがあるらしい。
昨日も朝から出掛けて、帰りは夜遅かった。
帰ってからもドラゴンレーダーやパソコンと睨めっこ。
ブツブツと独り言をしながら、考え事してる」
■パート1
アズ 「おいリョウくん!俺のパンツは『畳んで仕舞って』って頼んだだろ?」
リョウ「はいはい、さーせんでした!ったく、自分でそのくらいしろよ…」
アズ 「あんっ?何だと?」
リョウ「何も言ってねーよ」
アズ 「聞こえてんだよ!」
リョウ「じゃあ、分かっただろーが!パンツくらい自分で畳め!」
アズ 「俺は忙しいんだよ!
そっちは1日家に居たんだから、そのくらいしたって罰は当たんねーだろうが!」
リョウ「偉そうなコト言ってんじゃねーよ!世界でも背負ってるつもりか?」
アズ 「少なくとも、人間1人の命は背負ってるわ!」
リョウ「自分の不注意で背負ったんだろ?当たり前の事に、なに勿体つけて言ってんだ?」
アズ 「自分の命1つ背負えない人間にしちゃあ、言うことが立派だな?」
リョウ「それとこれとは関係ねーだろ?」
アズ 「ほぉ、痛いトコ突かれて必死か?」
リョウ「そっちの方が、余裕が無くて必死に見えるけどな?」
ハル 「はい、そこまでー!2人とも落ち着いて下さい」
アズ 「ハルちゃん、止めてくれんな!」
リョウ「あぁ。このバカには一度、自分の立場を分からせなきゃ…」
ハル 「座りなさい、2人とも!」
アズ 「俺の立場だと?死に損なった人間風情が偉そうに!」
リョウ「言いたい事はそれだけか?テメーのケツも拭けない堕天使が!」
ハル 「ああああああ!!座れって言ってんのっ!!」
【殴打!】×2
ハル 「明日からリョウさんは、アズにゃんさんのパンツは畳まなくて結構です!」
リョウ「っしゃっ!」
ハル 「アズにゃんさんは、どんなに忙しくても自分のパンツは自分で畳んでしまうこと!」
アズ 「えー!」
ハル 「2人とも分かりましたか!?」
リョウ「はいっ!」
アズ 「はいっ!」
ハル 「それから、2人とも正直に言って『どっちもどっち』です。
いや、違うな。私も含めて3人とも同じ様なもんです」
アズ 「いや、リョウくんよりは俺の方が…」
リョウ「え?ハルちゃんは違わない?」
ハル 「同じですっ!異論は認めません!」
リョウ「はい…」
アズ 「はい…」
ハル 「それと!」
アズ 「はい?」
リョウ「何でしょう?」
ハル 「いつまでもアズにゃんさんにイライラされてもめんど…困るので…」
リョウ「いま、めんどくさいって言おうとした?」
アズ 「した!絶対にした!」
ハル 「黙りなさいっ!」
リョウ「はい…」
アズ 「はい…」
ハル 「イライラされても、困るのでっ!進み具合を報告してもらいます」
アズ 「えー!!」
ハル 「えー!!じゃないっ!」
アズ 「あっ、はい」
リョウ「よわっ!!堕天使、よわっ!!」
ハル 「リョウさん、黙りなさい!」
リョウ「えっ…あっ、はい」
アズ 「ぷぷぷぷ…」
アズ 「取り合えず、カケラは残り1個。あとはもうくっつけ終わった」
リョウ「なんだ、楽勝じゃん!とっとと終わらせろよ」
アズ 「楽勝ちゃうわ!」
リョウ「なんでよ?ドラゴンレーダーだってあるんだろ?」
アズ 「あるけどっ!あるけどさぁ…」
ハル 「レーダーに表示されない?」
アズ 「まぁ、そうね」
リョウ「はっ!?見落としてんじゃね?」
アズ 「見落とすわけねーだろ!!地球規模に縮小したって光らねーんだぞ!!」
リョウ「じゃあ、壊れたんじゃね?」
アズ 「んなことあるか!集まった分はちゃんと表示されてんだよ!!」
リョウ「マジで?ちょっと見せてみろよ」
ハル 「この点が集まった分ですか?」
アズ 「そう!でも残りの1個が…」
ハル 「表示されない…と」
アズ 「ってこと」
リョウ「くっつけ間違ったんじゃね?」
アズ 「んなことないわっ!!」
ハル 「えーっと、いまくっつけた分は、どこにあるんですか?」
アズ 「そこに入れっぱなし」
リョウ「そこ?どこ?」
アズ 「だからそこ」
ハル 「そこって…」
アズ 「うん、タンスの一番上の引き出し。ハルちゃんがパンツとブラジャー仕舞ってるとこ」
ハル 「きえええええええええ!!!」
リョウ「お、おまえっ!何てとこ仕舞っとんじゃああああ!!!」
アズ 「なにも2人で殴らんでも…」
ハル 「生きてただけでも、ありがたいと思ってください」
リョウ「全くだ!なんてうらや…非常識なヤツだ」
ハル 「……」
リョウ「なんだよ?」
アズ 「別にぃ」
ハル 「はぁ…もう良いです」
■パート2
リョウ「ねぇ?この表示ってさ、これ以上は拡大できないの?」
アズ 「レーダー?」
リョウ「そう!俺の部屋の中とかまで映るかなぁと思って」
アズ 「あー…それね、その縮尺で限界!」
リョウ「えー!使えねーなぁ」
アズ 「あん?天界技術部にケチつけんのか?」
リョウ「だってアパート1つが限界かよ」
アズ 「ソコから先は機械に頼らない、熟練の感ってヤツよ」
リョウ「これじゃ、近くに2つあっても分からないじゃん!」
ハル 「んっ?あっ!それですよ!!」
アズ 「ああああああああ!!!」
リョウ「なに?なに?」
ハル 「だからっ!」
アズ 「あったんだよ、最初から!!」
リョウ「はっ?なにが最初から?」
ハル 「だからカケラが!!」
リョウ「え?見付かった?カケラ見付かったの?」
ハル 「あー…もうリョウさんメンドクサイ」
アズ 「取り合えずくっつけたヤツ持って、ちょっと離れてくる!」
ハル 「私も行きます!」
アズ 「え?ハルちゃんも行く?でも…」
ハル 「あ、アズにゃんさん一人の方が早い…ですよね」
アズ 「あー…まぁ、そうなんだけど…うーん…
よしっ!ハルちゃん、レーダー持っててね。あと俺にシッカリ捕まって!」
ハル 「え?え?これって…」
リョウ「ちょっ!何それ!?おい!」
アズ 「うっさい!黙れ、人間!!緊急事態だ!!」
リョウ「だからって…お姫様抱っこで、空飛ぶかー!?」
アズ 「ねぇ、どう?」
ハル 「やっぱり…」
アズ 「動かない点、ある?」
ハル 「はい…ホントに真下から1つ出てきました」
アズ 「よしゃっ!」
ハル 「やりましたね!」
アズ 「ここまで分かれば、後は手分けして探せば…いける!」
ハル 「……」
アズ 「ハルちゃん、どうした?」
ハル 「あの、その…」
アズ 「んっ?あっ、高いの怖い?」
ハル 「じゃなくて…」
アズ 「なになに?」
ハル 「いつまで、この格好なのかなぁ…って」
アズ 「あぁ!お姫様抱っこ嫌い?」
ハル 「いや、そんなこと…ない…ですけど…」
アズ 「もう今の俺は、このままキスもしちゃいたいくらいよ」
ハル 「もぉ…ばかっ!」
アズ 「こらっ!暴れるなって!」
ハル 「じゃあ…全部集まって、そしたら最後に…してあげても…」
アズ 「え?マジで?」
ハル 「良いかなぁ…って思っただけです!思っただけですよ!!」
アズ 「はーいはい」
リョウ「で、あった?場所、分かったの?」
アズ 「どけっ!」
リョウ「いてぇな!押すなよ」
ハル 「どいてっ!」
リョウ「ハルちゃんまで!?」
ハル 「リョウさん!」
リョウ「は、はいっ!?」
ハル 「部屋探して!自分のっ!!」
リョウ「えっ、俺の?俺の部屋?なんで?」
ハル 「良いから早くっ!!」
リョウ「お、おう…」
アズ 「俺、下の部屋を見てくるから、ハルちゃん外回りヨロシクっ!」
ハル 「分かりました!リョウさん、ボサッとしてないで!探して!!」
リョウ「分かったよ!探せば良いんだろ、探せば!!」
アズ 「あっ…」
ハル 「あった…」
リョウ「え?なになに?」
アズ 「あったよ…」
ハル 「あった!あった!!ありましたよー!」
リョウ「あったの?カケラあったの!?」
アズ 「あった!あったぞ、こんにゃろー!!」
リョウ「おい!よせ!やめろ!くっつくなオッサン!!」
アズ 「うるせー!あったんだ!くっついたって良いだろがー」
ハル 「私も!私も混ぜてくださいよ!」
アズ 「来い来い!ハルちゃんもこーい!!」
ハル 「わーい!リョウさん、ギュー!」
リョウ「ギュ、ギュー?」
アズ 「うわぁ…濃厚な百合だなぁ…」
リョウ「黙れ変態っ!!」
■パート3
アズ 「えっと、里中ハルさん、高津リョウくん。
お二人のお陰で、こうして無事に豊島ナナミさんのカケラを回収することが出来ました。
お二人には、本当に感謝しても…」
リョウ「挨拶長いぞー!」
ハル 「そうですよ!お肉冷めちゃいますよ!」
アズ 「あー…それじゃ、2人ともホントにありがとう!」
ハル 「いえいえ、ホント見付かって良かったです」
リョウ「まぁ、見付からなきゃ何時までもウルサイし…」
ハル 「リョウさんっ!」
アズ 「まぁまぁ…よーっし!今夜のすき焼きは俺のオゴリだ!思いっ切り飲んで食ってくれ!!」
リョウ「おっしゃー!」
ハル 「いっただきまーす!!」
アズ 「じゃあ、かんぱーい!」
リョウ「かんぱーい!!」
ハル 「かんぱいっ!」
リョウ「うめぇ!肉うめぇ!」
アズ 「だろー?メッチャ奮発したからな!」
リョウ「100グラム2千円だっけ?俺、そんな肉食べんの初めてだよ」
アズ 「値段じゃないんだよ、こういうのは。心意気だよ、心意気!」
ハル 「リョウさん、お肉だけじゃなくて野菜も食べてください」
リョウ「じゃあ、ネギもーらい!」
ハル 「あぁっ!そのネギ私が食べようと思ってたのにぃ」
ハル 「ええっと、アズにゃんさん…」
アズ 「ん?なーに?」
ハル 「その、ナナミさんの魂って言うのは、いつリョウさん…じゃないや、ナナミさんの体に戻るんですか?」
アズ 「さっきク●ネコで送ったし、今夜中には天界に着くでしょ…」
リョウ「早っ!!ってかク●ネコ!?」
アズ 「そーよ。アレが一番早いもん。●ガワも行けるけど、やつら扱い雑なんだよねぇ」
ハル 「タッキュー便って天界まで荷物届くんだ…」
リョウ「マジかよ…聞いたことねーよ」
アズ 「え?普通に住所さえ間違わなければ届くよ。ちょっと割高だけど」
リョウ「ちょっと割高って…割高にすりゃ可能な話なのか?」
ハル 「で、今夜中に届いたとして?」
アズ 「うーん、明日の朝から手続きして、明後日の朝…には終わるかなぁ」
リョウ「明後日の朝か…」
ハル 「となると、明日が最後…ですか?」
アズ 「あー…そうなるねぇ」
リョウ「でさ、俺の魂は俺の体に戻るとして、お前はどーすんの?」
アズ 「俺?俺は取り合えず全部見届けて、そしたら帰る…かな?」
ハル 「アズにゃんさん帰っちゃうのかぁ…リョウさんも離れちゃうし」
リョウ「俺は横浜だしさ。会おうと思えば会えるだろ?まぁ、この堕天使は知らないけど」
ハル 「アズにゃんさんなら、またすぐヘマして戻って来そうですよねぇ」
リョウ「あー!言えてる!もしくは休日にキャバクラ来るとか」
アズ 「お前らぁ…俺のことバカにしてんな?」
ハル 「してませんよー」
リョウ「さぁねぇ」
アズ 「おい!リョウくん!お前、後で乳揉むぞ!!」
ハル 「うっわ!アズにゃんさんサイテー!」
アズ 「えっ、ハルちゃん、そんな…」
リョウ「最低だってさ!ざまぁみろ!」
アズ 「おい!待てやぁ!!」
リョウ「やーだよっ!」
■パート4
アズ 「んっ…。あっ、俺、寝てたのか。二人も寝落ちしてるし。
あーぁ、すき焼きの鍋も片付けないで爆睡って、後先考えずに飲み過ぎなんだよ。
あっ、違うな。これはヤツの仕業か?」
ミカ 「仕業とはヒドイ言い草だな」
アズ 「あ、ミカエル。もう居たのね」
ミカ 「ご苦労だったな、アズリエル」
アズ 「来るの早ぇって。もうちょっと楽しませろよ」
ミカ 「これでもずいぶんと配慮してやったのだがな」
アズ 「あーぁ、器の小せぇ男」
ミカ 「お前の様に、自分の許容量ギリギリで勝負するタイプでは無いんでね」
アズ 「ふーん、俺は自分の生き方、結構気に入ってるんだけどな」
ミカ 「それより、そろそろ始めさせてもらって良いかね?」
アズ 「あぁ、準備?どうぞご勝手に」
ミカ 「準備?そんなモノは既に終わっている」
アズ 「相変わらず手際の良い事で」
ミカ 「手の掛かる部下を持つと、嫌でも上司は優秀にならざるを得ないんでな」
アズ 「へぇへぇ、左様でございますか。 それならとっとと始めてくれ」
ミカ 「では、これより魂再生法14条、第3項に則り、豊島ナナミの魂を元の肉体に戻す。
同時に高津リョウの肉体より、擬似霊魂TEMGAを排出。
高津リョウの魂も肉体に戻す」
アズ 「あぁ…」
ミカ 「また魂取り扱い法7条、および魂情報法2条に則り、
里中ハルと高津リョウの魂から、この3ヶ月の記憶を消去・上書きを行う。
良いな?」
アズ 「…やってくれ」
ミカ 「最後に、アズリエル。
魂の損傷、個人情報の漏洩、魂の強制排出、以上の罪により、その身の消滅を実行する」
アズ 「あ、するの?やっぱり?」
ミカ 「残念だがお前のした事は、どれも1級犯罪だ。学校で習っただろ?」
アズ 「ちっとも残念そうに見えないんだがな」
ミカ 「お前と違って感情が表に出ないタイプでね」
アズ 「えーっと、あのさ…」
ミカ 「なんだ?何か言い残すことでもあるか?」
アズ 「いや、まぁ、無理なのは知ってるけどさ…」
ミカ 「ならば、余計な仕事を増やすような事はしないでくれよ」
アズ 「んー…でも、あっさり消されるのも、俺の生き方的に面白くないんだよね」
ミカ 「ふっ」
アズ 「エヘッ☆」
■パート5
アズ 「いってぇ!マジいてぇ!
何だよミカエル、マジじゃん!あいつマジじゃん!!
何アレ?ビーム?ミサイル?
あんなの聞いてねーって!あいつ絶対、個人的な何か絡んでるだろ!!
っつーかさ、思ってた以上のヤバさだわ…
何とか振り切ったけど、見つかるのも時間の問題な気がするし…
取り合えず、一服しますかね。
ジタバタするもしないも、それから考えりゃ良いか。
あれ?そいや右腕がねぇな。最初の一撃喰らった時に千切れた?マジか…
あぁ、くそっ!上手く火ぃつけれねーし!!
ふぅ、ついたついた。やれやれ…
あー…やっぱタバコうめぇなぁ
はぁ、っておい!腹も穴開いてんぞ!?
横っ腹から煙が漏れてんじゃん!うっわ!こんなことあるんだ。
てかさ、これミカエルがトドメ刺すまでも無くね?
このまま放っといてもテキトーに消えるよな、俺…
いやぁ、さすがにこれは…ちーっとヤバいだろ…
あ、ヤバさ認識したら急に力抜けたわ、うん。
何か視界もやたらぼやけて見えるし…
あ、タバコ。消さなきゃ…携帯灰皿、ドコだっけ…
あれ、なんで俺、こんなこと冷静に考えてんだ…?
あー…こんな風になるなら、とっととオッパブ行っとくんだった…
リョウくん…てかナナミちゃんのスケパンも被っておくんだった…
っつーか、っつーかさ…
やべっ!意識飛ぶ…あー…もうちょい…もうちょいな…
っつーかさ、ハルちゃんとチューしときゃ良かった…
天使は……とチューしたら、奇跡起こせるって…教えてあげりゃ良かった…かなぁ…
そしたら…して…くれたかなぁ…
あぁ、ハルちゃんの…初めてのチュー…欲しかったなぁ…
第4話 了




